楽しみに待っていた新潟県立歴史博物館の春季企画展「博物館の怪談」の内覧会に行って参りました! いきなり結論。この企画展に行かない手はない!
開催の話を聞いてからずっと楽しみにしていたこの企画展。東日本大震災の影響により、開催が危ぶまれたりもしていたのですが、この通り、無事、内覧会の日を迎えることが出来ました。
いつもならばオープニングセレモニーでテープカットなどが行われるそうですが、今回は東日本大震災に配慮し、セレモニーは省略。簡単な挨拶のみの式となりました。でも、早く展示を見たい自分としてはセレモニーの省略は正直歓迎です。
まずは新潟県立歴史博物館の中島太郎館長の挨拶。FM三尺玉でFMながおかの佐野護さんと長岡まつりの解説をしていたのは、この中島館長です。今年の長岡花火でもあの絶妙な掛け合いを聞くことが出来るでしょうか。ちなみに会場には佐野さんの姿もありましたよ。
続いて、東洋大学の竹村牧男学長。東洋大学は、旧越路町出身で、妖怪研究の第一人者としても知られる井上円了が設立した大学です。2009年には妖怪学が復活。挨拶の中に自分が監修した本「井上円了 妖怪玄談」の宣伝も入れてくるあたりはさすがです。ちょっと欲しくなった。
内覧会!
今回の春季企画展「博物館の怪談」の内容は、以下の3つのカテゴリで構成されています。
- 井上円了の妖怪学
- 新潟の妖怪
- 妖怪ブームの到来
では、「これを知っておくと展示がもっと楽しめるかも!」なポイントと共に企画展の内容をダイジェストでお送りしたいと思います。
井上円了の妖怪学
新潟で妖怪と言えば、やはり井上円了です。この人を知らずに新潟の地で妖怪を語ることはできないでしょう。
というわけで、まずは井上円了の遺品で軽くジャブ。印章や掛け軸、木魚、幽霊の置物などが展示されています。
髑髏の筆立てなどはGACKT様にも気に入って頂けそうなセンス。
ここでは遺品を展示するだけでなく、井上円了による「妖怪」の分類について、例を挙げてわかりやすく解説しています。この後に続く展示を見るうえで、ちょっと頭に入れておくと良いかもしれません。
新潟の妖怪
今回の企画展のメインディッシュである(と勝手に思っている)「新潟の妖怪」の展示。普段ならば新潟県内各地、日本各地を飛び回らなければ見ることが出来ないあの品この品が、ここに一同に会しています。やべぇ。
まずはカッパ。こうしてまとまったカッパ資料をみると、新潟県内にはカッパに関係した伝承が広く分布していることが分かります。「新潟」という名前に象徴されるように新潟県は沼や潟が多く、水場がとても身近な存在だったと言うことがうかがい知れます。かくいう我が家にもカッパからもらった小柄(だったかな?)があってね。そういえば。
パンフレットにも出ているカッパの手。ケースには「河伯手」と書かれています。思っていたよりもかなり小さいものでした。孫の手くらいのサイズです。
カッパからその製法が伝えられたという「猫山あいす」。河童からもらった「あいす」という薬が上中下越全てに存在しているというのが面白いです。 なぜ「あいす」なのかググってみたところ、「酢で和える」から「あいす」となったという説が出ていました。
「アイス」は、この薬が原料を酢であえて作るらしく、「酢で和える」→「あえす」→「あいす」という事らしいです。アタマの中をdump! 猫山宮尾病院とカッパと「猫山アイス」
「え」と「い」の発音の曖昧なところが「い」の方に転がったんですね。
こちらは燕市の国上寺に所蔵されている「酒呑童子絵巻」。後の方に展示されている酒呑童子絵巻と見比べてみると面白いかもしれません。
こちらは弥彦の宝光院に所蔵されている3体の「妙多羅天女像」の1体。「天女」というにはあまりにもすっごい顔をしていますが、元鬼婆という経歴を考えれば納得? 「弥三郎婆」という名前でも知られています。
長岡市(旧寺泊町)にある西生寺所蔵の「雷獣ミイラ」。その存在はかなり以前から知っていたのですが、なかなか会いに行く機会に恵まれなかった雷獣くん。その雷獣くんに、ついにお会いすることができて感動しました。はじめましてこんにちは。
西生寺と言えば、西生寺のウェブサイトにある「おてら通信」は必見です。雷獣くんへの愛が溢れております。
面白いなぁ、と思ったのは雲洞庵所蔵の「化け猫の頭蓋骨」。実は縄文土器の一部なんですね。確かにこうしてみれば何かの頭のように見えます。
この他にも新潟県内に伝わる数々の伝説がここに大集合しています。大蛇の頭骨だとかケセランパサランだとか言う怪しげアイテムも揃っていますが、基本的に、それが何で出来ているとか、それが本物か偽物かといったことは書かれていません。謎は謎のままに。
妖怪ブームの到来
最後は妖怪という存在が時代と共にどのように変わってきたのか、その変遷を絵巻物や書籍でたどる展示です。
最初は絵巻物。妖怪の絵とその物語が展開されています。
その後、物語が消え、妖怪の絵だけが踊る、いわゆる「百鬼夜行」のスタイルになります。
そして最終的には妖怪の名前と絵だけの図鑑のようなスタイルになります。下の絵巻は「化物婚礼絵巻」。妖怪の出会いから結婚、出産までが描かれています。
このようなスタイルになると妖怪に対する恐ろしさのようなものは薄れますね。逆に、妖怪すら分類して標本してしまう人の恐ろしさを感じるかも。。
こちらは「四谷怪談」に出て来るお岩の面(左)と人形(右)。ここだけちょっと雰囲気が違う。。お岩の面は噺家の二代目柳亭左龍が使用したもので、祟りがあるとも言われているとか。やべぇ。
博物館の怪談
最後の最後に展示されていたものは、歴博の夜間巡回警備の報告書でした。個人的には今回展示されていたものの中でこれが一番怖かったです。鳥肌立った。。
報告書には「縄文展示室の放送が付いたままになってたんだけど、スイッチどこか分からんかったからそのままにしといた。でも、よく分かんないけど朝には止まってた。」という内容が書かれています。
しかし、歴博は閉館後に展示の大元のブレーカーが落とされるため、一部の展示だけが動作しているという状況はそもそも有り得ないことなのだそうです。
とはいえ、報告があった以上は無視もできません。展示に異常があるのは博物館としては非常に問題があるので、かなり真剣に原因調査をしたそうです。が、結局、どこも異常はなく、原因は未だ不明のままだとか。やべぇ。
清風明月是真怪
「妖怪」というと水木しげるが描くような、姿のある妖怪を思い浮かべますが、本来、「妖怪」という言葉は、現在で言うところの「超常現象」を指す言葉です。そういった意味で言えば、「越後七不思議」なんかも「妖怪」の1つということになりますね。
カマイタチのような、なぜそうなるかよく分からない現象に「名」を与えて縛ることで、人々は「妖怪」を具象化し、恐怖をコントロールし、時にそれを娯楽に昇華させたりしてきたのだと思います。
名を与えられ、属性を付加された妖怪は、ただ恐ろしいだけのものではなくなります。たとえば、歴博の報告書にあった妖怪(現象)も、夜な夜な展示室に現れて展示を見て回る妖怪「展示夜回(てんじよまわり)」みたいな名と属性を与えれば、恐怖と共に不思議と親しみも湧いてきます。
同様に、企画展に登場する妖怪は、恐怖の対象であると同時に、どこかで親しみを感じるものでもあります。
恐怖と親しみは一見相反するものに思えます。でも、よくよく考えるとそれって、我々が自然に対して感じるものと同じなのではないか? と思ったり。「老狐幽靈非怪物 清風明月是真怪 (老狐幽霊は怪物にあらず、清風明月是れ真怪なり)」に通ずるものがありそうです。
というわけで、今回の企画展。怪し物好きはもちろん、そうでない人にもおすすめです。資料保護のため、錦絵や絵巻物の場面の展示替えが行われるそうなので、最初と最後では展示が変わっている可能性も大。なので、個人的にはもう一回いっとこうかと思っている! 幽霊の掛け軸欲しいぞ!(売ってないけど!)
春季企画展「博物館の怪談」
日時 | 2011年4月23日(土)-6月5日(日) 9:30-17:00 |
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場所 | 新潟県立歴史博物館 新潟県長岡市関原町1丁目字権現堂2247番2 |
休館日 | 毎週月曜日(5月2日は開館) |
観覧料 | 一般700円、高校・大学500円、中学生以下無料 |
関連イベント
講師 | 菊池章太氏(東洋大学ライフデザイン学部教授) |
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日時 | 2011年5月8日(日) 13:30-15:00 |
定員 | 150名(要予約) |
講師 | 常光徹(国立歴史民俗博物館教授) |
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日時 | 2011年5月29日(日) 13:30-15:00 |
定員 | 150名(要予約) |
落語家 | 三遊亭憤楽 |
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日時 | 2011年5月15日(日) 13:30-15:00 |
定員 | 150名(要予約) |
参考
- 新潟県立歴史博物館公式ホームページ
- 全学総合科目 – 教育理念を考える – 大学紹介 – 東洋大学
- 国上寺・公式サイト-国上寺(こくじょうじ)|越後最古の名刹 くがみ山・合格祈願・受験・お守り
- ◆即身仏霊場西生寺◆
- 雲洞庵(うんとうあん)【公式ホームページ】
- 絵巻物データベース