ここのところ毎晩お送りしているシリーズ「新潟の怪談」。さあ、いよいよストックも少なくなって参りました!
さて、今回は生きている人が織りなす不思議なお話。生き霊となって光源氏を苦しめた六条御息所も「その発想はなかったわー」と言ったとか言わないとか。
それでは、第3談「未来の私」をどぞ。
部屋のふすまの前に子供を抱いた女が立っている。その女は、怒っているような、恨めしいような表情で、寝ている自分を睨んでいる。それは夢なのか現実なのか、よくわからない。でも、そんな女が部屋にいるわけはないので、たぶん、それは夢なんだろうと思う。
「それがどうも、お前の顔に似てるんだよなぁ」
そう、父は不思議そうに彼女に言った。その夢は一度きりでなく、何度も見ることがあったらしい。最初は誰か分からなかったのだが、何度もその夢を見るうちに、その女は大人になった自分の娘だと分かってきたという。
その話を聞かされたときは彼女も「なんでだろう?」と不思議に思ったのだが、それから数年して両親が離婚。その辺りを境に彼女と父親との関係も悪化した。
そして今、あのとき父が見ていたものは、確かに未来の私の姿だったのかもしれない、と彼女は感じている。
「もしそうなら、この先、私はちゃんと子供を授かるらしいですね。」
そう言って、彼女はふっと笑った。