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だからチェルノブイリとは違うって何度言えば分かるんだってばよ!原発についてまとめてみた

2011/03/14 18:07 Modified date 2011/12/05 Author

 「でもチェルノブイリは…」「ただチェルノブイリでは…」と何度もゲストの原発(原子力発電)の専門家に質問するキャスターがテレビに出ていましたが、仕方がないのでチェルノブイリと日本の原発は何が違うのか、(いまさらですが)まとめてみました。

柏崎刈羽原子力発電所サービスホール
continuation of the article

 高等教育を受けた人、または柏崎刈羽原子力発電所に併設されているサービスホールを見学したことがある人ならば(当然)知っていることと思いますが、原子力発電は主にウラン原子の核分裂のエネルギーを利用して発電を行うものです。

原子力発電の仕組み

figure01

 まずウラン235(原子記号 U)に中性子をぶつけます。すると、ウラン235は中性子の分だけ原子量が増えてウラン236になるわけですが、このウラン236は不安定であるため、より安定なキセノン(原子記号 Xe)とストロンチウム(原子記号 Sr)、および中性子2つに分裂します。この時、同時に大きなエネルギーが生じます。原子力発電はこのエネルギーを利用しています。

figure02

 もちろん、反応はこれで終わりません。ここで発生した中性子は別のウラン235に衝突し、上の図のように核分裂の連鎖反応が生じます。

 さて、一口に「大きなエネルギー」といってもどのくらいなのかと思う人もあるかもしれませんが、ウラン236原子1つ当たり200MeV(メガエレクトロンボルト)です。メガエレクトロンボルトとか言われてもよく分からんと言う人は多いと思いますが、簡単に言うと、天然ウラン(ウラン235の含有率0.7%)が0.6mgあればポットのお湯が沸かせちゃうくらいのエネルギーです。つまり、ウランを使えばへそで茶を沸かすことも夢ではないということです。(へその安全を保証するものではありません。)

 一応、以下、計算式です。なんか勘違いしてたらごめんなさい。

1,000g(1L)、20℃の水を沸騰させるとした場合、
80 cal/g * 1,000 g = 80,000 cal = 2.1*10^18 MeV
2.1*10^18 MeV / 200 MeV/個 = 1.1*10^16 個
1.1*10^16 個 / 6.0*10^23 個/mol = 1.8*10^-8 mol
1.8*10^-8 mol * 235 g/mol = 4.2*10^-6 g
4.2*10^-6 g / 0.007 = 6.0*10^-4 g = 0.6 mg

 ちなみにここではウランをキセノンとストロンチウムに分裂させていますが、これは数多くあるウランの核分裂反応の1つであり、他にもさまざまな核分裂反応があります。発生する中性子の数も変わります。
 福島第一原発のニュースで放射性のカリウムだのセシウムだの言ってますが、これらもウランの核分裂反応で生じる物質です。

 要はウランに中性子をぶつけると核分裂が起き、そのエネルギー(熱エネルギー)を発電に利用しているのが原子力発電、と言うことです。

figure03
原子力発電のしくみ|原子力|東京電力

 原子力発電では核分裂のエネルギーでお湯を沸かして、その蒸気の力でタービン(発電機)を回して発電しています。蒸気でタービンを回して発電する、という部分は火力発電と同じですね。

原子力発電の種類

 さて、基本的な原子力発電の仕組みは上記の通りですが、同じ3Dテレビでもアクティブシャッター方式だのパターニング方式だのと様々な種類があるように、核分裂反応を起こす原子炉にもいろいろ種類があります。

原子炉の基礎知識

 原子炉の主な構成要素は以下の4点。いわゆる炉心部分です。この部分の構成の違いが原子炉の方式の違いに繋がっています。

  • 核燃料
  • 制御棒
  • 減速材
  • 冷却材

核燃料

 核燃料は多くの場合、ウランの事です。ただ同じウランでも天然ウラン、低濃縮ウラン、高濃縮ウランなど、原子炉のタイプで使用するウランが異なります。ウランではなく、MOX燃料というものもあります。
 核燃料をセラミックで固めたもの(1cm角くらいの大きさ)を「ペレット」、ペレットを棒状にまとめたものを「燃料棒」、そして燃料棒を束ねたものを「燃料集合体」といいいます。

柏崎刈羽原子力発電所サービスホール

 この写真は柏崎刈羽原発のサービスホールにある1/5スケールの原発の模型です。燃料集合体がみっしりと詰まっています。

制御棒

 核分裂反応を制御するためのアイテムです。
 制御棒は中性子を吸収する物質(ホウ素、カドミウムなど)で出来ています。上述のように、核分裂の連鎖反応は中性子が放出されて次のウランに衝突していくことで進みます。これは逆に言うと、中性子を吸収してしまえば反応が止まると言うことです。
 原子炉ではこれを利用して、核分裂反応を制御しています。

減速材

 ウラン235は「遅い」中性子と反応しやすいのですが、核分裂で生じるのはそれよりも「速い」中性子です。減速材はその「速い」中性子をウラン235と反応しやすい速さに減速するアイテムです。減速材としては水、黒鉛などがあります。

冷却材

 冷却材はその名の通り、炉心を冷却するアイテムです。また、場合によってはタービンを回すのに使われたりするアイテムでもあります。水や二酸化炭素、金属ナトリウムなどが冷却材として使用されます。

日本の原発

 というわけでやっと日本の原発の話に入るわけですが、日本の原発は「軽水炉」という方式をとっています。減速材&冷却材に軽水(つまり普通の水)を使用するものです。
 同じ軽水炉でも東日本ではBWR(沸騰水型原子炉)、西日本ではPWR(加圧水型原子炉)という方式の違いがあるのですが、まあ、その辺、興味ある方はググるなりして調べてみてください。

柏崎刈羽原子力発電所サービスホール

 再び柏崎刈羽原発のサービスホールから。遮蔽壁のモデル。日本の原発はこのように非常に厳重な遮蔽がされています。燃料ペレット、燃料被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋の5つをもって「5重の壁」とも言います。

チェルノブイリの原発

 チェルノブイリの原発は「黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(RBMK)」と言われるタイプです。減速材に炭素を使用しており、日本の原発のように原子炉格納容器がありません。

figure04
chernobyl-figure2.pdf

原子力発電の事故

チェルノブイリでは何があったん?

 原発の事故というと必ずと言って良いほど名前が出て来る「チェルノブイリ原子力発電所事故」。諸説あったりしてまだ良く分かんない部分もありますが、経緯をまとめるとこんな感じでしょうか。

  • 蒸気タービンの惰力運転試験(蒸気タービンだけで発電するという実験)をするために、原子炉の出力を下げた。
  • 思ったより出力が下がっちゃったので出力を上げた。
  • 出力上がりすぎた。
  • 非常停止させるために制御棒を挿入しようとしたが、なんだかんだでうまくいかず、逆に出力上がった。
  • メルトダウンktkr
  • 蒸気爆発で原子炉のフタが飛んで放射性物質が on the air.
  • フタが飛んで外から入ってきた酸素と減速材の黒鉛が反応して catch on fire.
  • 炎にのって放射性物質がさらに on the air.

 実験中だったとか、原子炉格納容器がないとか、減速材が黒鉛だったとか、実験がずさんじゃない?とかいろいろあるわけですが、いずれにしても、今の日本ではちょっと考えられない状況だと思います。
 「でもチェルノブイリでは」というキャスター対して「いや、チェルノブイリは……」と困惑する専門家の気持ちが、私、今なら分かる。

スリーマイル島原子力発電所事故

 チェルノブイリと並んで名前が挙がるのが「スリーマイル島原子力発電事故」。西日本で使われているのと同じPWR(加圧水型原子炉)の原子炉で発生した事故です。
 事故の経緯をまとめると以下のような感じ。

  • 作業ミスで冷却材の循環が停止。圧力上昇。
  • 圧力を逃がすために加圧器安全弁が開く。
  • 安全弁が熱で固着して開きっぱなしに。
  • 冷却材大量流出。
  • 非常用炉心冷却装置(ECCS)が作動して冷却水を注入。
  • 注入した冷却水が沸騰。蒸気泡で水位計の表示が実際よりも高くなる。
  • 水位計がいっぱいになっているのを見て運転員が注入をストップ。
  • 注水された冷却水も開きっぱなしの安全弁から全力で流出。
  • 冷却水足りない。
  • メルトダウンktkr

 この事故ではこの後、炉心に冷却水を流し込んで冷却することで最悪の事態を免れることが出来ました。しかし、一歩間違えばチェルノブイリ級の事故になっていたとも言われているそうです。

メルトダウンって何よ?

 冷却材が漏れるなどして、炉心の熱エネルギーが取り除かれない状態が続くと燃料棒が溶け出します。これがいわゆる「メルトダウン(炉心溶融)」です(「炉心融解」はボカロの方です)。最悪の場合、原子炉そのものが破れ、放射性物質が漏れ、環境を汚染します。

 「メルトダウン」 = 「核爆発!」と思っている人は少なからずいると思いますが、メルトダウンしたからと言って核爆発は起きません。というか、原発で核爆発は起きません。なぜなら、原発で燃料として使われているウランは核爆発を起こせるほどの純度がないからです。

 原爆に使われるウラン235の濃度は90%以上。核爆発を起こすには最低でも70%以上の濃度が必要です。それに対して、日本の原発で使用されている低濃縮ウランの濃度は20%以下。核爆発するには全然足りないのです。
 原発で核爆発が起きる事を期待していた皆さんには本当に申し訳ないことです。まあでも核爆発しないからと言って、原発が絶対安全だというわけではないので、そんなに肩を落とさないでください。

という感じ

 原発は危ないですか? なぜ危ないと思うのですか?

 あなたは原発の原理について知っていましたか? チェルノブイリ原発事故が起きた経緯を知っていましたか? その被害の範囲を知っていましたか? 原子炉の構造の違いついて説明できますか? 放射線と放射能の違いを説明できますか?

 説明できないのに、なぜ危ないと思うのですか?

 「原発は危ないからいらない」というのは、「ピーマン苦いからいらない」と言うのと大して変わらない主張だと思います。百歩譲って「原発は危ないからいらない。だから作らない」と言うことにしたとして、では、どうやって電気を作り出せばいいのでしょうか。

 火力発電? あと数十年で枯渇すると言われている化石燃料を燃やし、二酸化炭素を吐き出して電気を作ることは許すのですか?
 水力発電? 今度はどの村を水の底に沈めるのですか?
 太陽光発電? コップ一杯の水を沸かすのにどれだけのシリコンウェハーと時間が必要ですか? 耳かき一杯の燃料で1.5Lペットボトルの水を沸かすことができる。そう、核燃料ならね。

 電気を使わないですむならそれが一番ですが、現実問題として、資源の少ない日本には原発が必要だと思います。実際、現在、東日本は輪番停電という騒ぎになっています。この事態の中で「節電すれば原発なんていらない」と言えるでしょうか。

 今の日本から原発を無くすことは非常に難しい事だというのは誰も分かっていることだと思います。無くすことが出来ないならば、せめてうまく付き合っていくしかありません。そのためにはまず、原発とはなんなのか、知る必要があります。「テレビで危ないと言ってたから危ないんだ!」というのではあまりにもお粗末です。

 知る方法はいくらでもあります。高校で使われる物理の教科書でも、ここに書いた程度の事は書いてあります(この記事もその教科書を参考にして書きました)。柏崎刈羽原発のサービスホールは無料で入館できます。頼めば展示の解説もしてくれると思います。

 子どもたちにTDLに行った回数を競わせるのも良いでしょう。でも、原発のような、生活に密着したものについての正しい知識を身につけ、考えることも大事なのではないでしょうか。

 そして、記事を書いて思ったのは「もう一回柏崎刈羽原発のサービスホールに行って展示を見たい!」と言うこと。絵だけじゃなく、スケールモデルがあるってのはやっぱり、すっごいわかりやすいです。発電所構内見学も今度参加してみたいと思っております。以前は原子炉の真上まで見学できたのですが、今はもうやってないのかなぁ。あれもまた見てみたい。にわか知識を身につけた今なら絶対面白い!(いや、昔行ったときも面白かったけれども!)

参考

シップマン自然科学入門新物理学

  • 著者/訳者:J.T.シップマン
  • 出版社:学術図書出版社 ( 2002-11-30 )
  • 新書:279 ページ
  • 定価:¥ 2,376
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