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話半分で受け取ってください。

とある博物館の売店の営業は無事に終了しました。現在はカプセルトイを中心に設置してます。

オンラインカジノのマルチに勧誘されてみた話

 ひさしぶりー! 急だけど副業とか興味ある? 隙間時間で2から3万稼げるよ! すごい先輩もくるから説明会参加してみない? 絶対後悔させないし、むしろ俺に感謝するで。

怪しいInstagramの投稿とLINE

 ある日、知人から「高校のときの同級生(以下、勧誘者T)がインスタでおかしな画像をあげだした」という話をされました。LINEでも「ヒマある?」「副業に興味ない?」「スマホで簡単」などと積極的にお誘いが来るとのこと。グレートですよ、こいつは。

 いかにも怪しいインスタのストーリーの一部。同級生の間で「あいつ、なにやってんの?」と話題になっていました。もちろん悪い意味で。

 インターネッツスキルをフルに駆使して調査した結果、勧誘者Tがハマっているのは「ERAイーラ」という、その筋では有名なマルチ商法の組織のようでした。

 「ある日突然連絡をとってくるかつての同級生はヤバい」を地で行くスタイル。
 テンプレがあるらしく、だいたい同じ内容でだいたい同じテンションのメッセージが送られてくる。しかもしつこい。
 反応したら負けです。
 誤って反応するとこう返ってきます。ヤバいですね★

ERAとは

 このマルチ組織はこれまでに AE(アジア・エンターテイメント) → FLM(フューチャ・リンク・マルタ) → NO-VA(ノヴァ) → ERA / divine(ディヴァイン) → True Thor(トゥルー・ソー) と名前を変えて存続しているマルチの老舗です。NO-VA時代には逮捕者2人を排出しています。

 また、このERA自体も2022年9月に特商法違反で15人の逮捕者を出しています。

 逮捕者が出て以降、ERAの活動は休止状態になっているようです。ERAのログインページには長期メンテナンスの案内が出ていてログインできなくなっています。

  • ログイン | era
    https://www.era-gl.com/affiliator/login/

 でも、ついこの間、同じようなマルチ事案が歯科衛生士方面から届いたので、似たような組織は活動してる模様。True Thorか、もしくはERAがまた名前を変えて活動しはじめたのかも?

接触

 最初はただウォッチしていたのですが、「誘いに乗ったらどうなるのか」という好奇心が抑えられず、とりあえずインスタをフォローして日々投稿されるストーリーに積極的に反応するところからはじめました。

 そして、見事HIT!! 勧誘者TからインスタでDMが来た!

 最初は「Sports lab」というオンラインカジノに誘導されました。一見、よくある仮想通貨のオンラインカジノみたいなつくりのサイトです。しかし、検索エンジンにインデックスされないようにしているらしくググっても出てきませんでした。
 サイトのURLは以下の通り。ERAで逮捕者が出て以降はアクセスできなくなっています。

  • https://sports-lab.com/

 なお、勧誘者TがDMで貼ってきたリンクは以下のようなフォーマットになっていました。とりあえずURLからERA確定。

  • https://www.era-gl.com/player/banner/[0-9]/[0-9]{7}/

 ここにアクセスすると以下のようなURLに転送されるようになっていました。この部分は一応、アフィリエイトという体になっています。

  • https://sports-lab.com/?affiliateId=[0-9]{7}&affiliateType=1

 転送前後の7桁の数字([0-9]{7}の部分)は別のものになっていました。内部的になんらかの変換が行われているのか、何の意味もない見せかけだけの数字なのかは不明です。

 勧誘者TとのインスタのDMでのやりとりは一日一往復くらいのペース。もっとグイグイくる感じなのかと思っていたのですが、わりと放置気味です。このへんは勧誘者によってノリが違うかもしれません。

 そんなこんなで断続的に数日やりとりして(といってもほとんど1日1往復なので全部で10通程度のやりとりしかしていない)、ようやく本丸の「オーナー業」の話を引き出すことができました。

 マルチっぽいやつきた!

 その後はLINEのIDをもらってLINEでのやりとりに移行します。

LINE通話

 インスタのDMからLINEへ移行したのは、単純に通話を使う必要があるためのようです。話はいきなり通話の調整に入ります。

 通話をはじめる前に自己紹介(名前、年齢、住所、職業)を送れという謎の指示もありました。同じようなやりとりを複数人と同時並行で進めていて、通話時にどれが誰だかわからなくなるのを防止するための措置なのかも。

 「5〜10分」の通話は、大幅に予定の時間を越え、最終的に30分かかりました。これに限らず基本的に時間にはルーズです。

 通話の内容としては

  • 自分はこんな夢がある。そのためにこの副業で稼いでいる。もっと稼いでいる人たちもいるよ! やろうぜ!
  • 今の生活にプラスの収入が入ってくるとしたら、キミはどんな (ものがほしい|ことがしたい) ? それ実現できるよ! やろうぜ!
  • 最初は2万確定でくる。それ以降は成果報酬。自分は毎月10万以上もらってる。20代で月収50万越えの人もいるよ! やろうぜ!
  • 説明会、参加するしかないよね! やろうぜ!

 という、安い自己啓発本の目次を第一章だけさらったようなものです。適当に話を合わせて説明会の日程を調整しました。説明会はZoomを使って行われるとのこと。

 通話の間、「早くはじめたほうが収入が増える」とか「説明会の席が埋まるかもしれない」とか、早くはじめさせたい空気をひしひしと感じました。考える暇を与えて正気になってしまうことを警戒している感じ。まあ、今回は説明会に参加する気満々なのでそんな心配は無用なのですがw

勧誘者Tについて

 なお、勧誘者Tについて、このLINE通話を聞いた勧誘者Tのかつての同級生は「話し方が昔と全然違うwきめぇwww」と感想を述べていました。

 また、通話の中で勧誘者Tは「親とは話し合って理解してもらった上でN市に引っ越してこの仕事(マルチ)をしている」と言っていましたが(N市にERAの拠点がある)、こちらの独自調査では、家族には転職のために県外へ引っ越したことになっており、両親はマルチの活動をしていることを知りませんでした。
 これに限らず全体に言ってることに矛盾や嘘が多くて、正直どこまで言ってることが本当なのかよくわかりませんでした。もしかしたら本人もなにがウソでなにがホントなのかわからなくなってるのかも。

つかまるよ、マジで。

 ちなみに、このように連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)の勧誘を行う場合、勧誘者は被勧誘者に事前に以下の内容を告知する義務があります。

  1. 商品(役務)の種類
  2. 取引に伴う特定負担に関する事項
  3. 特定利益について広告をするときにはその計算方法
  4. 統括者などの氏名(名称)、住所、電話番号
  5. 統括者などが法人で、電子情報処理組織を使用する方法によって広告をする場合には、当該統括者などの代表者または連鎖販売業に関する業務の責任者の氏名
  6. 商品名
  7. 電子メールによる商業広告を送る場合には、統括者などの電子メールアドレス

 今回の場合、勧誘者Tはなにも告知していないので特商法違反である可能性があります。まあ、おもしろいんで今回はどうでもいいですけど。

説明会 前日

 再度LINE通話。説明会前の事前確認。主な内容は以下の通り。

  • Zoomでの説明会前に説明会用のLINEグループに招待する
  • 説明会は顔出しで参加

 本当に事前確認だけ。10分くらいで終わりました。この通話、必要だった?

説明会 当日

注意事項の確認

 説明会開始1時間前に説明会用のLINEグループに追加されます。LINEグループの参加者は全部で5人。説明会本編でオンライン参加していたのは私だけだったので、自分以外は運営側だったのかも。

 その後、説明会の講師Hから注意事項が投稿されます。内容は以下の通り。

  1. 説明会を聞く際はひとりで集中して聞ける環境をご用意ください。
  2. 外にいる場合や移動中の電車の中、運転中の説明会参加はご遠慮いただきます。
  3. 説明会が約1.5時間、質疑応答が約1.5時間になります。最低3時間以上の確保をお願いします。
  4. 説明会開始前、説明会中に簡単な質問をする場合がありますので返答をお願いします。
  5. カメラは常時ONでお願いします。説明会の参加は必ずハンズフリーのイヤホンでお願いします。
  6. 録画、録音、スクリーンショットは禁止とさせていただきます。
  7. 通信制限がかかっていたり、通信環境が悪い状況の場合は、日程変更お願いします。
  8. 現在学生の方、20歳未満の方、障害者手帳を持ってる方は参加できません。
  9. 録画、録音の疑いがある場合、情勢退出をかけさせて頂きます。
  10. 録音、録画、スクリーンショットは発覚した時点で法的対処をさせて頂く場合があります。以下のサイトを一読してください。
    著作物を適法利用するために | 公益社団法人日本複製権センター(JRRC)
    https://jrrc.or.jp/educational/guide/penalties/

 「ひとりで集中できる環境」や「ハンズフリーのイヤホン」の使用を推奨しているあたりに参加者を独りにしたい意図が見えます。孤独にすることで勧誘しやすくしているようです。

 学生や20歳未満、手帳持ちをはじくのは消費者金融でお金を借りさせる際に審査が通りにくいためと思われます。
 手元資金がないことを理由に契約を断ろうとしても消費者金融のATMに無理矢理連れて行って契約金分の借金をさせるケースがあるようです。今回はリモートでの参加だったのでその心配はありませんでしたが、現地参加の場合はお気を付けください。

 著作物云々は言ってるほうもよくわかってないと思います。中でなにが行われているのかという情報を外に出したくないので、法をちらつかせて牽制しているというのが実際のところだと思います。

ブリーフィング

 LINE通話。勧誘者Tが被勧誘者(私)と講師Hをそれぞれ紹介する。そのあと講師HがLINEで投稿してきた注意事項を音読。(それ必要?)

説明会 第一部

 いよいよZoomでの説明会がスタート。Zoomと現地(N市のERA拠点)での同時進行でした。参加者は自分のほかに現地にひとりいました。「参加したい人はいっぱいいるのでできるだけ早く参加を決めたほうがいい」とはなんだったのか。(まあ知ってた。)

 現地参加の男子。右が勧誘者で左が被勧誘者でした。たしか。被勧誘者は人のよさそうな二十歳の若者でした。今どうしてるんだろ。ちなみに右上の小窓の人物は私です。画質悪いのでよくわからないと思いますが、IT系っぽく見えるようにF原氏から衣装借りて、年齢を偽るためにファンデ塗ったくって若作りしたw

 説明会は講師Hの自己紹介という名のサクセスストーリーから開始。買いたいものを買ったり、食べたいものを食べたりという、これまでに何回も聞かされた話を聞かされました。

 中山秀征のような貼り付いた笑顔が素敵な講師H。典型的なヒラメ顔ではありますが、自分の見せ方わかってる感じでよかったです。頭も回る印象。いろいろわかったうえでやってるタイプ。

 そのあとアフィリエイトの説明に入ります。
 なんかよくわからない付属情報がいろいろついてくるのですが、要約すると「Sports lab(スポーツ・ラボ)」というオンラインカジノサイトへのリンクをSNSに貼り付けて、リンクを踏んできた客がサイトでお金を使うとその一部が紹介者にキックバックされるアフィリエイトを運営している、ということのようです。

 話してるほうもわからせる気はゼロですし、なんなら講師自身もなに言ってんのかわかってないと思います。なんかすごいものがあるという雰囲気を作り出して場に酔わせるのが目的っぽいです。

Oriental Wallet

 ちょっと気になったのはOriental Walletという決済サービス(講師Hは銀行みたいなものと言っていた)。

  • Home Jp – Oriental Wallet
    https://orientalwallet.com/jp/

 この「Oriental Wallet」が使えるオンラインカジノが「Sport lab」しかないため、ERAの運営のために作られたサービスなのではないか、という説がががががが。マルチのために決済サービスをひとつ作るとか、普通に怖いんだが……。そこそこの規模のバックおるの……?

 しかもサイトのソースを見るとメタタグで noindex が設定されていて、Googleなどの検索エンジンにインデックスされないようになっています(ググっても出てこない)。そのあたりもなんかよくわかんなくて怖い。

説明会 第二部

小休憩を挟んで第二部。ビジネスプランの説明。ここからが本番。カジノサイトのアフィリエイトは無料会員でもできるけど、「Royal Premier」という有料会員になるとさらに収益をあげる方法が増えます!

 有料会員のプランは以下の2つ。

  • シングル登録:€1,800。日本円で約25万円。収入源を1つ持った状態ではじめられる。
  • トリプル登録:€1,800 x 3。日本円で約75万円。収入源を3つ持った状態ではじめられる。

 登録費用の支払いは分割でもOK! なんなら消費者金融のATMの使い方を教えてあげるよ! ちな、あとからシングルからトリプルへのアップグレードはできないからよく考えてね!

 さて、では有料会員になると具体的にどのような収入が増えるのかというと以下の3つです。

  • ゲーム代:紹介した人がオンラインカジノで費やした金額からキックバックが入る。アフィリエイト的な感じ。つか、これ無料会員のアフィと被ってない?
  • オーナー代:自分が紹介して有料会員になった人から収入が得られる。自分から見て子会員からは10%、孫会員(孫会員以下?)からは2%が上がってくるらしい。マルチな要素出てきた!
  • 世界売上 均等分配:なに言ってんのかよくわかりませんでした。運営してるカジノサイトの売上の2%を登録者に分配するとかいうものらしい? ただし、この分配金をもらうためには最低2人を有料会員に勧誘しなければいけないという条件があります。

 ポイントポイントで「勧誘や営業もない」「ノルマはない」と口にするのですが、よく考えると最低2人は有料会員に「勧誘」しなければならないという「ノルマ」がある状態になっているので、ダウト。
 また、説明会では言及されませんでしたが、実際に報酬を得るにはオンラインカジノで毎月26,000円を使わなければならないという条件があったりします。事前に説明がないので特商法違反でアウト。

15日間の試用期間

 続いて15日間の試用期間の話。有料会員には15日間の試用期間が設けられています。試用期間中に解約した場合、返金してもらえることになっています。ただし、5%は手数料として引かれます(実際にはOriental Walletの手数料とかでさらに引かれるらしい)。
 いや、つーか、連鎖販売取引(マルチ)はクーリングオフ対象だし、クーリングオフ期間は20日間だし、クーリングオフは全額返金しなきゃいけないんだが?

 なお、試用期間中にやることは以下のような内容らしいです。

  • SU(スタート・アップ):法律と収入プランを教えてもらえる。1時間程度。
  • BT(ビジネス・トレーニング):考え方ややり方を教えてもらえる。1時間程度。
  • MTG(ミーティング):ほしい金額に合わせたプランを作る
  • Go!!

3種の変人

説明会の最後に講師Hが語ったこと。それは世の中には「3種の変人」がいるということでした。この3種類に該当する人はこの素晴らしいビジネスをはじめられないかわいそうな人です! その3種類の変人とはこんな人たち! あなたは違うよね!

  1. 親・友達・恋人に相談しないと決められない人。相談しても「怪しい」と反対されるに決まっているので相談するだけムダです!
  2. ネットに書いてあることを信じる人。このビジネスについて儲からないだとか詐欺だとかよく書いてありますが、アンチマーケティングでお金を稼いでる人たちが書いたものです! 騙されてはいけません!
  3. 考えてから行動しようとする人。話を一旦持ち帰った人でこのビジネスを始めた人はいません! さあ、このチャンスを今すぐものにしよう!

 この「3種の変人」の話は「なるほどー」と思わせられました。ネーミングセンスはイマイチですが、そこには端的にこのグループの方針がまとまっています。

 それすなわち、「まわりに相談をさせず、世間から隔離し、思考力を奪う」。

 それってカルトのやり方と同じなんよ。
 まともな頭を持った人なら「お前は一体なにを言ってるんだ?」となるところですが、どうやらこれにがっちりハマってしまう人が世の中には存在していて、この「3種の変人」を鵜呑みにできるかどうかが有料会員候補者を選別する指標にもなっていそうです。個人的にはこの話が聞けただけでもこの説明会に参加した価値がありました。

質疑応答

 Zoomでの全体説明会のあと、再びLINE通話に移行し、講師に聞きたい質問を事前に勧誘者Tが聞き取りします。先ほど現地で説明会に参加していた人との交流は一切ありません。

 一通り質問を聞き取ったあと、講師Hを通話に追加して質問に対する回答をもらいます。
 てか、聞き取りした質問を事前に講師Hに回しておくのかと思ったら、その場で勧誘者Tが質問を読み上げるだけだった。それ、勧誘者Tを挟む必要あった? つか、そもそも勧誘者Tやる気あんのマジで? もの知らないし、メモもろくに取れないし、説明会でも途中ちょいちょい姿消してたの、わかってないとでも思ってんの? ちゃんと話聞いて相づちまで入れてるオレがバカみてーじゃん。

 説明会中、なぜか頻繁に姿を消す勧誘者T。やる気ないなら出てってくれないか。(いない。)

「トリプルをキメました」

 質疑応答中、講師Hがなぜか突然の一次離席。戻ってきたときに「Y(今回のもうひとりの被勧誘者)がトリプルをキメました」と報告してきましたが、まあウソです。契約に対する心理的障壁を下げるために毎回やってるんだと思います。逆に被勧誘者Yには私がトリプルをキメたと言うフェイク情報が流されていたのではないかと思われます。

 説明会は大体こんな感じで終了。ほかにもいろいろあるのですが、まあ、それはまた別の機会に。(機会があれば。)

この件を通してなにを伝えたいのか

 マルチを撲滅しよう! などという尊大なことは微塵も考えていません。マルチにハマる人は一定数存在し続けるし、マルチにハマる人が存在する限り、世の中からマルチは消えないでしょう。
 それどころか、今回、マルチを運営するためだけに決済サービスを立ち上げる程度にはマルチ市場が大きい可能性すら示唆されました。もしかしたら特殊詐欺ともつながっているのでは? と思ったりしました。
 これは個人的な仮説ですが、マルチにハマる人は特殊詐欺にひっかかる可能性も高い可能性があります。私が運営だったら、マルチにハマった人のリストを作って、そこに載ってる人に特殊詐欺を仕掛けます。ひとりで二度美味しい。

ハマる人はハマる

 では、この件を通してなにを伝えたいのか。それは「ハマる人はハマる」ということ、そして我々一般人には「ハマる人を助けることはできない」ということです。

 「3種類の変人」の話など、普通に考えれば「お前はなにを言っているんだ?」と感じるはずです。それ以外にも「?」と思うポイントが山ほどあります。普通の人なら違和感が多すぎて気持ち悪さを感じるレベル。
 しかし、一部のマルチにハマる人はその違和感を感じることができないのです。スパムメールの文面がバカっぽいのはそのバカっぽい文面でも引っかかるバカをフィルタリングしているからという説がありますが、それに近いものがあります。

例えば

 例えば新たにグループに参加した人は1ヶ月以内に新たに2人を勧誘する、というルールで考えてみましょう。1ヶ月以内に2人勧誘したらそれ以上はなにもする必要はありません。内容にもよるとは思いますが、単純に2人勧誘するだけならできそうな気がしますよね。

 そうするとグループ全体の人数は、1ヶ月目は1人、2ヶ月目は2人増えて3人、3ヶ月目は4人増えて7人となっていきます。その調子で増えていくと12ヶ月目には 2^12 – 1 = 4,095人になっています。2年後には 2^24 – 1 = 16,777,215人、3年後には 2^36 – 1 = 68,719,476,735人になります。すごいですね。

 ではグループに参加する際に参加料として1人1円出してもらうことにしましょう。1円くらいなら出してもらえそうな気がします。そうすると3年後には合計で 68,719,476,735円集まることになります。ヤバいですね★

 ここまで読んで「そうはならんやろ」と思った人はたぶんマルチ耐性があります。「へー」と思っただけの人はマルチにハマる才能があるかもしれません。

騙されていることに気が付いていない

 マルチや詐欺にハマる人はそもそも疑うことをしないのです。直近で入ってきた情報を鵜呑みにします。その結果、騙されます。入金しようとして向かったコンビニや銀行で止められて、はじめて騙されていたことに気付かされます。そして言うのです。「騙されるとは思ってなかった」と。
 下手すればその段階になっても本当の意味で騙された(騙されている)ことがわかっていない可能性すらあります。光がなければ影が生まれないように、疑うことを知らなければ「騙される」という状況も発生し得ないのです。そして今度は「だまし取られたお金を取り戻します」という詐欺に引っかかるのです。

 特殊詐欺の被害者はみんな「自分が騙されるとは思っていなかった」と言うので、それを教訓とすれば「自分は騙されないと思っている人ほど詐欺に気をつけろ」ということになるのですが、あれはそもそも順番が逆なのです。
 まあ、警察としては「引っかかる人は一定数存在するのでどうもできない」なんて言えやしないのでしょうけども。

 実際、勧誘者Tはこの説明会のあと(なぜか)マルチをやってることが親バレして一時期実家に戻ったようですが、すぐにN市に戻っていったという風の噂を耳にしました。これはそもそも騙された(騙されている)意識がないためでしょう。
 おそらく本人は悪いことをしてる意識も詐欺の片棒を担いでる意識もまったくありません。むしろ正しいことをしていると信じている可能性すらあります。
 また、SNSにマルチ関連の投稿をしまくるなどしたことでマルチ以外の交友関係を壊してしまったことも大きく影響していると考えられます。戻る場所がマルチ関係者以外にないのです。カルトの構図と同じです。

君子危うきに近寄らず

 というわけで、普通の人はマルチにハマる心配をしなくても大丈夫です。あちらとこちらの世界線が交わることは基本的にありません。

 もし知人で「あ、こいつやってんな」と言う人がいても基本的に無視でおk。目に余るようならスパブロしましょう。そういうトラブルに楽しみを見いだすタイプの人間でないなら、自分から面倒に巻き込まれに行くことはありません。

 勧誘してきたのは大事な友人でしたか? 残念ながらその友人はもう別の世界の住人です。悲しいけれどブロックして関係を断ちましょう。
 間違っても助け出そうなどとおこがましいことを考えてはいけません。そういうことは行政などの公の組織に丸投げしましょう。我々一個人の手に、それは余ります。普通の人では、一緒に引きずり込まれることはあっても救い出すことはできません。たとえ一時的に引っ張り出すことができたとしても、いつのまにか向こう側に戻っています。そういうものです。

 逆に言えば、マルチがその人の居場所になっているのです。かつて居場所があった場所(学校や職場などのマルチ以前の人間関係)はこれまでの勧誘行為によって焼き尽くされ、もう失われています。
 仮にあなたの手でその人を(もう焼け野原になっている)かつての居場所に引き戻したとして、果たしてその人は幸せだと言えるのでしょうか。それよりは(いびつには見えても)自分と同じ考えを持ち、(誤っているように見えても)自分と同じ行動をし、(見せかけに見えても)自分を仲間だと思ってくれているマルチのグループの中に生きるほうが本人は幸せなのでは? はたしてそれを奪う権利が私たちにあるのでしょうか。(などとおもしろがって状況を引っかき回したオレが言ってみる。)

逃げることを躊躇しないで

 もしかしたら、中には本人の意に反して説明会などに参加させられるケースもあるかもしれません。

 もし「ヤバそう」と感じたら、そのときは全力で逃げてください。逃げることで(物理的/精神的に)なにかが壊れたり、(物理的/精神的に)誰かが傷ついたりすることを恐れないでください。これは緊急避難です。全力で走って逃げてください。警察に転がり込んでください。トイレの個室などの安全が確保できる場所に逃げ込んで警察を呼ぶのもいいでしょう。そこまですれば向こうはあなたを追うことをあきらめるはずです。自らマルチにハマる人はほかにいっぱいいるので、向こうからすればあなたのようなめんどくさい人をしつこく追いかける理由などないのです。

 それでは皆様、今日も一日、ご安全に!

カルトのことば:なぜ人は魅了され、狂信してしまうのか

  • メーカー:白揚社
  • カテゴリ:単行本(ソフトカバー)
  • 発売日:2024/10/18

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