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話半分で受け取ってください。

もっと!とある博物館の売店を運営することになった話

新潟県立歴史博物館 ミュージアムショップ

 「夏編は近いうちに」なんて言っていたのですが、ばたばたしているうちにあっというまに一年が経過してしまいました。
 というわけでちょっと(だいぶ)時間が経ってしまいましたが、とある博物館の売店、その後の話です。

0. これまでのお話

 それは2024年春のこと。「売店の運営してくれない?」という無茶ぶりにより生まれて初めて物販をすることになったイコロズ。

 次々に襲いかかる困難を知恵と工夫と勇気と根性で乗り越え、企画展期間中の売店営業を終えたイコロズだったが……。実録売店営業顛末記、新章開幕!

1. 夏期企画展中も営業を継続することになった

新潟県立歴史博物館2024夏期企画展 大・佐渡島

 歴博では年に何回かNPOが主催する婚活イベントが開催されています。そのイベントには学芸員による展示解説なども組み込まれているのですが、実は歴博学芸員Hが解説を担当するとカップル成約率が上がるという噂があります。それは気になる……!
 というわけで、そのトークテクを確認したく(あと婚活現場の空気感を知りたく)「その日まで営業延長できたりしない?」と相談したのでした。

 で、相談したところ「だったら7月末まで契約延長する形でいいですかね?」と延長決定。
 ところで、それとは別に7月13日から2024年度の夏期企画展がスタート。7月末で営業終了だと企画展途中で売店を閉めることになっちゃいます。それはハンパじゃない? それなら8月25日の企画展終了まで売店を開けたほうがよくない? となり、なし崩し的に8月末までの契約延長が決定したのでした。さよなら胎内星まつり2024……。

2. レジを新調しよう

 CASIOのレジスタも悪くはないのですが、各種キャッシュレス決済への対応や決済フローの簡単化をはかりたいところ。
 そんなわけで春展でのあがりを原資にしてレジの近代化改修を行うことにしました。もはや商売するために商売してる。

2.1. PayPayが使いたい

 レジ入れ替えの一番の目的はPayPay対応です。春展ではPayPayが使えるかまあまあ聞かれたので、これは対応しておいたほうがいいなと。

 なお、この時点で楽天ペイターミナルでのQRコード決済は 楽天ペイ と auペイ の2つ(実質ひとつ)にしか対応していませんでした。現在の楽天ペイターミナルはPayPayなど各種QRコード決済に対応しています。

2.2. バーコードが使いたい

 次点でバーコードによるレジピッピと在庫管理。
 CASIOレジにはバーコードスキャナはついていないので、春展では商品の在庫管理のために短縮番号やカテゴリ番号を駆使していました。ただこの方法、商品点数が多かったり企画展ごとに商品ラインアップが変わったりすると破綻します。バーコードの導入でもっと属人性を下げたい。

 CASIOのレジアプリを使えばスマホでそのへんを変更することができるのですが、まともにアプリがメンテされていないのか動作が不安定で、設定が反映されたりされなかったりするのもいとわろし。
 レシートに表示する商品名やカテゴリなどはレジスタ本体でも設定できます。ただその操作方法は複雑を極め、取説なしではほとんど不可能です。かつてMDコンポでちくちくと曲名を入力していたあの時代を想起させます。

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2024春展で活躍してくれたCASIOレジ。新しいレジにしたあともしばらくバックアップ用として横に置いてました。

3. 選ばれたのはAirペイでした

そんな条件で検討した結果、候補に挙がったのは「Squre」と「Airペイ(Airレジ)」の2つでした。
ほかにもいくつかレジアプリはありますが、なんと言ってもこのふたつは月額固定費がかからないのが最高! ありがとう!

3.1. Airレジ vs. Square

 とりま検討のため、GEOのレンタルサービスでiPadを借りて、SqureとAirレジをインストールしてみました。

 ざっくりさわってみた感じ、日本の商習慣に合っているのはAirレジ、UIがスタイリッシュなのはSquareという印象。

 Squareは頼んでもないのにどんどんカードの審査が通過したというお知らせが来ます。A.S.A.P.でキャッシュレス対応したい人はSquareのほうがいいかも。
 Airペイはクレカなどのキャッシュレス決済の審査にぼちぼち時間がかかります。うちの場合、すべての決済(各種クレカ、電子マネー、QRコード決済)が使えるようになるまでに契約から1ヶ月程度かかりました。

3.2. リクルートの圧倒的営業力よ

 インストールしたその日のうちにAirペイから営業電話が来たのにはわろた(Airレジアプリを使うにはAirペイのアカウントを作成する必要がある。そこで電話番号などの基本情報も入力させられる。Squareも同様)。
 内容はiPadと決済端末を無料貸出するキャンペーンの案内でした。最初はSquare寄りだったのですが、タダでiPadくれる(くれるとは言っていない)ならAirレジでええかぁ、ということでそのままなし崩し的に貸出の契約をしました。

3.2.1. 無料という罠?

 余談ですが、貸与されたiPadの修理が必要になった場合はこちらの負担で修理をする必要があるとのことでした。普通、レンタル品が故障した場合って貸し主側で修理対応するもんじゃないの? どこでどんな使い方されたかもわからない中古品を渡されて「動かない? 自分で修理しろよw 直らなかったらお前が全額補償なwww」ってパターンもありえるのこれ? リクルート怖い!

3.2.2. 謎の初期設定プレイ

 iPad貸与の話が済んだあと、今度はアプリ設定のための電話をすることになりました。電話でないとできない、なにか特殊な設定があるのかと思ったのですが、実際にそこでやったことはアプリの画面に表示されてる指示にしたがって初期設定をすすめるだけ。じゃあ、電話の相手はなにしてたのかというと画面に表示されている指示を読み上げるだけでした(たぶん向こうの手元にアプリのスクショかなんかがある)。え? この電話必要だった?
 こういうかゆい・かゆくないにかかわらずとりあえず手を伸ばして掻いてくスタイルは非常に日本的だなぁと思いました。

 謎シチュの電話プレイの最後に、この電話でレジスタとプリンタの購入を決めると3,000円引きになると言われましたが、実物見てから決めたかったのでそこでさよならしました。新潟だとビックカメラ新潟店にAirレジのブースがあって実物が見られます。種類は少ないです。

3.3. Airレジを使うにあたり用意したもの

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 サーマルプリンタの上に置いてある火焰土器のミニチュアはセットに含まれていません。

 Airレジ導入にあたり、以下のものを新規で用意しました。

  • iPad(第9世代)(Airペイから貸与)
  • Airペイカードリーダ(Airペイからの貸与)
  • キャッシュドロア (MJD36M / スター精密)
  • サーマルプリンタ (RP-F10 / セイコーインスツルメンツ)
  • バーコードスキャナ (S740 / socket mobile)
  • カスタマディスプレイ(iPhone SE2)
  • ラベルプリンタ(Phomemo M110)

3.3.1. iPadとカードリーダ

 iPadと決済端末のAirペイカードリーダはAirペイからの無料貸与なので、調達にお金はかかっていません。

 Airペイは Edy、nanaco、WAONに対応していないので、そこだけ楽天ペイターミナルを併用しています。というか、楽天ペイターミナルだけあればすべてのキャッシュレス決済に対応できるんですよね。楽天ペイターミナルと連携できる楽天レジアプリとか出てきたら乗り換え待ったなしだと思う。

3.3.2. キャッシュドロアとサーマルプリンタ

 キャッシュドロアとサーマルプリンタ(レシートをプリントするやつ)はメルカリで調達しました。併せて3万くらい。このへんは業者っぽい人がよく出品してます。ドロア、サーマルプリンタはAirレジとSquareで使える機種がビミョーに異なるので購入前によく確認しましょう。スター精機はどっちでも使える。
 プリンタは最初ペーパーカットがおかしかったけど、開けてみたらなんか変なとこにスプリングがはまり込んでて、それを(たぶん)本来あるべき場所に戻したら直りました。今も普通に使えています。

3.3.3. バーコードスキャナ

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 右の青いガジェットがバーコードスキャナ。左の赤いのは楽天ペイターミナル。

 バーコードスキャナ S740 もメルカリで1万円ほど手に入れました。新品だと5万超するので、中古といえど1万円は破格。でも破格なりにあんまり調子はよくなかったです。電池カバーは割れるし、充電の判定はガバくて突然充電切れになるし。
 ずっとだましだまし使っていたのですが、この夏、ついにスキャンできなくなってお亡くなりになりました。月あたり1,000円でいままでよくがんばってくれた。R.I.P.

 現在はS700を使用しています(メルカリで2万くらいだった)。S740との違いはQRコードが読めるかどうか。S700はQRコードに対応していません。
 なお、「QRコード決済」といっていますが、実際に決済する場合はQRコードと一緒に表示される従来のバーコードでも決済ができます。そのため、QRコードに対応していないS700でもQRコード決済(実質バーコード決済)する上では問題ありません。

3.3.4. カスタマディスプレイ

カスタマディスプレイは親戚から使ってない古いiPhoneを借りました。Wi-Fi経由で金額を表示するだけなので、iOSのサポートが切れていても使用にあたっては特に問題はありません。

3.3.5. ラベルプリンタ

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 ラベルプリンタ Phomemo M110 は6,000円くらい。商品に貼るバーコードのプリントに使っています。
 使い方としてはAirレジアプリでバーコード番号を生成し、それをPhomemo専用アプリにコピペしてラベルを発行します。アプリのUIがクセつよですが、慣れればまあ、という感じです。

 ブラザーのやつだとAirレジアプリから直接バーコードの印刷をすることができます。が、黒のほかに赤も出力できるという微妙に贅沢な仕様で、かつ、お値段が高い。M110の倍以上します。

3.4. なぜ無線接続にしたがるのか

 以下、愚痴です。

  • なんでもバッテリー駆動&無線(Bluetooth)接続になってるせいで、バッテリーの劣化と無線の接続に気を使わなければいけない点はいまいち。業務用品はAC電源&有線接続にしてくれ。
  • バーコードスキャナのバッテリーが突然切れて、使えなくなる。そういう製品なのか、メルカリ品だからなのかは不明(今使ってるS700はいまのところ大丈夫そう)。再度電源を入れて使えるようになるまでに30秒から1分程度かかる。その間、客との間にビミョーな空気が流れる。
  • Airペイカードリーダはバッテリー駆動だとすぐにスリープに入るし、Bluetooth接続が確立するのに時間がかかる。バッテリー持ちも悪い。なんでこんなに悪いのかわからないくらい悪い。電源につなぎっぱなしにしておけばスリープしないが、Bluetooth接続の確立にはバッテリー駆動時と変わらない時間がかかる。結局、決済のためにカードを構えた客との間にビミョーな空気が流れる。
  • Airペイカードリーダはまれによく落ちる。再起動に1分程度かかる。その間、客との間にビミョーな空気が流れる。
  • たまにサーマルプリンタとAirレジのBT接続が切れて反応しなくなる。再接続する間、客との間にビミョーな空気が流れる。
  • Airペイアプリでカード控えをプリントアウトし、そのあとAirレジアプリに戻ってレシートのプリントがはじまる。アプリの切替で数秒のラグが生まれ、客との間にビミョーな空気が流れる。
  • AirレジとAirペイアプリを行ったり来たりするたびにバーコードスキャナの接続が切れたり入ったりしてピッピピッピうるせぇ。
  • バーコードスキャナにはピッピ音の音量調節機能もない(無音にすることはできる)。3,000円の中華製BTバーコードスキャナは音量調節もできる上にバッテリー駆動もUSB接続もできるのに、5万もするお前はなぜそれができない?

 Airレジ開発部は一週間ぐらい現場でてめーのとこの製品を使って、客との間に流れるビミョーな空気を体感したほうがいい。全部有線接続にしたくなるはず。基本使用料無料については感謝している。

4. 釣銭のアップデート

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 50円玉以下の硬貨はそんなに用意しておかなくても問題がなさそうだったので、釣銭の金種と金額をアップデートしました。ダイソーで買ったコインケースを使用しています。
 初期設定は45,020円。内訳は以下の通りです。

  • 五千円札 x4枚
  • 千円札 x10枚
  • 五百円玉 x10枚
  • 百円玉 x85枚(35枚 + 50枚)
  • 五十円玉 x20枚
  • 十円玉 x40枚
  • 五円玉 x20枚
  • 一円玉 x20枚

 百円玉についてはガチャの両替用に多めに設定してあります。コインケースの35枚に加えて、棒金1本(50枚)という構成です。GWやお盆など、多くの来館者が予想される時期は棒金を2本(100枚)にしています。

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 一万円札での支払いが多発したとき(おそらく給料日直後など)はあっというまに千円札と五千円札が枯れることがあります。これは売上額に関係なく発生するので、常にバックアップ用に釣銭セットを用意しておくと多少安心です(それでも千円札が枯れたことがあった。個人の財布から千円札をかき集めてなんとかした)。
 千円未満の決済に万券出してくるやつまぢギルティ。両替手数料とりたい。

5. ガチャを設置した

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 ガチャの設置は売店の営業をすることになった2024年春季企画展のときにも検討しました。ただ、このときは春季企画展が終わったら営業も終了するつもりでいたので、ガチャを設置するには営業期間が短すぎるということで見送りになりました。

 でも実際に営業してみて、ガチャのニーズを感じたのと営業終わったあともガチャだけ置いておけばいいかということで、2024年夏期企画展からガチャを設置しました。ガチャの筐体と商品については前の売店のときに取引があった業者さんを紹介してもらうことができたので、すんなりと導入することができました。

5.1. ファミリー層がお金を落とすようになった

 ガチャの設置により、これまでなにもお金を落とさなかったファミリーがガチャでお金を使うようになりました。入館受付してる間に子供がガチャに吸い寄せられてきます。小学生くらいの子はもちろん、最近歩き始めたばかりのようなキッズまで「ガチャ、ガチャ」いいながら吸い寄せられていてヤバい。こうかは ばつぐんだ!

 保護者の心理としては、売店で金額バラバラの商品をあれもこれもと持ってこられるより、数百円のガチャをひとつだけ許すほうが心理的・金銭的コストが低いという判断になるようです。

5.2. 初めてのガチャ

 たまにお年を召した方からガチャについて「(この機械は)どうやって使うの?」という質問をいただくことがあります。最初は「どういうことなの? 初めて?」と思っていたのですが、そうなんです。初めてなんです。

 博物館にいらっしゃる方はいろんなものに興味を持つ好奇心が強い方も多く、子どもたちが吸い寄せられるガチャにも興味を持つようです。自分で言うのもなんですが、うちのガチャのラインアップが渋いのも、初めてのガチャを回させる後押しをしている気がします。

 おそらくこれまでの数十年の人生の中で、今日初めてガチャを回して、カプセルを手にした瞬間は尊いしかない。いくつになっても新しいものに興味をもって触れていく、我々もそういう年の取り方をしたいものですね。

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 新潟県の有名な石が出てくるうちのオリジナルガチャ。老若男女問わず人気です。

5.3. なんだかんだで手間はかかる

 ガチャを設置する前は「月に一回くらい商品の補充をすればいいかなぁ」なんてふんわり思っていたのですが、実際に運用をはじめたらとんでもない! 週に1回くらい、長くても2週に1回くらいは様子を見に行って商品の補充作業をしています。GWやお盆などの人が多い時期は在庫がゴリゴリ減ってくので、ものによっては毎日確認したいくらい。

 8台程度でこのありさまなので、数十台設置してるショッピングモールのガチャの森とか、あれを管理するの結構大変だと思う。カプセルトイの掛率はだいたい7、8割くらいなので、手間のわりに上がりが少ない……ってなるかも。手間や利益率を考えると売店のサブウェポンという感じ。
 自分のところでカプセルトイの販売・卸もしているとか、原価低いオリジナル商品を混ぜ込めるとか、そういった掛率を下げられるなんらかの仕組みがあればメインも張れるかもしれません。

6. 無人販売対応

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 現金のほか、楽天ペイも使えます。

 2024年夏期企画展後は、ガチャに加えて一部商品を無人販売の形で販売しています。週に1回程度、歴博に赴いて在庫の追加や代金の回収を行っています。GWやお盆などの人が多そうなときは有人対応することもあります。

 SNSなど見ていると世の中の無人販売所は、お金を払わずに持っていったり、少ない金額しか入れなかったりする人の存在によって破綻しつつあるようです。でも、ここ歴博の無人販売は大変治安がよく、商品の在庫数と販売代金はほぼほぼ一致します。目の前に受付の人がいて完全に無人ではないというのも大きいかもしれません。皆様、ご協力ありがとうございます。

7. インターネット回線の変更

 無人販売化に伴い、売店で使用するインターネット回線を楽天モバイルに変更しました。ドコモのHOME 5Gの端末に楽天モバイルのSIMを差して使用しています。これにより通信量が4,800円から980円〜2,980円に下がりました。

 電波のステータスは常にイエローですが、それでも下り40Mbps弱、上り4Mbpsくらい。Airレジを使うのに必要な通信くらいはなんとかさばけます。なお、たまにつながらなくなることもあります。キャッシュレスで会計してからレシートが出てくるまでのラグが大きいのは回線が遅いせいもあるんじゃないかとちょっと疑ったりもしてる。

 楽天モバイルの回線は相変わらず屋内最弱ではありますが、たまに防犯カメラの映像を確認する程度(どちらかというと防犯目的というよりガチャ玉の回収カゴの溜まり具合の確認に利用することが多い)であんまり通信量がいかないときは980円、売店の有人営業により目一杯通信を使ったときでも2,980円という価格設定は、うちのような変則的な営業をしている身にはありがたいです。

 またHOME 5Gと違い楽天モバイルは場所に縛られないので、移動販売などでも使えます(HOME 5Gは登録した設置場所でしか使用してはいけない)。うちは今のところそういった計画はありませんが。車に積み込んでAmazonミュージックを垂れ流すとかにも使えるかも。

8. 歴博民俗学

 新潟県立歴史博物館は開館から今年で25年。縄文の時代から見たらわずか25年ではありますが、されど25年。多くの人が入れ替わり立ち替わり出入りすることで、歴博には文書にはなってない(なってるのかもしれないけどどこにあるのかわからない)多くの伝承が生まれ埋もれているようです。
 集団に混じり、そんな歴博の伝承の断片を集め、ルーツを探る。それは民俗学におけるフィールドワークといっても過言ではないでしょう。ここではその一端を記録します。

8.1. 火焰土器クリアファイルの成り立ち

 いつごろ何部作られたのかもわからなかったクリアファイル。どこからともなく出てきた在庫をうちが引き継いで売っていたのですが、いよいよ売り切れが見えてきました。
 ただ、入稿データの在処どころかだれが作ったのかもわからないので、追加生産しようにもやりようがありません。別にすっごい売れ筋ってわけでもないしこのまま終売かなぁ、なんて思っていました。

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 火焰土器クリアファイルは火焰土器ポストカードとともに根強い人気があります。火焰土器クリアファイルの裏面は実寸大火焰土器スケールになっています。

 そんなある日、たまたま来館していた元古参学芸員・現某大学教授Yさんに「そういえばこのクリアファイルって……」と聞いてみたところ、そこから前の売店で売り子をしていたAさん、古参学芸員Mさんのエンシェント3が芋づる式に集い、そこですべてが明らかに。パズル同様、開館当時に作られたものだと思っていたら、2代目売店時代に作成されたものでした。ついでにこれを作った印刷会社も判明し、追加生産のめどが立ってしまったのでした。

 そんなわけで今日も売店(無人販売)で販売しています。よろしければおひとつどうぞ。

8.2. 企画展用の受付カウンタ?

 売店での店番も2シーズン目ともなると周りに目を向ける余裕が出てきます。

 歴博の企画展示室前のフロアは北側にトイレがあり、そのトイレの出入口を隠すように壁があります(この壁の存在によってトイレの場所が初見殺しになっているのはまた別の話)。
 その壁に照明がくっついているのですが、それがなんとなく無意味というか、場違いな印象があって「なんでこうなってるんだろう」とうっすら疑問に思っていました。
 ただまあ、歴博は開館が2000年なので、ところどころ設計に平成のノリを感じることがあり、この照明もそういうノリのあれかな、と納得していました。昭和なビルの壁に陶板アートが埋め込まれてるような、そういうその時代のノリ。

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企画展示室前のフロア。灰色の柱(照明)がついている壁の裏にトイレがあります。ちょっとわかりにくい。

 その日もなんとなく売店からフロアを眺めていました。ふと、照明と点字ブロックの配置はリンクしているのでは? という考えが降ってきました。そういえば、壁の近くにはなぜか電気と電話線のコンセントもあるのです。ずっとフロアでのイベント時の電源として設置してあるのだろうと思っていたのですが、その場合、電話線はいらないはず。

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壁際にコンセントがあり、電源と電話線が引っ張れるようになっています。

 つまり、この壁際のスペースにもぎり(企画展受付)のカウンターを設置する設計になってる? 最初はそう使われていたけど、時とともにその用途が失われていった?

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 この壁の部分は企画展受付カウンターを設置する前提で設計されてる?

 そう思って開館当時からいる古参学芸員Tさんに話を聞いてみたのですが、第一回企画展のときからもぎりの場所(企画展示室の出入口の間にある)は変わっていないとのこと。ただ、開館当初、受付とは別にインフォメーションカウンターを置く計画があったらしい。もしかしたらこの場所はその計画の名残かも。
 館の設計図とか確認したらなんか書いてあるのかもしれませんが、そういうのってどこかで確認できるんですかね?

 ついでに設計図つながりのぜんぜん関係ない話ですが、歴博のシンボルとロゴのガイドラインはオリジナルグッズを作る際に見せてもらいました。デザインしたのは長岡造形大学で教鞭をとっていた故・神田昭夫先生。ちょっと前に神田先生著のロゴ大全が復刻されてSNSで小さく話題になっていました。(買おうと思いながらいつも忘れてしまう。)

資料集 日本のトレードマークとロゴタイプ 〈新装復刻版〉

  • メーカー:グラフィック社
  • カテゴリ:大型本

8.3. はじめてのおつかい

 売店で店番をしていると「自分で買い物するの初めてなのかな?」という雰囲気の子が買い物していくことがあります。親にお金を渡されて「これで買ってきな?」と言われてる感じ。

 考えてみれば最近はセルフレジが多くて、店員相手に買い物をする機会って減ってきてるかもしれません。また、子供だけで買い物に行くような近所の文具屋や駄菓子屋もなくなってきています。自分がほしいものを自分でレジに持っていって買い物をする、というシチュ自体がレアになってきているのかも。

 最近はキャッシュレス決済が普及したことで「お釣り」というものがわからない子がいるなんて話も耳にします。そういう世の中かぁ、なんて思っていたのですが、今年に入ってから弊売店でもガチャをするために親からと500円玉を渡されて「???」となっている子が散見されるようになりました。そう、ガチャをするには500円玉を100円玉に両替する必要があるのですが、現金になじみがなくて「両替」の概念がまだないのです。
 子は「両替」というものがわからず、親と我々店員は子が両替をわかっていないということがわからず、みんなの頭の上に一瞬「?」が浮かんだのでした。

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 人生の中のはじめての場面に立ち会えることは大変尊いものです。はじめてのお買い物、はじめての両替にもお気軽に売店をご利用ください。

8.4. IPM

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 事務室のドアには魔除けのお札が貼ってあります。

 歴博では、というか多くの博物館・美術館ではIPM(Integrated Pest Management:総合的有害生物管理)というものが施行されています。その内容はいろいろあるのですが(正直自分も全部はちゃんとわかってない)、売店運営レベルで関係があるのは飲食物の持ち込み制限と虫など捕獲です。このへんは前回の記事の「7.2. 虫を見つけたら捕まえろ」でも触れました。

 館内で虫を発見した場合、職員はすみやかにそれを捕獲しIPMの担当者に提出します。遭遇率はそれほど高くはありませんが、出るときは、まあ、出ます。なんか飛んでたりとか、引き出しの中で死んでたりとか。ちなみに虫は生け捕りだと喜ばれます。ゲジを生きたまま捕虫袋の中に入れるとか、家だったら絶対しませんが(できませんが)、仕事となると冷静に捕獲できてしまう不思議。これは博物館職員あるあるっぽいです。
 この間、ヒトスジシマカらしきカを取り逃してしまったので(追いかけてるうちに高く飛んでどこかに消えてしまった)、航空戦に備えて捕虫網を買って売店に置いておくべきかとわりと真剣に悩んでます。

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 自分で捕まえた場所と虫の種類を書けと、先日ついに記入票の束を渡されました。

 IPMは一般の入館者も無関係ではありません。博物館では展示室内への飲食物の持ち込みは御法度なので注意しましょう。植物や動物などの生モノも虫やカビの汚染源となるのでNGです。そんなこと言ったらヒトもそうなんですが、まあ、博物館だし多少はね。
 よくあるNG行為はペットボトルの持ち込みです。とくに夏場になるとペットボトルをぶら下げて入館してくる人が多くなるのですが、そのままでは展示室に入れません。展示室に入る前にカバンに入れて片付けるか、受付などに預けましょう。

 展示物と館内の環境を保全するため、IPMにご協力ください。

8.5. 生態系

 歴博内ではざっくりわけて以下の9つグループが日々しのぎを削っています。自分が把握してないだけでほかにもグループが存在している可能性はあります。

8.5.1. 学芸課

 いわゆる学芸員のグループ。展示の管理とか展示解説とかしてるのはこの人達。意外にも体力仕事で、企画展前とかヤバそう。ゾンビみたいな歩き方になってる。

8.5.2. 経営企画課

 お金の管理のほか、団体客の管理とか企画展の広報などをしてるのは主にこの人達。
 経営企画課の中でもおもにお金や書類を司る事務方と団体客や体験講座をさばく現場方の2グループに分かれているようです。現場方は小中学校の教頭・校長のアサイン待ちの人がいたりします。小学生の団体相手に話をしてるのを「若いのに話うめぇな」と思って見てたら、小学校校長のアサイン待ちの人(しかもまあまあ年上)だったりするぞ気をつけろ。

8.5.3. 受付

 入館券を販売したり、常設展のもぎりをしてる人たち。
 受付に座って入館券の販売だけしてるのかと思いきや、図録等の販売、館内設備や展示の簡易的な点検、来館者の学芸課への引継ぎやトラブル対応の要請などのバックエンドへのトラフィックなども一手に引き受けてるのでなんだかんだ大変そう。あと歴博の互助会のおっさんによく絡まれてる。才色兼備のスペック高い人が多いです。

8.5.4. 企画展受付

 企画展のときだけ招集されるマダム達。企画展のもぎりと企画展室の見回りなどをしています。
 持ち場を離れることができない上にスマホの持ち込みもできないので、入館者が少ないときはヒマ過ぎて死にそうになってる。展示室へのペットボトルの持ち込みを取り締まるのもだいたい企画展受付の人です。みんな、あんまりマダム達の手を煩わせないようにしような。

8.5.5. 警備

 博物館裏の職員出入口にある詰め所に常駐しています。また、日に何回か館内・館外を歩き回っています。今年の夏は毎日暑かったので大変だったと思う。
 入館するときと閉館時に顔を合わせるくらいですが、バックエンドで発生したイレギュラーなイベントをぼそっと教えてくれたりします。トラブル発生時にも対応してくれるのかもしれませんが、少なくとも我々が出入りするようになってからは警備の人が出張らなければいけないほどのパワー系事案は発生していません。平和が一番。

8.5.6. 清掃

 定期的なトイレ清掃や館内のゴミ、床掃除などをしている人たち。いつも売店カウンター内の拭き掃除をしていただきありがとうございます。
 意外にも子どもより高齢者の団体のあとのほうがトイレ掃除が大変とおっしゃってたのでみんな気をつけような。子どもは手洗い場がびしゃびしゃになってることが多いけど、高齢者は(なにとは言わないが)はずれてることが多いらしいです。弾薬を込め、照準を合わせ、常に修正を。

8.5.7. 設備(?)

 あまり接点ががなく謎が多い人たち。館内では基本的にスタッフ同士顔を合わせたときに「おつかれさまでーす」と挨拶(声がけ?)をするのですが、設備(?)の人はあんまりしません。寡黙な七人のこびと(Seven Dwarfs)といった感じ。服装的に2グループあるような?
 展示室のガス測定やエスカレータやエレベータなどの管理をしている姿を見ます。たぶん空調の管理とかもこの人たちがやってる。駐車場で職員の車がパンクしてたときも集まって教えてくれました。ムーブがドワーフ。

8.5.8. 食堂

 貴重な食事処。2人くらいで回してるみたいで、予想外に混雑したときは大変そう(年に何回か入館者数が予想外の跳ね方をすることがある)。基本、土・日・祝日の営業となっていますが、やってないことも多いです。まあ、祝日とか三連休とかだったら歴博よりイベントに出店したほうが稼げるってのはわかる。ジェラートが売り。

8.5.9. 売店

 我々。たまに有人営業してる。

 以上。それぞれのグループは思いのほか縦割りで、つながりはやや希薄です。

 受付、企画展受付、売店の3者は同じフロアにいるので比較的連携があります。連携せざるを得ないことがあるというか。主に来館者対応の部分で。戦友だと思ってる。

 また、うちが売店で入ることになった最初の時に売店連絡用のLINEグループを作りました。グループには学芸課と経営企画課から何人か参加してくれています。やりとりの内容はガチャ詰まりが発生したとか、今日補充に行きますとか、出張先のごはんとか、「また縄文土器レプリカの梱包をTさんがやってる……」とか、そういう感じです。売店関連の話だけでなく、学芸課と経営企画課の間でもわざわざ書類にするほどでもないレベルの情報が共有されるようになったのはよかったかなと思います。受付のみんなも参加してくれていいんだよ?

2023年度 秋季テーマ展示 守れ!文化財

 まだ売店で入る前、元学芸員Yさんが「ぼくらはひとつのチームだからね」とよく言っていました。そのときは「そうだが?」と思っていましたが、今はなんとなくその言葉の意味がわかるような気がします。
 いままではYさんが歴博内の縦割りをぶちやぶって(良くも悪くも)かき混ぜてた感があります。そのマドラーがなくなった今(でも、月イチくらいで現れるので完全になくなったわけでもない)、売店組が適度なマドラーになれていたらいいな、とは思っています。

9. 終わりに

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 2025年春季企画展では諸事情により有人営業していました。

 書きたいこと、書くべきことはまだいっぱいあった気がするのですが、それをまとめていると記事のアップがまた来年とかになっちゃいそうなので、今回はこのへんで。

 現在はガチャと無人販売という形で営業していますが、人が多そうなときとか諸事情で人が必要なときなどは有人販売をしています。土日だけ営業でもできるといいんですけど、別件で土日は取られているのでちょっと難しい。いっそ平日のほうが時間が取れるんですけど。あと、とりあえず来年の春季企画展は有人販売が決定しているので、皆様ひとつよろしくお願いします。

9.1. オンライン販売はじめました

 一部売店商品のオンライン販売をはじめました。ちょっとずつ商品点数を増やしていく予定です。でも歴博に来れば送料無料で買えます! 歴博に来ればガチャもあるよ!

9.2. じょうもんじゃもんを応援してね!

新潟県立歴史博物館 ミュージアムショップ

 歴博のキャラクター「じょうもんじゃもん」がミュージアムキャラクターアワードにノミネートされています。みんなで投票して1位にして殿堂入りさせてください!

  • じょうもんじゃもん(かえんどきクンとおうかんクン)(新潟県立歴史博物館) | ミュージアムキャラクターアワード2025 | アイエム[インターネットミュージアム]
    https://www.museum.or.jp/museum-chara/2025/122001

参考

資料集 日本のトレードマークとロゴタイプ 〈新装復刻版〉

  • メーカー:グラフィック社
  • カテゴリ:大型本