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ネコを拾った話

ななこ

 道でネコを拾った話です。

経緯

8月29日(金)深夜

 24:30(30日の0:30)ごろ、30日のイオンカード5%OFF狙いで三条のイオンに向かう途中に交差点のど真ん中にいるネコを発見。トラックの通りも多く、そのままミンチになってしまうのも忍びないので、拾ってしまう。
 そのまま買い物に向かうのもあれなので、一旦、家に帰ることにする。

※ドラレコの時間は1時間くらいズレてます。直さなきゃだわ。

 24:50、帰宅。空いた段ボール箱にペットシーツとタオルを投げ込み、そこにネコを入れる。(ペットシーツは実家で飼ってるイヌが遊びに来たときのために置いてあるもの)
 体重632g。小さな歯も生え揃っていたので、おそらく生後一ヶ月から二ヶ月の間くらい。たぶんメス。サイズと状態から迷いネコの線は薄いと思われる。でも、ノラのわりに体はきれい。最近、雨が降ってないから? 歩き方が変。這いずるように歩く。

ななこ
 拾ったばかりの写真。緊張や不安からなのか、なんとなく眉間にしわの寄った困り顔をしているように見えました。

 いずれにしてもペット用のミルクとフードが必要なので、再度イオンに向かう。2匹目が出てきたらどうしようとか話しながら。幸い2匹目は出なかったけど。

 3:30、イオンから帰宅。ネコは箱の中で大人しく寝ていた。人の顔を見るとシャーシャーよく威嚇する。警戒しているせいか、買ってきたミルクはあまり飲んでくれなかった。

8月30日(土)

 8:00、ネコの鳴き声で目が覚める。一晩明けて混乱状態から少し醒めたのか、よりシャーシャー言うようになった気がする。ググってみたら放っておくより触られることに慣れさせたほうがいいとのことだったので、できるだけ膝の上に乗せるなどして人の存在に慣れてもらうことにする。

ななこ
 最初こそシャーと威嚇はしますが、いざひざの上に乗せてしまうと顔の周りや肉球、爪などもあまり嫌がらずに触らせてくれます。案外飼いやすい子かもしれない。

 16:00、ネコのごはんを少し食べた。

 18:00頃、ネコがニャーニャー鳴いて下痢をこぼしながらうろうろする。暗緑色の下痢で、草の茎のようなものが混じっている。そのへんの草を食べてたのかも。
 細く切った新聞紙を敷き詰めたトイレに入れたら排泄のポーズを取る。これまでで一番量は出たがスッキリしない様子。ニャーニャー鳴いてるのはうまく排泄ができないか、排泄時に痛みがあるせいっぽい? 肛門まわりも腫れている。そのあともしばらくトイレで排泄のポーズは取るが思ったように出ないようで苦しそう。
 それを見てるのもつらいので新潟市にある夜間診療している動物病院に行くことも検討する。検討している間に落ち着いてまた膝の上で寝るようになったので新潟行きはペンディングになった。しかし、一度できるだけ早めに診てもらったほうがいいということで、急遽、日曜日もやっている動物病院を探して予約を入れる。

 その日はニャーニャー鳴くのと静かに寝るのを繰り返す。

8月31日(日)

 7:00、スポイトでミルクを与える。

 11:30、動物病院。事前に書いた問診票と採取した糞を持っていった。問診票の内容は以下の通り。

8/30(土) 深夜0:30頃 道の真ん中に1匹でおり、危険だったため保護。落ち着いてから子猫用ミルクを与える。少量(1ml程度)摂取。トイレなし。
朝:子猫用ミルク少量(1mlくらい)
昼:子猫用ウェットフードをティースプーン2杯程度
昼間は活発に動いたものの、夕方から少量の下痢が始まる。トイレに入るが出ない様子。安静時も時折急に鳴き始める。肛門に赤み、少量の出血あり。
19時過ぎに元気がなくなる。
21時現在、保護からずっとおしっこなし。
深夜2時:子猫用ミルクをスポイトで少量(2mlくらい)与える
深夜にうんこをみつけたので採取

8/31(土) 一時のぐったりさはなくなるがまだ元気なし。夜中は時折鳴き声を上げていた。
7:00:子猫用ミルクをスポイトで与える。1mlほど。食欲なし。
現時点までおしっこなし、今日はまだうんこなし。

 左後ろ足の大腿部に腫れがあったので最初にレントゲンを撮る。骨折ではなかった。腫れの原因は不明。這いずるような歩き方になってる原因はこの腫れ?

 レントゲン写真から骨盤の形が気になると言われる。恥骨結合が離れすぎている? 子猫の骨盤レントゲン写真がそもそも少ないので、これが正常の範囲なのか異常なのかは分かりかねるとのこと(でもたぶん異常っぽい)。
 仮に異常だった場合、排泄に問題が出る可能性はある。ただ、何事もなかったように回復する事もあるので子ネコは成長してみないとわからない、というのが獣医の見解。

 念のためのノミダニの予防薬の投与と点滴を打ってもらう。体温が低めなので暖かくするように言われる。また、予想される月齢から誕生日は7月15日に決定。
 下痢止めやステロイドなどをミックスした薬と高カロリーネコ缶を出してもらった。(生きていたら)一週間後にまた受診するということになる。ちなみに料金は17k円だった。

 獣医の先生は、半分説明、半分独り言で調べたことやわかったことなどを口にしながら診察するタイプで、個人的に親近感を覚える。先生の言った「お願いステロイド」は今年の俺的ベスト名言賞ノミネート。

 17:00、ネコに薬を混ぜたごはんをあげる。薬のにおいがだめなのか、高カロリーネコ缶が口に合わないのか、そもそも食べる気がないのか、自分から食べようとしない。しかたがないので薬をミルクに溶かしてスポイトで飲ませる。
 それ以外はそれまでと同じようにニャーニャー鳴いたり静かに寝たりを繰り返す。

9月1日(月)

 8:00、ネコにご飯をあげる。相変わらず自分から食べる気配なし。薬をミルクに溶かしてスポイトで飲ませる。無理矢理飲ませてるせいもあってか、飲ませようとすると暴れて拒否るようになってしまった。
 昨日までは膝の上でおとなしく寝ていたが、今日は膝の上にのせてもぬるっと逃げ出してしまう。いやなことをする存在だと思われちゃったかも。ごめんね。でも少しでも食べ物や薬を口にしてもらわないと。

 14:00、カーペットの上でおとなしく寝ていたので、膝の上にのせる。最初はたまにニャーと鳴いていたが、いつのまにか下顎呼吸になっていた。膝に乗せた時点ですでにだいぶ弱っていたのかもしれない。

 14:50、ネコが息を引き取る。最初の邂逅から約63時間。
 下顎呼吸がはじまってから終わるまで、時間にして10分から20分ほどだと思う。最初は、鳴こうとしてるのに声が出てないのかなと思っていた。だから、下顎呼吸と気が付いてから10分から20分程度で死んだというのが正確かもしれない。

 最後のとき、なにか声をかけてあげたかったけど(最後のときまで耳は生きてるって言うし)、声がうまく出せなくてなにも言ってあげられなかったのがちょっとだけ心残りになってる。

ななこ
 いろんなことが一息ついたので、お祝いし損ねていた結婚記念日(8/29)のためにケーキを買ってきました。今年はななこ(ネコの名前)のぶんとして白くまゼリーを用意しました。(用意したななこのぶんのケーキは夫婦でおいしくいただきました)

あるようでない選択肢

 思えば、今回の件で我々に選択肢なんて、あるように見えて全然ありませんでした。

 最初の時点で「道の真ん中にいるのをそのままにする」という選択肢はありました。でも車にひかれてミンチになる未来の可能性を見過ごせるほどの覚悟は持ち合わせてなかったので、事実上、我々には「拾う」という選択肢しか提示されていませんでした。

 拾ったあとに「ネコを道路脇に避けて置いていく」という選択肢もありました。でも、一度道路の真ん中に出るという実績を解除してしまったネコが、道路脇から再び道路の真ん中に出る可能性は高いと言わざるを得ません。
 その可能性を回避するには、とりあえず保護して、後日、里親を探すか、動物愛護センターに持っていくという選択肢がもっとも妥当と思われました。ここでも選択肢は、あるようでありませんでした。
 ちなみにこの時点で「飼う」という選択肢は、ゼロではないものの、だいぶ低かったです。だってオレ、ネコアレルギーだから(ハウスダスト説もある)。

 保護したあと、そのままの状態で動物愛護センターにでもキラーパスするという選択肢もあったかもしれません。が、さすがにそれは無責任なので、とりあえず動物病院で診てもらうという選択肢をとりました。
ところが様子を見てる間にネコの具合が悪くなっていきました。時間とともに具合の悪い部分が顕在化してきたと言ったほうが正確かもしれません。いずれにしても動物病院に行くタイミングすら選択させてもらえませんでした。

 ちなみに、きわめて少ない過去の経験(n=1。今回のことでn=2になった)から、こういうふうに道に落ちてるネコはなんらかの問題を抱えている可能性が高いことは理解しています。だって、健康、とまでは言わずともクリティカルな問題を抱えてないノラだったら人に捕まるようなドジは踏まないから。
 だから、(拾ったオレが言うのもなんだけど)「かわいそうだから」とかいうつまらん感傷でネコを拾うとか、まじでやめとけ。そんな覚悟では誰も幸せになれない。

 最後に、動物病院での診断結果は我々から「譲渡」という選択肢をかぎりなく薄くし、事実上、自分たちが「看取る」という選択肢しかなくなってしまいました。
 そして、その時はいつくるかわかりません。明日くるかもしれないし、10年後かもしれない。実際、その時は63時間で訪れたわけですが、それは結果論であり、リアルタイムでは知るよしもないのです。

 考えてみれば、最初からビターエンドが約束された物語だったのかもしれません。

わかんないことばかり

 結局、なにがだめだったのかはよくわからないままです。どうしたらよかったのかなんてもっとわからない。

 ただ、ほとんどなにも口にしてくれなかったのはやはりこの結末への影響が大きかったと思います。63時間の間にネコが口にしたのは、約3mlの水、約10mlのミルク、舐めた程度のキャットフードのみ。なぜ食べ物を口にしようとしなかったのかはよくわかりません。ウスバカゲロウかよ。

 また30日の夕方以降は糞尿どちらもしていません。おしっこについては拾ってからの63時間、ついにすることはありませんでした。
 お腹が空っぽだったから、脱水状態だったから、骨盤の異常のせいなど理由はいろいろと考えられますが、本当のところはよくわからないままです。

ななこ
 狭い段ボールの中が大好きでした。(ピントがあってないね)

名前

 譲渡の可能性があったので、名前は付けていませんでした。
 しかし、動物病院でオンライン予約をする際に名前欄が必須項目になっていたため、急遽、(仮の)名前をつけることになりました。3分くらい考えて ななこ になりました。名無しの ななこ 。今年は令和7年だし、その後7月生まれということになったので、適当なわりにはいい名前だったかもしれないと今は思っています。できればそのまま7日間を生きぬいて、次の7日間につなげてほしかったとも。

飲んで食べて出して寝て

ななこ
 8月31日にたまたま中国帰りにうちに寄ったリンチャン(なお、日本人)に撮ってもらってた写真。情が移るのもな、と思ってあまり写真を撮らなかったけど、今となってはもっと写真を撮っておけばよかったかなと思ってます。

 この63時間はネコによって我々の世界が振り回されていました。うれしいことも、困惑することもありました。一歩一歩が手探りで、なにが正しいのか、なにが間違ってるのか全然わからないまま進むしかありませんでした。子ネコまじでわからん!

 でも、できることはしたし、してもらえることはしてもらったから、この結末もしようがないと思えます。膝の上のぬくもりがなくなってしまったのは少し寂しいけど。

 キミと過ごしたこの63時間は、愛と示唆に富んだ、ちょっとビターで、ベターよりベスト寄りの63時間でした。

ななこ
 同じくリンチャンから撮ってもらった写真。最初の困り顔はだいぶ緩和されたように見えます。過ごしやすい環境は提供できてたかな?

 また道の真ん中にネコが落ちていたら、我々はまた拾ってしまうと思います。その先に同じ結末が待っていたとしても。だって選択肢はあるように見えて、ないから。

 でももし今度があるなら、飲んで食べて出して寝て、育ってくれよ。