荒木飛呂彦氏の人気漫画、”ジョジョの奇妙な冒険”の名台詞にこんなものがある。
「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『おれは 奴の前で階段を登っていたと思ったら いつのまにか降りていた』
な… 何を言っているのか わからねーと思うがおれも 何をされたのか わからなかった…」
ポルナレフが宿敵ディオのスタンド能力(超能力)を体感したときの台詞だ。
騙される人間は自分が騙されているということに気づかない。
よしんば「何かおかしい」と疑問に思ったところで、頭は混乱し冷静な判断はできなくなっている。
劇団ハンニャーズ公演 ゴールデンハンモック を観てきた。
アルゼンチン映画 NINE QUEENS を原作とする、騙し合いのシリアスなストーリーだ。
ペテンは冒頭の古本屋のシーンからすぐに始まる。
勘のいい観客はすぐその手口に気付き、劇場にクスクスとした笑いが起こる。が、頭の鈍い私のような客は、指を折りながら金を数える。
あ、時そばみたいなやつか。
そう気がついたときにはもう、最初の暗転だ。私は騙される側の人間だと実感する。
本公演はハンニャーズのメンバーだけでなく、新潟の老舗劇団から多くの名優が参加している。その名優達によって、現実さながらの詐欺のやりとりがおこなわれる。
罠のかけあい。
登場人物、そして観客も『おやっ?』と思い、考えを巡らせる。
ちょっと待てと口を挟もうとすると、大きな声と早口でペースを捕まれ、こちらの疑問を遮られる。
ペテン師とTVタックルの手口だ。
観客は騙されているとわかっていながらも、そのスピードに振り落とされないようについていくしかない。誰が騙されているのか、それすらもよくわからなくなっていく。
高まる集中力。ふるえるぞハート、燃えつきるほどヒート、刻むぞ血液のビート。
まさに波紋疾走。
脚本と演出を手掛ける中嶋かねまさ氏は、公演開始の10日ほど前、自身のブログでこう言っていた。
「3分長い。3分縮める事が出来れば最高の作品になるでしょう。」
その3分は観客をハメるための3分だったのではないか。
騙し騙されの裏を読み取る時間、その3分を削ったことでスピードとテンポが生まれ、爽快なエンディングに結びつく。
ズキュゥゥゥン。時が動き出すのは全てが決着したあとだ。
半年ほど前、第二黎明期のシダジュン氏がやっているうどん屋に行った。
未だにあのうどん屋の店主と、舞台に立っていた食えない親父が同一人物だとは思えないんだが。
私はそのときから騙されていたんじゃないだろうか、という気になってくる。
誰の価値観かわからない全米大ヒット観に行くなら、こっち観に行けよ。おもしろいぞ。
劇団ハンニャ-ズ公演「ゴールデンハンモック」
開催日時 |
2012年7月23日(月) 20:00~ 2012年7月27日(金) 20:00~ 2012年7月28日(土) 14:00~ 2012年7月28日(土) 19:30~ |
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場所 | シアターent (新潟市西区寺尾上1-7-20) |
料金 | 前売(一般)2,000円 /(高校生以下)1,000円 前売(一般)2,300円 /(高校生以下)1,300円 |
予約 | 発売中 |
作・演出 | 中嶋かねまさ |
原作 | フェビアン・ビエリンスキー “NINE QUEENS” |
出演 | 高橋景子(劇団第二黎明期) / 横山泰之 / 近藤聡実 / シダジュン(劇団第二黎明期) / 小林へろ(heropro) / 谷藤幹枝(谷籐幹枝事務所JOV) / 佐藤正徒(WARP) / 逸見友哉(劇団第二黎明期) / 山田好宏 / 小出佳代子 / 渡辺美恵子 |
詳細 | 詳細やチケットの予約は、劇団ハンニャ-ズWebサイトまで |
シアターent
所在地 | 新潟市西区寺尾上1-7-20 |
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