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話半分で受け取ってください。

長岡造形大学受験対策マニュアル

長岡造形大学総合型選抜2024

 すべての長岡造形大学受験者にこのマニュアルを送る。

※注意
 この受験マニュアルに記載した内容はあくまで私的な研究によるものであり、長岡造形大学公式のものではありません。
 そのため、長岡造形大学に対して「この『受験マニュアル』にこう書いてあるんですけど本当ですか?」などと問い合わせるようなバカなマネはおやめください。(でもそういう空気が読めない行動力の化身みたいな人は長岡造形大学の才能があるので総合型選抜を受験するといいと思います。)
 また、長岡造形大学の受験に関して我々が知りうる(予想しうる)情報はこのマニュアルに書いてあることがすべてです。メールやSNSのDM等、個別のお問い合わせをいただいても返信はいたしかねます。ご了承ください。

目次

1. 序文

 弊社が運営している「おかもとデッサン教室」ではこれまで長岡造形大学の受験対策(とくに総合型・学校推薦型選抜)を専門に行ってきました。我々は塾生を合格に導くために長岡造形大学の試験に関するできる限りの情報を集め、可能な限り合格の要素を洗い出してきたつもりです。

 しかしこの度、弊塾では

半年程度指導をしたところで受験の結果はなにも変わらない。無駄である。

という結論に至り、長岡造形大学の受験対策指導から手を引くことにいたしました。

 弊塾では指導内容が合格に寄与しているかどうかを判断するのに「確率の壁」を越えられたか(弊塾からの受験者の合格割合が大学の倍率を超えられたか)をひとつの指標としています。
 しかし実際のところ、今日まで弊塾からの受験生が「確率の壁」を大きく越えることはありませんでした。

 確率の壁を越えられない、ということは、弊塾での指導が合否に影響していない、ということを意味すると考えられます。それだけなら弊塾の教え方が的外れなだけという話になるのですが。

 実際の受験結果を見ると、指導した内容をなにも理解できないノリだけのバカが総合型・推薦型で合格し、逆に、ちゃんと話が理解でき、掘り下げた深い話もできるがノリがいいとは言えない者が不合格になるという状況を毎年のように見てきました。

 なぜこのような結果になるのか。それは

面接はノリで採ってる

からです。
 いや、実際どのような採用プロセスが大学内に存在するのかは外部の人間である私にはわかりません。ただ、状況証拠を積み重ねた結果としてその可能性が非常に高いということです。

 弊塾では合格するためのテクニックだけではなく、合格したあと、さらには社会に出てデザイナーとしてやっていく上で役に立つであろうことも指導してきました。それこそ長岡造形大学でやってる「デザイン概論」で扱うような内容も指導してきたつもりです。

 しかし、「ノリで採ってる」という可能性が否定できなくなってしまった今、もう弊塾が真面目に指導する意味なんて吹き飛んでしまいました。だってノリで合否が決まるんだもん。知識や心構えなんて関係なく、ノリで決まるんだもん。まぢウケる。(ウケない。)

 よって、今年度をもちまして弊塾は長岡造形大学の受験指導を辞めることにしました。

 これまで通りの指導を続けてお金をとり続けることはできます。が、弊塾にくる人は長岡造形大学に合格することを成果として求めて来ます。合格の可能性がないとわかってる人からお金を取るのも悪くはないですが、少々心が痛みます。逆に、合格する人はなにもしなくても勝手に合格していくので、やはり我々が指導することはなにもありません。
 あとついでに言うと毎年何人か現れるめんどくさい人(含保護者)を相手するのにも疲れた、というのもあります。

 ただ、指導を辞めるにあたり、これまでに得た情報や分析をそのまま秘匿しておくのももったいないので、ここに「長岡造形大学受験マニュアル」をオープンソースすることにしました。

 世の中から、長岡造形大学に恋をして不幸になる人が少しでも減ることを願って。

2. 長岡造形大学の受験難易度

 まずは受験にあたり基礎知識から。

 受験倍率は学科や受験方法、その年ごとでも変動がありますが、いずれも5倍前後になります。一般選抜で必要となる共テ得点率は7割前後です。

 地方出身者にはなぜか長岡造形大学を舐めてかかる人がいるのですが、地方にあるとはいえ公立大学には違いないので、そんなに簡単ではないです。
 どうも地方出身者は偏差値的に上から下まで存在する「公立高校」と同じようなイメージで「公立大学」を考えていて、地方の公立大学だから簡単に入れる(偏差値が低い)だろう、と思っているきらいがあります。んなことねーから。基本的に「公立大学」は地域トップレベルの高校から何人か合格者が出るレベルのとこしかねーから。

 また、新潟県内の人だと「名前を書けば入れる」と言われていた私立時代(長岡造形大学は2014年に公立成りした大学です)の印象を引きずっている保護者が少なからずいらっしゃいます。が、現在は公立化に伴い受験倍率が跳ね上がり、もうそんなノリで入れる大学ではなくなっています。わかりやすく言うと新潟大学が射程に入ってくるレベルです。

 デザイン系の公立大学は全国的にもまだ珍しい存在なので、県内外の優秀な学生が安い学費を目的に集まります。実際、在学生は8割が県外出身者です。

 というのが長岡造形大学の現状です。なめてかかると死にます。

3. 長岡造形大学の受験方法

 難易度を理解してもらった上で、実際の受験方法の話です。
 長岡造形大学の受験は以下の4種類があります。

  • 総合型選抜
  • 学校推薦型選抜
  • 一般選抜(前期)
  • 一般選抜(中期)

 合格を勝ち取るためにどの試験を受験するのか、というのは重要な問題です。
 ここではまずそれぞれの選抜方法の概要を把握しましょう。

3.1. 総合型選抜

 かつてAO(アドミッション・オフィス)入試と呼ばれていたもの。2021年に突然それまでの「AO入学試験」から「総合型選抜」という名前に変更になりました。名前が変わっただけで内容はたいして変わっていません。なんで名前が変わったのか理由はわかりませんし、その理由についてとくに興味もありません。

 受験にあたり高校での評定は不問。既卒者(浪人生)も受験可能です。
 学力不問なので共テが期待できない専門系(商・工・農業高校など)や偏差値U50の高校生はこの「総合型選抜」と(評定平均が足りれば)次の「学校推薦型選抜」に可能性を賭けることになります。

 出願書類として「志望理由書」(2枚)と「自己アピール用紙」(3枚以内)の用意が必要です。これについては別で書きます。

3.1.1. 試験内容

 試験は2段階選抜になっており、1次試験は課題製作、2次試験は面接を行います。1次を通過したものだけが2次の面接に挑むことができます。このため1次と2次は別日で行われます。また1次と2次の試験日は1ヶ月近く間が空きます。

 1次の合格者は募集人員のおおむね2倍になるように調整しているようです。
 たとえば募集人員が40名だった場合、(受験者が100人でも1,000人でも)1次の合格者は80名程度に絞られます。

3.1.1.1. 課題製作

 課題製作は学科によって作図したり、立体模型をつくったり、そんな感じです。詳しい内容については長岡造形大学の公式サイトで模擬問題が公開されているのでそちらを参照してください。

 なお、課題製作の模範解答は公開されていません。たまにオープンキャンパスや入試説明会などで各学科それぞれ2、3点ほどチラ見せしてくれることはあります。

3.1.1.2. 面接

 面接官は3人。長岡造形大学の入試広報課曰く、面接では志望理由に沿った先生があてられるようになっているようです。受験者の報告もだいたいそんな感じになっています。(これを弊塾では「面接官ガチャ」と呼んでいます。)

 面接の順番は長岡市から遠い人順になっています。新潟県、およびその周辺の県からの受験者は午後から。それ以外の地域からの受験者は午前中に面接が行われます。

 面接では作品の持ち込みができます。持ち込める作品数や大きさは両手で持って入れるぶんだけ。逆に言うと両手で持って部屋に入ることができるのであれば作品の点数やサイズに制限はありません。控え室で荷解きをし、面接室には作品だけを持って入ります。バッグやケースに入れた状態では持ち込めません。

 面接時間は20分。
 2021年から面接の最初に3分間のプレゼンテーションが課されるようになりました。プレゼンの方法は自由です。スケブ芸をしてもいいですし、タブレットで動画を流してもいいですし、立ちトークしてもOKです。

3.2. 学校推薦型選抜

 学校推薦型選抜は受験するのに評定平均3.5以上と高校の校長の推薦が必要です。このため既卒者は受けることができません。誰でも受けられる総合型と違い、学校長の推薦が必要であるため、倍率は総合型よりも若干低めになる傾向があります。
 あくまで高校の校長の推薦が得られればいいので、実質的に偏差値は不問です。

 総合型を落ちた人でも高校の校長の推薦が受けられれば学校推薦型選抜を受験することが可能です。ただし、総合2次の合格発表から学校推薦型選抜の出願開始までの間には1週間ほどしかないので、資料の作り直しや気持ちの切替えが結構大変です。どうせ落ちるなら総合1次で落ちたほうがマシかも、と思っちゃうレベル。

 総合型同様、出願書類として「志望理由書」(2枚)と「自己アピール用紙」(3枚以内)が必要です。フォーマットは総合型のそれと同じなので、総合型で作った内容をそのまま流用することが可能です。内容は流用可能ですが書式は異なるので、出願時に総合型のそれと取り違えないように気をつけましょう。

 「推薦」というワードから、受験すればほぼほぼ合格する「指定校推薦」と勘違いしている人がままいますが、この「学校推薦型選抜」は指定校推薦とはまったくの別物です。学校推薦型選抜はなめてかかると(なめてかからなくても)普通に落ちます。だって倍率5倍だし。
 ちなみに長岡造形大学の受験方法に指定校推薦はありません。私立時代にはありました。

3.2.1. 試験内容

 試験は午前中に提案書作成、午後に面接。総合型とは違い一日で終わります。面接の順番は総合型と同様、長岡から遠い人順になっています。

3.2.1.1. 提案書

 課題に則したポンチ絵的ななにかを作成する課題です。時間は90分。かつては「小論文」という名前でしたが「小論じゃなくね?」という物言いがついて「提案書」という名前に変わった過去があります。

 提案書の詳しい内容については長岡造形大学の公式サイトで模擬問題が公開されているのでそちらを参照してください。なお、提案書の模範解答は(オープンキャンパスや説明会でも)一切公開されていません。

3.2.1.2. 面接

 面接官は2人。面接時間は15分。総合型みたいな3分の自己プレゼンはありません。

 面接官は総合型と同様、出願書類に書いた志望理由に沿った大学の先生があてられる……ハズなんですが、今年度はちょっと様子がおかしくて、今年度の推薦を受験した塾生達はみんな、あえて志望する専門をはずした先生をあてられているようでした。たまたまはずれた可能性も否定はできませんが、それにしてはちょっと数が多いな、という感じ。

 これまでも総合型の面接と同じ面接官があたらないように大学側が面接官を調整している雰囲気はありました。総合であたった先生が推薦でもあたると評価にバイアスがかかっちゃう可能性があるので、それを避けるために面接したことない先生をあててるんだと思います。
 しかし今回は被りを避けたというレベルではないくらいにきれいに志望をする専門を外されてたので「うち、なんかマークされてる?」とかちらっと思ったりもしたよね。弊塾みたいな弱小画塾のためにそんな面倒なことしないと思いますけど。するメリットもよくわからないし。単純になんか方針を変えたのかもしれません。

 そんなふうに専門を外してきてるあたり、やっぱノリで決めてんのかな、と思わされちゃうんですよねぇ。まあ、大学入ってから志望理由に書いたことと違う分野に進む人は少なくないので、受験時の志望理由なんてあてにならないと言われればそれはそう。「入ってみたらなんか違った」はわりとあります。
 あとあれ、先生との相性が合わなくてダメになっちゃう人もいるので、ノリが合う合わないを重視するのは一理ある、かもしれない。でもそれなら自分で採った学生の面倒は最後まで見てほしいですねー。先生なんていう仕事をしてるやつは(自分も含め)だいたいまともな社会性を持ち合わせてないので、それを期待するほうが間違ってる、というのも一理ある。

3.3. 一般選抜(前期)

 一般選抜は共テ(共通テスト(旧センター試験(旧共通一次)))を利用して受験する試験です。
 合格を勝ち取るには共テで7割以上を獲得する必要がありますが(一部例外あり)、逆に言うと得点さえ取れれば面接も作品作りもする必要がないので、受験コスパが一番高いルートという見方もできます。

 なお、専門系高校はカリキュラムが共テ受験を想定しておらず、そもそも先生も生徒も「共テの申込み? なにそれおいしいの?」状態であることが多いので、一般選抜の選択肢は実質的にありません。
 長岡造形大学の受験に限らず、少しでも共テ利用を視野に入れるつもりなら普通科高校に進学しましょう。

3.3.1. 試験内容

 前期は鉛筆描写(デッサン)や平面構成を行うA選択と提案書を書くB選択があります。内容は以下の通り。

  • A・B共通:調査書(10点満点) + 自己アピール用紙(10点満点)
  • A選択:国・数・英から2教科(200点満点) + 鉛筆描写 or 平面構成(300点満点)
  • B選択:4科目(400点満点) + 提案書(100点満点)

 A選択もB選択も合計点数は520点です。
 昨年2024年度の合格最低点(カッコ内は得点率)は以下の通り。おおむね7割弱となっています。

  • デザ:360.5/520 (0.69)
  • 美工:338.5/520 (0.65)
  • 建築:326/520 (0.63)

 このため、共テ4教科で7割以上の得点が取れるならB選択が安パイとなります。提案書の配点は100点しかないので大学独自試験での点数のブレが少ないです。
 なお、共テは受験した科目の中から自動的に高得点のものが採用されるようになっているので、こちらから受験に使用する科目を申請する必要はありません。

 一般前期の自己アピール用紙はA4サイズ1枚だけです。総合・推薦型の3枚構成(+志望理由書)をこなした上で一般にまで流れ着いてきてしまった受験者は「1枚にまとめるの、逆に難しくね?」ってなるかも。

 定員はA・B合わせての募集なので、どちらのほうが倍率が低いということはありません。A選択・B選択関係なく520点満点で点数を付け、上から順番に合格になります。
 ちなみに富山大学の芸文学部はデッサンと小論でそれぞれ定員が設定されています。小論のほうがちょっと倍率が低かったような……。違ったらごめんね。

3.4. 一般選抜(中期)

 中期は共テと面接の試験です(美工は実技あり)。ほかの試験と異なり、志望理由を記述する自己アピール用紙のような書類はありません。

3.4.1. 試験内容

 試験内容は以下の通り。

  • 全科共通:共テの国英2教科 + 面接
  • デザイン:+ 共テ上位1科目
  • 美工: + 個別試験(デッサン or 粘土)
  • 建築: + 共テの数学

 中期は見かけの倍率が10倍を越えますが、前期で合格した人が抜けるので、実質倍率は見かけの倍率の半分くらいに落ち着きます。
 一方で中期合格者の平均共テ得点率は75%を越えてきます。このため中期を受けるつもりなら(面接で高得点を出す自信があるとしても)最低共テ7割はほしいです。

3.4.1.1. 面接

 面接官は2人。時間は15分。中期は志望理由書や自己アピール用紙に相当する書類がないため、面接官ガチャは完全にランダムになります。
 ガチャについては総合・推薦型選抜であたった先生には当たらないように調整が入っているようです。

 ……と思っていたのですが、今年度の中期の面接で過去に当たった面接官を再度引いた人が出てきました。
 そもそもうちから(試験に面接がある)総合型、学校推薦型、一般中期の3つすべてを受験する人が少なかったためにいままでたまたま被りがなかっただけで、実は完全にランダムだったりする? それとも今年はなんか方針変えた? あるいは入試課が仕事してない?

 面接の内容は総合・推薦とはかなり趣が異なり、全体に雰囲気がゆるいです。総合・推薦でガチってきた人だと肩すかしを食らうことがあります。得点も15分間ちゃんと受け答えができれば7割はつく、という印象です。わりと9割も出ます。
 ただたまに圧迫みある面接をされることもあるようです。とりあえずうちのかわいい生徒を泣かせたやつをオレは絶対に許さない。生徒に手を出してるというまことしやかなウワサが外に漏れてそこそこの問題になればいい。

 なお、中期の面接で9割出した者が、浪人して翌年の総合型の面接で9割出せるかというとそれはまったく別の話になります。それをして(つまり中期で9割出たから総合の面接でも高得点出せるだろうというもくろみで)いい結果になった者はこれまでのところいません。

4. 受験フローチャート

 選抜方法を一通り把握したところで、どの試験を受けるのがいいのか、という話に戻ります。

 推奨ルートをフローチャートにするとこんな感じです。学部や個人の事情などで例外もありますが、だいたいこうです。

NID受験フローチャート

4.1. 陽キャは面接を征す

 フローチャートの初っぱなに出てくる「陽キャである」という条件式で「は?」と思った人は正常です。

 長岡造形大学の選抜試験では総合型の2次、学校推薦型、一般中期で面接があります。
 総合型2次は面接の得点で合否が決まりますし、中期は500点満点中200点が面接で決まります。
 学校推薦型は成績開示請求をしても出願書類、提案書、面接すべて合計した点数(350点満点)しか出てこず、詳しい内訳が不明です。が、なんだかんだで5割以上を面接が占めているのではないかと推測しています。
 このように一般前期以外の選抜試験では面接が合否を左右する最大のファクターになっています。

 ではこの面接を制すにはどうしたらいいのか。その答えが「陽キャである」です。

 このマニュアルの序文で「面接はノリで採ってる」と言ったことを覚えているでしょうか。ノリで採ってもらうには、明るく、楽しく、元気よく面接をこなせる陽キャである必要があります。持参作品? 作品の受賞歴? 関係ないです。ノリがすべてです。

 実際、受験にあたって個人での作品制作などは一切せず、高校でのリア充っぷりをアピールするだけで合格した人はいます。
 この手の人たちは単純に雰囲気があります。実際に持っている知識や技術は関係ありません。雰囲気です。話し方や態度に人としての育ちのよさ、(大人が考える)高校生らしい、はつらつとしたさわやかさがにじみ出ています。なんかアホなことを言っていても「もしかしたら自分の理解が追いついていないのかも」とすら思わせる雰囲気があります。

 「こんなにできる(描ける)のにどうして落ちるのかわからない」「傾向がわからない(から指導したくない)」というほかの画塾の愚痴も耳にしたことがあります。お気持ちよくわかります。あれはスキルではなくノリで取ってるのでそうなります。
 科によって多少の温度差はありますが、基本、陽キャであって悪いことはありません。ノリがすべてです。陽キャであれ。ショーンKになれ。

4.1.1. 確率の壁の原因

 弊塾が総合・推薦で「確率の壁」を大きく越えられない原因もここにあると考えています。
 この性質は先天的に持っている、あるいはこれまでの人生18年間をかけて醸成されたものであり、赤の他人が数ヶ月程度指導したところで容易に変えることはできません。
 デザイン概論の知識はあとからでもたたき込むことはできます。しかし「陽キャであれ」と言われてすぐに陽キャになれる人なんていないのです。「陽キャであれ」と言われてすぐに陽キャになれる人はもともと陽キャなだけです。

 あるいは長岡造形大学もそう考えているのかも知れません。「知識なんてあとからいくらでもいれられる。それよりもともと持っている性質が大事である」と。それは、方針としては正しいと思います。大学が採用したその人間が、本当に大学が期待した性質(性格)を持っている人間であるならば。

4.1.2. 陽キャの種類

 一口に「陽キャ」と言ってもその種類は様々あるでしょう。ここで言っている長岡造形大学の面接で好まれる「陽キャ」は以下の2種類です。

  • みんなから生徒会長に推薦されちゃう、マンガの登場人物みたいな「優等生」
  • 自分から生徒会長に立候補しちゃう、マンガの主人公みたいな「SFC系」

 前者は基本スペックが高く、周囲からリーダーに推されて人前に立つことも多いので「明るく! 楽しく! 元気よく!」面接をこなすスキルが身についています。スタバでバイトできるタイプ。
 後者は空気が読めず、対人における距離感もバグっていることにより、結果として「明るく! 楽しく! 元気よく!」面接をこなすことができます。タイミーでそこそこうまく立ち回れるタイプ。

4.1.3. SFC系とは

 「SFC系」というのは慶応SFC(慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス)に由来しています。慶応SFC出身者に対する「自己ブランディングはうまいが内容が伴っていない」という評が「わー。造形総合っぽーい」と思ったのでこう呼称しています。

4.1.4. 予想される採用の仕組み

 なぜこの2種類の人間が採用されるのか。
 おそらくですが、面接官は単純に「優等生」だけを採っているつもりなのだと思われます。
 ところが「SFC系」は

  • 緊張せずに面接をこなせる(空気が読めない)
  • 自分のことをしっかりアピールできる(会話の内容がすべて自分のことばかりになる、いわゆる「会話泥棒」)
  • 初対面でも相手の懐に入り込んで話ができる(対人距離感がバグっている)

という感じでうわっつらだけ見ると「優等生」に見えることがあります。なんなら20分という限られた時間の中での面接だと「優等生」よりも優等生らしく見えるまであります。

 このため、面接官は「優等生」だけを採ったつもりなのにフタを開けてみたら「優等生」と「SFC系」の2種類の人間が混じっていたという状況になっているのではないかと推測しています。これまで受験者を見てきた感覚だと総合・推薦型の合格者の半分ないし1/3程度は「SFC系」が紛れ込んでいます。もっとも、大学側がそれに気付いているかはわかりませんが。

4.1.5. SFC系によく見られる傾向

 程度の差はありますが、「SFC系」は大学に入ったあと、放っておくと以下のような不具合を生じる可能性が高いです。

  • 長期的な人間関係の構築が難しい(親しい友人がいない)
  • やるべきことよりやりたいこと(というか今思いついたこと)を優先しがち(提出物を出さないなど)
  • 教えたことが身になりにくい(学習曲線が階段状)
  • ほかもなんかいろいろクセが強い

 このため、総合・推薦入学者は一般入学者に比べて、留年、休学、退学などの割合が高いのではないかと予想しています。
 まあでも採ったのはそっちなんだから採ったやつがちゃんと面倒見ろよな、とも思って見ています。

 「SFC系」は人間としておもしろいヤツも多いです。ただ適切な環境や指導を与えないとダメになりやすいというのがこれまで塾生を見てきた感想です。

4.1.6. ニュータイプという幻想

 最近の長岡造形大学(たぶんデザイン科)は「ニュータイプがほしい」などとのたまってるという話も耳にしたので、大学が「SFC系」をあえて採っている可能性も否定はできません。ただ、それにしては入学後のフォローがおざなりな印象があるので、あえて採ってる線はないかな、とも思います。
 大学は義務教育じゃないから、ちゃんとやれないやつは落ちこぼれて当然、と言われればそれはそう。

 往々にして年寄りは、自分の老いた頭や感性では産み出せないような新規性のあるアイディアを若者に求めがち。それこそ人の革新たるニュータイプのような。
 しかし、若者と年寄りという単純なグループで考えた場合、経験も知識も少ない若者が年寄りより優れたアイディアを生み出しやすいとは考えにくいです。
 もし若者が産み出せるものがあるとすれば、それは経験や知識の足りなさ、そして無謀な行動力からくる既成のルールや概念の破壊をベースとしたものに限定されるのではないかと思います。

ニュータイプは万能ではない。戦争が生み出した人類の悲しい変種かもしれんのだ。

シャア・アズナブル / 機動戦士ガンダム第39話「ニュータイプ、 シャリア・ブル」

 まれに年寄りを越えるアイディアを生み出す若者はいるかもしれませんが、それは若者だからではなく、その人個人のスペックが高いだけと考えるのが自然でしょう。年寄りの中には標準的な若者よりも経験も知識も少ない者がいるのと同様に。

 教育機関がニュータイプを求めるというのは、はじめから完成された人間を求めるようなものであり、教育によって人材を育てることを放棄している(諦めている)という見方もできるのではないでしょうか。私はこれを危険な兆候だと感じています。

 「ニュータイプ」というありもしない幻想を追いかけ、真なる個人の能力を見ようとしない。一体、君たちはガンダムXからなにを学んだのか。

そう、全ては幻だ。たとえどんな未来が見えたとしても、それを現実のものとしようとしない限り、それは手には入らないのだから。ニュータイプを求めてさすらう時代はもう終わったんだよ。そして、君たちは新しい未来を作っていかなきゃならない。

D.O.M.E / 機動新世紀ガンダムX 第39話「月はいつもそこにある」

4.2. コスパがいいのは一般前期

 フローチャートとはちょっと流れの違う話になってしまいますが、もし共テで点が取れるのであれば、総合・推薦を流して共テに注力したほうがラクかもしれません。

 とくに沈思黙考タイプの秀才は一般に絞ったほうが絶対にいいです。
 このタイプはそれなりに賢く、思慮深く、人の機微にも聡いことが多いです。一方で物事を俯瞰して見たり、人の気持ちを慮ったりするがゆえに端からはどこか冷めたように見え、結果として「明るく楽しく元気よく」の逆に映ってしまうところがあります。個人的には「こういう者こそ長岡造形大学に送り込みたい」と思っていたものですが、どうにも面接でのウケが芳しくないようで、総合・推薦で合格したためしがありません。
 「しない後悔よりやって大成功」とは言いますが、そういうのを見てると、よくない結果が見えているのに挑戦させるのはどうなんだろう、と思わずにいられません。
 ついでにいえば提案書もあまり秀才には向いていない課題なのですが、こちらは圧倒的共テ力で殴れば無視できるレベルにできないこともないです。

 余談ですが、長岡造形大学が独自に課している個別試験の中でもっともフラットな結果が出る試験は一般選択Aのデッサン(鉛筆描写)だと思います。平面構成はうちでは見てないからわからん。

 面接、課題制作、提案書は避けられるなら避けたほうがいいです。なにがしたいのかよくわからんので。もっと正確に言うと「たぶんこういうことを求めているんだろう」というのはなんとなく察することはできるんだけど、それにしては提示されてる前提条件がザツくて、考えれば考えるほど「なにがしたいんだこいつ」という感想になる、という感じ。出題者は問題によって解答者の力量を測ると同時に、出題者自身の力量もまた解答者によって測られるのだという意識を持ちたいものです。

 とりま今年度の総合型選抜のデザイン科の問題とかマジで意味がわからん。仕事であんな案件を営業が持ってきたら「もう一回客のとこに行って客がなにを求めてるのかヒアリングし直してこい」って言うレベル。こういうノリだけで仕事取ってくるバカがいるから現場が疲弊するんだ反省しろ。

 閑話休題。また、総合型・学校推薦型選抜は受験の準備で数ヶ月が吹き飛んでしまいます。具体的には夏休みに入る7月ころから総合型選抜のある10月までの4ヶ月。総合型を落ちて学校推薦型選抜も受けるとなるとさらに1ヶ月がプラスされて5ヶ月。
 4ヶ月あればかなり共テの勉強ができますし、デッサンも描き込めます。1日1枚デッサンを描いたとして4ヶ月だと約120枚。1日3枚なら約360枚です。この枚数の差は大きいです。
 これまで見てきた塾生の中にも、総合・推薦なんか受けないで一般に絞ってたら合格あったかもなぁ、と思う人はいます。

 総合型、学校推薦型は偏差値不問で早めに決まるので、受けたがる人は多いです。でも正直、受験コスパは非常に悪いです。
 受験のための課題製作なんて、そんなスキル、この試験が終わったらなんの役にも立ちません。
 面接に持っていくためだけの作品なんて、受験が終わったらゴミです。その腕にゴミを抱え、その口でSDGsを語るのか。ハハ、笑えるな。
 しかも受験のためだけに2回も長岡なんていう地方都市に足を運ばなきゃならない。それだけやっても合格するかは五分。学校推薦までやったら3回。落ちたら全部無駄足。それで合格するのはデザインとアートの違いもロクにわかってない陽キャ。こんなクソゲー、馬鹿馬鹿しくてやってられないぜ。

 そんなわけでだれでもかれでも総合型・学校推薦型選抜を受けることについては(少なくとも現状では)消極的です。
 総合型・学校推薦型の準備に貴重な10代の時間を費やすくらいなら、その時間で友達と遊んだほうがよほどのちの人生をゆたかにしてくれるでしょう。

 あなたが少しでも勉強できる人なら一般に絞ってしっかり勉強したほうがいいです。しっかり勉強して長岡造形大学より上のレベルの大学を目指しましょう。上の大学を目指した結果、いまひとつ共テの点数が足りなかったので長岡造形大学にレベルを落とす、というのはアリです。実際、そういう感じで共テ後にふらりと弊塾の門を叩き、するっと長岡造形大学に入っていく人はいました。その姿を見ながら、そのスペックがあるなら新大や技大にでも行ってくれたほうがこの国のためになるんじゃないだろうか、と思わないこともありません。

 もし、ヒマとお金を持て余してるなら旅行感覚で総合型・学校推薦型選抜を受けるのもいいとは思います。たぶんそれくらい余裕ある姿勢のほうがウケがいいし、するっと合格する可能性が高いです。

5. 合格を勝ち取るために

 受験のフローチャートで自分の進むべきルートを把握したら、それぞれのフィールドで合格を勝ち取る対策をしていきましょう。

5.1. 全試験 共通

5.1.1. 過去問を把握する

 長岡造形大学ではウェブサイトで最新の入学試験模擬問題のPDFを参照することができます。「模擬問題」という名前ではありますが、掲載されているのは実質過去問です。

 ただ、問題の傾向が大きく変わる場合に模擬問題が掲載されることがあります。今年度(2025年度版)のデザイン科の問題は昨年から試験の傾向が変わったため過去問ではなく新規で作られた模擬問題が掲載されています。

 今年度より前の入学試験模擬問題は長岡造形大学のウェブサイトで「模擬問題」を検索すると参照することができます。結構とっちらかってるのでがんばって探してください。過去3年分くらいを把握しておけばまあまあ十分かな、という気はします。

 総合型選抜の課題製作および推薦型選抜、一般選抜前期の提案書の問題に模範解答がないのは仕様です。
 総合型選抜の模範解答についてはオープンキャンパスや入試説明会などのイベントに参加すると見ることができる場合があります。提案書の模範解答はこれまでに公開されたことがありません。

5.2. 総合型・学校推薦型選抜 共通

5.2.1. 基本的な方針を定める

 総合型・学校推薦型選抜を受験する場合、最初に以下の3点を固めておくとあとがいろいろとスムーズになります。これはあとに出てくる志望理由書と自己アピール用紙を記載する際や面接の場において有効に働きます。たぶん。

  • 将来なにをしたいのか
  • (目指す将来のために)現在なにをしているのか
  • (目指す将来のために)大学でなにを学びたいのか

 まず、将来なにをしたいのか、を目標として設定します。
 次に今現在自分がしていることを確認します。受験まで時間的余裕があるなら、その方向性で新たにスキルを身につけるのもいいでしょう。
 そうした活動をしていく中で(時間や金銭、社会的地位などによる)自分自身の限界や新しいルートが見えてくることがあります。それらは大学で学びたいことにつなげます。

 例えば:

  • 将来:車のデザイナーになりたい。
  • 現在:見よう見まねでデザイン画を描いたり、クレイモデル作ったりしてる。
  • 大学:カーデザインについて学ぼうにも書籍などは少なく独学の域を出ない。造形卒業生にはカーデザイナーになった人もおり、欲しい情報や技術が得られるのではないかと思った。

 この基本方針を定めるだけで、長岡造形大学の総合型・学校推薦型をただなんとなく受験する有象無象の中で、アタマひとつ、とは言わないまでも指先程度は差をつけられるはず。

 なお、こんな基本方針ガン無視で受験して合格するSFC系もいるので、あくまで参考程度に考えてください。総合型・学校推薦型選抜で大事なのはノリです。

5.2.1.1. 大学は手段であり目的ではない

 基本的な方針を考える際に「長岡造形大学に入ること」を目的にしないように注意してください。これは非常に陥りやすい間違いです。とくに「絶対長岡造形大学に入りたい」と長岡造形大学に恋してるタイプの人は要注意です。

 (長岡造形大学に限らず)大学はあくまで手段です。あなたが必要とするものを得るうえでの、あなたがやりたいことを実現するうえでの、ただの通過点です。その大学に入ること自体を目的にしてしまうのは手段と目的を取り違えていることにほかなりません。

 この注意は総合型・学校推薦型選抜全般に言えることです。
 たとえば、自己アピール用紙に載せるためだけの活動。面接に持っていくためだけの作品。それらは「大学に入る」という目的を果たすための手段になってしまっています。それは間違いです。
 決して「大学に入る」ための活動をしないでください。それは受験において評価されないばかりでなく、もう二度と取り返すことができない、あなたの貴重な10代の時間を無駄使いすることになります。それはあなたの人生において大きな損失です。

 本当に自分がやりたいことをやってください。その様子を自己アピール用紙に載せてください。自分がやりたいことをやる中で作り出されたものを持参作品として持っていってください。たとえその結果、長岡造形大学に入れなかったとしても、その経験はあなたの血肉になっているはずです。

 本当に自分がやりたいことを見つめた結果、長岡造形大学に行く必要がなくなってしまう可能性も十分ありえます。「なんとなくユニバーサルデザインを勉強したいと思っていたが、よく考えたら再生医療のほうがやりたかったかもしれねぇ……」となるかもしれません。
 その場合、もはやあなたが長岡造形大学にこだわる必要はなにもありません。なぜなら長岡造形大学で再生医療は学べないからです。

 大学を目標にしないでください。大学はあくまで手段です。あなたがあなたの人生を生きるために、行くべき場所、やるべきことを見誤らないでください。

5.2.2. 志望理由書と自己アピール用紙

 総合型・学校推薦型選抜では出願書類として「志望理由書」(2枚)と「自己アピール用紙」(最大3枚)が求められます。フォーマットは総合型と学校推薦型でほぼ同じです。

 志望理由書と自己アピール用紙は面接官ガチャに効いてくるので、できるだけ具体的に記述したほうがいいです。(でも、学校推薦型の面接官の当て方がこれまでと変わったとしたらあんまり関係ないかも?)

 これらは面接の材料としてももちろん使われます。面接のことも考えると、稚拙でもいいのでちゃんと全部自分の言葉で書くことをオススメします。
 高校の先生や保護者に書類を見せると余計な要素を付け加えてきがちですが、自分が納得できないことは書かないでください。こういう第三者があとから付け足した要素は全体の中で悪目立ちしがちで、面接でそこを突っ込まれてしどろもどろになってしまう例が少なくありません。
 とくに専門系高校は就職の面倒を見る影響からか、先生が志望理由書や自己アピール用紙にめちゃくちゃ口を出してきがち。完成したものはもはや先生自身の志望理由書になってることも珍しくありません。
 逆に偏差値の高い学校ほど先生が口を出さないので、学校の偏差値が上がるほど志望理由書の偏差値が下がっていく(フリーダムになっていく)傾向があります。
 たぶんそういう傾向があるのは大学側もわかっていて、だから提出された志望理由書とかあんまり真に受けてないんじゃないかな、という気がします。結果として面接偏重になっていくのも、まあわからんでもない。

 あ、余談だけど、長岡工業高校に資料として保管されているであろう過去の志望理由書、実際に大学に提出したのとは全然違うやつ混じってるよ。高校にあるのは先生に言われるがままに作成したやつだけど、実際に大学に提出したのはまったくの別物だよ。後輩たちは気をつけてね。ちなみにその人はちゃんと合格したよ。

5.2.2.1. 努力より結果

 志望理由書や自己アピール用紙を書く際、大人たちは努力したことを見せたがりますが(毎日デッサンを描いてることだとか作品を作る過程だとか)、それは特別アピールするべきことではありません。
 こういう、大人が大好きな努力至上主義は、こと総合型・学校推薦型選抜においては害悪です。

 学校推薦をもらうために勉強をがんばった。その結果、学校推薦が受けられた。しかしいざ学校推薦型選抜を受験するとなったときに、学校で勉強をがんばったこと以外、なにもアピールできる材料がない。

 わりとある話です。下手すれば「学校推薦をもらうために学校で勉強をがんばったこと」をアピールすれば合格すると思ってるまであります。これは努力至上主義の大人達によって生み出された悲しきモンスターです。
 このモンスターは「努力した(努力してる姿を見せた)から結果が得られた」という成功体験から「努力すれば(努力してる姿を見せれば)結果が得られる」と信じています。だから「努力した(努力する姿を見せた)ことで学校推薦がもらえた」と思っているし、「努力すれば(努力する姿を見せれば)合格できる」と信じています。
 しかし、総合型・学校推薦型選抜で求められるのは努力ではなく結果です。過去ではなく今、そして未来です。

 今、なにができるのか。
 将来、なにを成そうとしているのか。

 それこそがこれから指導する側として欲しい情報です。少なくとも私が面接する立場なら。

 あと、学校推薦型選抜を受験するための条件は評定平均3.5以上と学校長の推薦のふたつだけであり、模試や高校自体の偏差値は関係ありません。つまり、入る高校のランクを下げればそんなにがんばらなくても評定平均3.5以上も推薦もラクに手に入るよ。がむしゃらに「がんばる」前になぜ推薦の受験の条件が偏差値ではなく評定平均になっているのか、考えてみたほうがいいよ。本音と建前の区別がつくようになったらキミも大人の仲間入りだ。

5.2.2.2. 志望理由書

 志望理由書は以下の4項目について文章で記述します。前述の「基本的な方針」が定まっていれば志望理由書を埋めることはそれほど難しくないと思います。

  • 長岡造形大学を志望した理由
  • 出願学科を志望した理由(志望領域を踏まえて記述すること)
  • 長岡造形大学入学後に取り組みたいこと
  • 目標達成のために現在行っていること

 「志望領域を踏まえて」の意味が不明だと思いますが、正直、我々もなにが言いたいのかよくわかっていません。入試説明会で説明を聞いてもふわっとしててよくわかりません。
 とりあえずその学科の中でもとくになにをしたいのか、ということを問うているのだろうと解釈しています。デザイン科志望ならその中でもとくにプロダクト分野だとか映像分野だとか。

 これに限らず、長岡造形大学は定義が曖昧な、それっぽいふわっとした言葉を使いがちです。たぶん、これらの謎ワードにそれほど深い意味はないので、ノリで適当に受け流すのが正解だと思います。
 提案書の過去問で「広告企画のイメージをビジュアルで伝えなさい」って書いてあるのを見たときはさすがに失笑しちゃったよね。「イメージを」www「ビジュアルで」www 「広告企画を図や文章を用いて説明せよ」でええやろ。伝えることを投げ出すやつにデザインを語る資格があるのか。

5.2.2.3. 自己アピール用紙

 「自由に自己をアピールしてください」の言葉通り、テキストだけではなく、絵や写真なども使って書きます。「提出枚数は3枚以内」となっているので書くことがなければ1枚でもかまいません。ただ、特別な事情がない限り3枚ちゃんと書くのが安パイ。
 書き方については印刷した自己アピール用紙に手書きするもよし、自己アピール用紙の枠に合わせてデジタルでデータを作成して貼り付けるもよし、自己アピール用紙のPDFデータを直接編集してプリントアウトするもよし。枠内の2次元平面に収まればなんでもありです。

 QRコードなどで動画やウェブサイトに飛ばすのは基本見てもらえないと思ったほうがいいかも。それを認めちゃうと実質紙面の大きさが無限大になっちゃうので。あと何百枚も自己アピール用紙を見なきゃなのにいちいちQRコードなんて読んでられないのと、そもそも個人情報保護的な関係で自己アピール用紙を見るときはスマホの持ち込みができないとかはありそう。
 でも別にそういう言質を取ったわけではないので、そんなコンプラとか関係なくガンガンQRコード読み込んで見てる可能性も否定はできないです。

 内容はとくにこだわりがなければ以下のように、最初に決めた基本方針をなぞることをオススメしています。

  • 1枚目:将来なにをしたいのか
  • 2枚目:(目指す将来のために)現在なにをしているのか
  • 3枚目:(目指す将来のために)大学でなにを学びたいのか

 これは一例でしかないので、この形に限らず、自分のアピールしたいことや話の流れでいくらでも自由に構成してください。

 たまに志望理由書のようにびっちり文章を書く人がいますが(特に建築志望の男子)、この自己アピール用紙はそういうふうではないのでご注意ください。
 大学によってはまっさらな用紙に作文をさせるところがあるので、そういうところとごっちゃになるのかもしれません。

 まあ、そこまではいかないにしても上がってきた自己アピール用紙を見て「デザイン分野を志望してるんだよね?」と問いたくなることはわりとあります。最近のティーンエイジャーは雑誌読まなくてレイアウトの善し悪しがわかんないとかなの?
 自己アピール用紙に取りかかる前にまず「ノンデザイナーズ・デザインブック」を読んでおいてくれ。話はそれからだ。

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5.2.2.4. 志望理由書NGワード集

 以下、いままで塾生を指導する際に使っていた、志望理由を書く上で書きがちなNGワードのリストです。でも、何度も言いますが、大事なのはノリなので、ノリさえよければこんなNGワードなんてぶっちぎれます。参考程度にとらえてください。

「多くの」「たくさんの」「様々な」「広く」:「たくさんある様々な分野の広い範囲を多く学びたい」とか「なにも調べてない」「なにも知らない」「なにも考えてない」と言ってるのと同義。「なにが食べたい?」って聞かれたときに「なんでもいい」って返すくらいダメ。
 具体的になにがしたいのか、なにが学びたいのかを書いて。志望理由を書いててこれらの言葉が使いたくなったら、まだやろうとしてる分野の調べ方が足りてない可能性が高い。図書館にでも行ってその分野の資料漁るところからはじめて。

「小さい頃から」:過ぎた過去ではなく、今、そして未来のビジョンを語れ。

「基礎を学びたい」:大抵の大学は基礎から教えてくれるので、基礎から学ぶ態度を表明することにあまり意味はない。基礎をたたき込まれるのは大前提として、その上で自分はなにを学ぶのか、学びたいのかに言及して。

「〇〇先生に師事したい」:書く前に、その先生でなければいけない理由があるのか、ほかの人でも替えの利くものではないのかをよく調べて。世界中でその先生しか持ってない技術を学びたいからその先生がいる大学に入学したい、というのであれば志望動機として問題ない。
 ただし、先生は他大学に転任したり、退官する可能性もある。たとえば面接で「あー〇〇先生ね。来年から金美に転任するんだよね」と言われたとき、「じゃあ金美行きまーす」と堂々退場する覚悟はあるか。覚悟があるなら書いてよし。

「家が近い」:地元勢が書きがち。大学への近さで言えば、長岡の端にある実家から通ってる人より市街・県外から来て大学周辺に部屋を借りてる人のほうがずっと近い。

「学費が安い」「お金がない」:「お金がないから公立しか考えてない」とかいう受験者(および保護者)がまあまあいるが、悪いこと言わないから、カネがないなら美術・デザイン系の進路なんてやめたほうがいい。カネにならないから。
 だったら地元のテクノスクールに行ったほうがいい。テクノスクールの学費は高くても2年間で50万ほどなので、長岡造形大学の1/4以下。それでいて各種国家資格を取得できるし、就職先も手堅い。お金がないなら(あっても)ガチでテクノスクールをオススメする。造形なんて行ってもなんの国家資格も取れないぞ。色彩検定? ポケカ公認ジャッジ資格のほうがまだ実利あるだろ。そんな民間資格よりテクノスクール行って第二種電気工事士取ろうぜ。さあ、今すぐテクノスクールに応募だ。

5.3. 面接対策

 面接に関しては前述したとおり「陽キャであれ」に尽きます。

5.3.1. 浪人は不利

 総合型は一般前期に比べると浪人生の合格率が明らかに低いです。これはなんらかのバイアスがかかっていると考えるのが自然だと思います。
 理由はいくつか考えられます。

  • 真面目に勉強やデッサンに取り組んでしまう結果、総合型に持ち込む話や作品がつまらない。
  • 浪人となると少なからずうしろ暗いところが出てしまい、その雰囲気が面接の足を引っ張る。
  • そもそも(長岡造形大学の)面接に向いていない

 また、どうも浪人経験者はインターンや就活の結果が芳しくないという話も聞こえてくるので(業界やタイミングなどにもよるとは思う)、就職予備校たる大学としては積極的には浪人生を採りたくないという理由も考えられます。考えられますが、まあでもそこまでは考えてなさそう。

 そんなわけで、現役時に総合型の2次や推薦型で落ちている場合(つまり面接をしたうえで落ちている場合)、浪人しても総合型で合格する見込みは低いと思われます。なぜなら面接したうえでキャラが造形にあわない(ノリが悪い)と判断されてしまっているからです。
 データの母数は10件以下ですが、弊塾において、現役時に総合型2次や推薦型での不合格を経験している、かつ、翌年の総合型で合格した浪人生はゼロです。みんなスキルも知識もあるので1次は通るのですが、どうしても2次が抜けられませんでした。

 その理屈で言うと、(浪人生に限らず)総合型2次で落ちた人は、学校推薦型を受けても落ちる可能性が高い、ということにもなります。
 実際、弊塾でも総合2次で落ちた者が推薦で合格した例は1件しかありません。その1件についてもちょっと特殊な理由があったのでは……という疑惑があって、正規のデータとして取り扱うにはちょっとあれな部分があるようなないような……。

5.3.2. 面接官との相性は大きい

 面接の得点は面接官個人の印象が大きく寄与しているようです。
 また、面接官は複数人いますが、メインを張る人はだいたい決まっています(志望する分野だったり役職が上だったり面接官個人のキャラクタだったり)。よって、そのメインを張ってる人との相性が得点に大きく影響を及ぼすことになります。
 人によっては面接官の組合せが得点に影響する可能性もあるかもしれません。面接官同士で勝手に場をもりあげてくパターンもあれば、「お前ら仲悪いんか?」というくらいスンッとしてるパターンもあります。

 これが面接官ガチャの面接官ガチャたるゆえんです。ただこの面接官ガチャのブレも、ある一定以上の陽キャ度があればぶっちぎれます。

5.3.3. 面接の流れ

 スタンダードな面接の流れは以下のような感じ。

  1. 入室
  2. 机やイーゼルの上に持参作品を置く
  3. 総合型の場合:自己プレゼン3分間
  4. 「志望理由をお願いします」
  5. じゃあ作品見よっか or 座って会話(以降フリースタイル)
  6. 「最後に質問や言いたいことはある?」
  7. 荷物をまとめて退室

 志望理由については聞かれないパターンもあります。志望理由を聞きたいというより、アイスブレイクで聞いてる感じです。
 「最後に聞きたいこと」も話の流れによっては省略されることがあります。「最後に聞きたいこと」でなにを聞いたらいいのかとよく相談されますが、この一項目で面接全体の印象が大きく好転することはないので(なんなら席に着いた時点で8割がた印象が確定している)、本当に特に聞きたいことがないなら「ありません。ありがとうございます」でいいと思います。

 面接内容は事前に提出してある志望理由書とか持参作品とかを材料にして会話をする感じです。その会話の中で自分のやってきたことや好きなこと、興味を持っていることを知ってもらいましょう。自分のキラキラで面接官をウッマブシってさせてやりましょう。

5.3.4. 高校での面接練習はやりすぎないほうがいい

 高校の面接練習だと「あなたの長所(短所)は?」とか「高校生活でがんばったことは?」みたいな一問一答型の面接練習をすることが多いようですが、そんな回答を暗記してもあんまり意味ないです。
 とりま過去の受験者からの報告で「あなたの長所(短所)は?」という質問が出たことは皆無です。つか、大学に限らず、いまどき面接で「あなたの長所・短所は?」とか聞くとこあんの?
 あと、そのタイプの練習をやりこむと、あらかじめ備えていた質問にはスラスラと答えられるのに、そうでない質問のときは言葉がつまったり声のトーンが下がったりして、質問ごとにギャップが発生するようになってしまい、印象を悪化させる危険があぶない。練習はほどほどにしたほうがいいと思います。そのへんは人にも寄ると思いますが。

5.3.5. 化粧をしよう

 服装は自由ですが、面接のネタに関係しているとかではなければ制服やスーツが無難でしょう。
 面接のために美容室で髪を整えたり、ナチュラルメイクをするくらいはしてもいいでしょう。いや、するべきです。面接官はほぼほぼおっさんで目も耳も悪いので、化粧の有無とかよくわかりません。でも肌のトーンくらいは目が悪くてもわかります。
 おっさんは「若い子は化粧なんてしなくていい」などとのたまいますが、おっさんの指す「化粧をしていない」状態は往々にしてナチュラルメイクをした状態です。あれはすっぴんとナチュラルメイクの違いがわかってないだけなので、真に受けてはいけません。

 人は見た目が9割です。テレビ番組「所さんの目がテン!」で行われた就活面接の実験でもモデルの合格率が高かったという実験結果があります。見た目をよくして悪いことはありません。

5.4. 学校推薦型・一般前期選択Bの提案書対策

 長岡造形大学名物(迷物)「提案書」。模範解答が一切公開されていない謎すぎる課題です。「公開すると解答が引っ張られるから」というのが非公開の理由のようですが、問題の傾向は毎年全然違うし、配点もようわからんし、言うほどだろうか? とは思っています。
 もしかしてうちみたいな零細画塾が過去問情報で商売できるようにしてくれてる? だとしたら、ありがとうございます長岡造形大学。今度お菓子でも持って行ったほうがいいかな?

 ……と思ってたら、今年の一般前期の提案書問題に「参考作品として公開する場合があるのでご了承のほどを」みたいな文言があったらしいので、来年度は総合の課題みたいにオーキャンなどで参考作品が公開されるかもしれません。やっぱ菓子折もってくのやめるわ。

 「提案書」で求められているものの例をあげるとすれば日芸のデザインプレゼンテーションのようなものです。

 提案書への対策は(入試説明会でもよく言われているように)「とにかく日頃からいろんなものを見ろ」に尽きます。頭空っぽのほうが夢は詰め込めるかもしれませんが、無からひらめきは生まれません。ひらめきというものはこれまで自分が経験したり、学んだりして蓄積してきた記憶や知識が元になるからです。
 提案書対策のため、引きこもって提案書の過去問をひたすら解く、というやり方をする人がいますが、正直、時間の無駄だと思います。そもそもその狭視野で短絡的な行動からしてダメ。友達と外に遊びに行ったほうが百倍マシです。

 LLMが創発的能力を獲得するには学習データ量がある閾値を超える必要があるという話もあります。

 人間もたぶん同じです。ひらめきは自分の頭の中にある知識の海から生まれ来るものです。

 インスタントな対策としては映画、とくにSF映画を見ることがおすすめ。適度なサイエンス、適度なフィクションのSF映画は提案書と相性がいいです。

5.4.1. 提案書の配点

 提案書の配点については正直よくわかりません。
 学校推薦型は選抜方法に

提案書(文章と図・絵による)、人物評価(面接、調査書)、出願書類(志望理由書、自己アピール用紙)を総合して合否を判定します。

とあるだけで配点は開示されていません。また成績開示請求をしてもすべてをひっくるめた得点しか出してくれないので、どういう提案書を書いたらどれくらいの得点があるのかがまったくわかりません。
 一般選抜選択Bでは調査書(10点満点)、自己アピール用紙(10点満点)、提案書(300点満点)という配点が開示されていますが、成績開示ではやはり3つの合計点数しか出してくれません。

 このような状況であるため、提案書の正確な得点は不明です。ただ、ざっくりとした傾向はつかめています。一般選択Bだと

  • 内容はともかく提案書を完成させれば5割台
  • 無難な(条件を満たしており、内容的にも大きな問題がない)提案書を完成させれば6割台
  • 条件を満たしており、かつ、ユニークなアイディアがひとつでも盛り込まれていれば7割台

という感じです。

 合格最低点を考えると共テで7割以上を確保できていれば、提案書7割で合格を勝ち取れます。共テ9割なら提案書白紙提出でも合格。8割ならなんか書いて提出すれば合格します。とりあえず勉強しましょう。ちなみに一般前期の提案書で8割を出した例はまだ観測できていません。

 もし余裕があれば「こんなんおもろいやろー」というアイディアを提案書にぶち込んでボーナスを狙うのも悪くはないです。ただ、ぽっと降りてきた「最高のアイディア」ってやつは往々にして提示されている条件から外れていることが多いので十分注意しましょう。人がやってないことには人がやらない理由があるものです。
 また、長岡造形大学の提案書は正確な考証よりもハッピーファンタジーな内容を好む傾向があるようです。頭ハッピーセットかよ。

 推薦型選抜の提案書もだいたい似たような採点だと思われますが、推薦の場合は面接でいくらでも結果がひっくり返るっぽいです。そのため「面接に自信がないのでそのぶんを提案書で稼いで補填する」という考え方はしないほうがよさそう。むしろ、提案書は無難に7割を目指して基礎点を確保し、面接でほかに差をつけるほうが現実的です。

 いずれにしても提案書の配点に過度の期待をしないことです。提案書が原因で落ちることはあっても、提案書で逆転合格はありません。

5.5. 一般前期選択Aの鉛筆描写

 長岡造形大学のデッサン(鉛筆描写)は平成27年度(2015年度)に突然、手と角材2本のデッサンに変わってから、ずーっと手となにかの組合せが続いています。ちなみにそれ以前はモチーフ3点の構成デッサンでした。

 選択Aの個別試験では鉛筆描写のほかに平面構成も選択できます。ウワサでは鉛筆描写より平面構成のほうが狙い目という話もあったりなかったり。
 ただ、弊塾から平面構成で受験した人が過去にいないので(っていうか、うちが平面構成を教えていない)どの程度の仕上がりでどの程度の得点が採れるのか不明です。

5.5.1. デッサンの得点

 過去の入試説明会の情報によると受験者のデッサンの平均得点率は6割くらい(300点満点で180点)。
 模擬問題に掲載されているデッサンで得点率8割くらいのようです。ただ、デッサンは写真と実物では印象が違ったりするので、できれば実物を見たほうがいいです。模擬問題に掲載されているデッサンはオープンキャンパスで実物を見ることができるので、可能なら見に行くことをオススメします。
 また、もし高校の先輩や知人で長岡造形大学の選択Aを受験したことがある(合否は問わない)、かつ成績開示して得点がわかるという人がいたら、その人の再現作品を見せてもらいましょう。たとえその人が合格していなかったとしても、これくらいのデッサンでこれくらいの点数とわかるのは情報として大きいです。

 参考までに言うと、もともと趣味で絵を描いていて、半年くらい弊塾で週イチペースでゆるゆるとデッサンを描いていた人で7割弱といったところです。
 美術系高校からの受験者であればデッサンで9割近く叩き出せる可能性が高いです。デッサンで9割たたき出せれば共テ2教科5割弱でも合格が狙えます。

5.5.2. モチーフ

 以前は養生テープとかステンレスパイプとかダクトホースとか「コメリから仕入れてるんか?」と思うような資材モチーフが多かったのですが、最近はペットボトルとかアルミホイルみたいなベーシックなモチーフが多いです。出題者がモチーフ選ぶのに疲れちゃったのかも。もしくはモチーフの仕入れ先がコメリからダイソーに変わったか。
 また、モチーフを複数描いてよい(1つだけでもよい)とすることが増えました。

 入試説明会では両手描けるなら描いたほうがいいとかモチーフの数がどうとか言っていますが、これまでの受験者のデッサンとその得点を見る限り、そういう小手先のテクはそれほど得点に寄与していない気がします。
 それよりはもっと根底の部分で「あ、ちゃんとデッサンをやってきたんだな」という画が好まれる印象があります。そのため、すごいシンプルな構図の画でも普通に9割近く出ることがあります。
 両手だのモチーフの数だのという話は、基本的な技術を修めた上でさらに上を目指すなら、という話だと思ってたほうがいいと思います。

 余談ですが、この話に限らず入試広報課の情報は美工方面の解像度が低い印象があります。仲悪いんかな? デザイン科が花形なうえに新棟できたりで、ほかがおざなりになってるのもあるかもだけど。
 あと、最近気が付いたんですが、長岡造形大学の入試広報課って「入試の広報」課ではなく、「入試&広報」課なんですね。「今年は入試説明会少ないし、対応も後手後手だし、つかもう全般にグダってるし、ちゃんと仕事しろよ」と思っていたのですが、そりゃ新棟完成とか入ってきたら入試のほうが手薄になりますわな。ここ数年、受験倍率右肩下がりになってんぞヘイヘイヘイ(突然の煽り)

 閑話休題。デッサンガチるなら最寄りの画塾の門を叩きましょう。学校に美術の先生がいるならそちらを頼るのもいいと思います。ただいずれにしても最低一年はしっかり通って、毎日一枚は画を描いてほしいところです。
 ちなみに長岡市内ならマルヤマ美術研究所と花園美術舎がデッサンを見てくれます。マルヤマさんはフィレンツェ賞でなんかの賞受賞してるし、花園さんは夫婦揃って金美卒って話なので安心だよ。

 うち? うちは総合・推薦をメインにしてたので、デッサンはからっきしです。鉛筆の削り方みたいな、今更聞けない基礎中の基礎は教えるから、あとはほかの画塾行って戦場の空気を感じてこい! っていうスタンスでした。
 でもここ数年はデッサンガチ勢のOBがいてくれたのでちょっとレベル上がってます。持つべき者は有能なOB(なお、対造形面接ウケは最悪の模様)。

6. 合格の確度をあげるためにやっておきたいこと

6.1. 毎日学校に行け!

 長岡造形大学は学生が学校に来なくなってフェードアウトからのドロップアウトすることを恐れています。普通に考えて学生が減ればアガリが減るし、あとはまああれ、静かに退学するだけならともかく、退学するにあたりいろいろ付随した問題が噴出してぐちゃぐちゃになる例が少なくないのだろうな、と。長岡造形大学の話ではありませんが、しばらく姿を見せないと思ったら自殺してた、みたいなこともたまに耳にしますし。
 長岡造形大学が「基礎造形演習」と称して一年次アタマの朝イチから学校に来るようにしているのは、最初に学校に行く習慣を付けてドロップアウトを防ぐ目的があるとか聞いたことがあります。ホームルーム制とか入学式で保護者向けの説明会をしてるのとかもそのへんが大きい気がします。

 そんなこともあってか、高校での欠席が多い人は嫌われる傾向があるようです。面接でも「n日欠席があるけれどどうして?」みたいなことを聞かれることがあります(調査書に欠席日数が書いてある)。不登校児の存在が当たり前だったり、学生時代にコロナ禍を経験して学校を休むことにあまり抵抗がない世代は注意が必要です。

 総合型の場合は1次が書類で判断されるので、欠席日数がそのまま足を引っ張ることがあるようです。
 推薦型の場合は午後に面接があるので、そこでのノリで欠席のハンデを吹き飛ばすことが可能です。ただ、高校によっては推薦の要件として「3年間の欠席日数10日以内」などの内部規定がある場合があります。そのあたりは高校に確認してください。

 なお、こういうことを言うと志望理由書や自己アピール用紙で欠席日数が多いことについての言い訳を書くバカが出てくるのですが、そういうことじゃねーから。それがかえって印象を悪くすることがわからない、そういうとこだぞ。

 というわけで、来年度から高校に通う人は毎日元気に高校に通いましょう。保健室登校でも出席扱いになる場合もあるようです。そのへんは高校に確認してください。
 もうすでに欠席日数が2桁くらい溜まってる人は一般前期に絞るか、別のとこに進路変更するほうが幸せになれるかもしれません。

6.2. 長岡市に住民票を移せ!

6.2.1. 長岡市民は優先枠がある

 長岡造形大学は選抜にあたり以下の優先枠が存在します。

  • 長岡地域定住自立圏(長岡市、小千谷市、見附市、出雲崎町)内高等学校在籍(卒業)者または長岡地域定住自立圏在住者(通称:長岡枠)
  • 専門高校在籍者(工業、商業、農業等の専門教育を主とする学科在籍者)(通称:商工農枠)
  • デザイン、美術、建築等、本学と同系統の専門教育を行う科、コース在籍者(通称:美術枠)

 2025年度の各選抜における枠の人数は以下の通りです。

  • 総合型選抜
    • 長岡枠:9人
  • 学校推薦型選抜
    • 長岡枠:5人
    • 商工農枠:4人
    • 美術枠:4人
  • 一般前期
    • 長岡枠:4人
  • 一般中期
    • 長岡枠:2人

 この枠の考え方ですが。定員60人、長岡枠9人の総合型を例にすると:

  • 最初に枠関係なく得点上位者から順に60人を採ります。
  • この60人の中に長岡枠該当者が5人しかいなかった場合
    • 選外の長岡枠該当者の中から残り4人を上から順に追加します。その結果、合格者は全部で64名になります。
  • この60人の中に長岡枠該当者が9人以上いた場合
    • 追加はありません。合格者は全部で60名になります。

というふうになります。実際の総合型の試験は2段階なのでもうちょっとあれこれがあるのだと思いますが、カタチとしてはこんな感じです。
 枠が空いていたら追加で合格にするのであって、定員60人に揃えるために既存の得点下位の合格者を長岡枠上位者と入れ替えるということはありません。

 なお、枠は学科関係なく全体での人数です。たとえば、デザ、美工の長岡枠該当者がゼロだったとしても、建築に長岡枠該当者が9人いたらそこで試合終了です。

6.2.2. 商工農・デザイン枠は期待できない

 過去の入試広報課の説明では、この3つの枠のうち商工農枠とデザイン枠はこれまでに適用されたことがないとのことでした。今年度もそうだったのかはわかりません。

 前述のように共テが期待できない商工農・美術系高校の者たちは総合型と推薦型に命をかけるしかありません。その結果、普通に合格ラインを越えてきて枠関係なく合格してくる、ということのようです。

6.2.3. 狙い目は長岡枠

 3年くらい前の説明会では、長岡枠は一般中期で発動することがあるくらい、と言っていた記憶があるのですが、成績開示による調査により、実際には総合型と学校推薦型でも長岡枠が発動していることがわかっています。一般前期に関しては長岡枠が適用されたデータがなくてわかっていません。中期は適用されたデータがあります。
 長岡枠で引き上げられた者は長岡造形大学が公表している合格最低点よりも低い点数で合格しているのでそれとわかります。
 なんで長岡枠があるかって? 大学に長岡市民の血税が使われてるからだよ!

 長岡枠が有利に働く理由は主にふたつあります。
 ひとつは定員に対して長岡枠の割合が高いこと。総合型の場合、実質約70名の合格者に対して、長岡枠は9人。割合にして10%強です。一方、全国47都道府県からやってきた猛者たちは定員60人の枠を奪い合うことになります。定員を単純に47都道府県で割ると合格者は1県当たり1.2人。割合はわずか2%です。長岡枠のほうが5倍合格しやすい!

 もうひとつの理由は、新潟県内にそもそも美術・デザイン系高校がないこと(なくはない)。一応、工業高校のデザイン科は存在しますが、まあ、地方公立の工業高校のレベルは推して知るべしです。総合・推薦にかけるしかない工業高校に比べたら、共テとデッサンでごり押しができる私立の美術科のほうがまだマシかもしれません。いや、たいして変わらんか……。

 長岡枠の受験者のレベルが低い一方で、長岡枠はそれ以外の受験者よりも実質的な倍率が低いとなれば、これはもう長岡枠を利用しない手はありません。もちろん長岡枠該当者でも落ちるときは普通に落ちますが、そのハードル自体は市外からの受験者に比べたらだいぶ低いと考えていいと思います。合格の確度をあげるなら長岡市に住所を移しましょう。
 長岡造形大学の受験者のうち6割くらいが長岡に住所を移すようになったら長岡枠の優位性は失われますが、まあ、来年度いきなりそんなことになることはないでしょう。

 なお、現状、長岡枠については「長岡地域定住自立圏(長岡市、小千谷市、見附市、出雲崎町)内高等学校在籍(卒業)者または長岡地域定住自立圏在住者」とあるだけで、在住期間等の定めはないようです。
 ただ、2024年度の志願書には初年度納付金の項目で

「長岡市内在住者」とは、2025年4月1日現在において、本人又はその配偶者もしくは1親等の親族が引き続き1年以上長岡市内に住所を有している者をいいます。

というふうにあるので、住所を移すつもりなら入学予定年の4月より1年以上前に住所を移すのがいいでしょう。入学金が10万円くらい安くなります。来年度受験するつもりならいますぐ長岡市に住所を移せ!

7. 最後に:本当のコミュ力とは

 こんなノリだけの採用でいいのだろうか、とも思いますが、就活も同じノリで採用が決まってるのだとしたら、就職予備校たる大学の採用基準としてはこれが正解なのかもしれません。慶応SFC出身者が高い意識にラップされた中身のないビジネスでもてはやされているのを見るとそんな気にもなります。

 つか、学校でも会社でも、コミュ力重視とか言ってるとこはだいたいやべぇよ。個人レベルでも「コミュ力あります」って自称するやつ、だいたい報連相できないコミュ障。ただのおしゃクソはコミュ強とはいわんのよ。
 コミュニケーションなんてとりま報連相できればいいよ。だし、そんなの当たり前にできるべきことで、わざわざ「重視してます」とうたうようなもんじゃない。募集要項で「日本語力重視」なんて(少なくとも日本国内では)わざわざ書かないのと同じ。

7.1. デッサン力はモノを見る力

 リンゴの花弁はだいたい5枚。リンゴの実はその花弁を支える花托という部分が大きくなったものなので、よく見ると5つの膨らみがある。また、陽がよく当たる上の部分は赤く、陽があまり当たらない下の部分は赤が薄い。
 そういうふうに見えない構造や成長のしかたを想像してリンゴを描く。

 生徒がはじめてリンゴを描くとき、いつも説明していることです。

 はたして、我々はリンゴを描くときのように生徒のことも見ることができているのでしょうか。デッサン力はモノを見る力なんていいますが、コミュ力というのもまたそういうものなのではないでしょうか。オレが言ってること、わかる? わからんか。オレにもよくわからん。

 とりあえず、総合・推薦の試験のたびに「あ、そっち採るんだ。へー」という釈然としない気持ちにさせられることに疲れちゃった。一緒に仕事したいタイプが落ちて、仕事にならなそうなタイプが入っていく。オレって見る目がないのかなって毎年自問自答してる。そうやって毎年自問自答することに疲れちゃった。

7.2. 貴族のように振る舞え

 これから受験をすることになる学生のみなさんには、進路選択に迫られてなんとなーくで選ぶなら、法科や理科、工科の進路をおすすめします。多くの場合、国家資格が取得できますし、なにより本質的な部分で世の中のためになれると思います。

 いずれテプラまみれにされる、イメージをビジュアルで表現するデザインみたいなものは実家の太いお貴族さまの仕事です。
 デザイン興味あるけど主に金銭的な理由で公立(の長岡造形大学)以外は許可が出ない、みたいな選び方ならデザイン分野はやめたほうがいいです。経済的貧困は発想も貧困にするので、作り出すものもつまんねーです。なんか変なコンプレックスとかにじみ出ちゃうし。資産5000兆円作ってからまた出直してください。

 実際にはお金がないとしても資産5000兆円ある貴族のように振る舞える人なら問題ないです。それはそれでまた別の問題が起きるかも知れませんが、向き不向きでいったら向いてます。どの分野でもそういうところはあるかもしれませんが。

7.3. 課金オプションあります

 ところで、最初に長岡造形大学受験マニュアルをすべてオープンソースすると言ったな? あれはウソだ。

 いや、長岡造形大学を受験する際の基本的な考え方はここに書いたことがほとんどすべてです。
 それとはべつに長岡造形大学を受験する人で志望理由書や自己アピール用紙、課題製作、提案書などの追加情報がほしい人は課金してください。これまでに解かれた過去問や描かれたデッサンなどは弊塾のDiscordサーバで閲覧できます。やってみた過去問をアップしたり受験に関する質問を投げたりすると気が向いたときにOBがレスしてくれるかも。
 あーだこーだと積極的な指導をすることはもうありませんが、個人的に情報を集めて内情を想像することは好きなので、今後も長岡造形大学のウォッチは続けたいと思っています。そのため試験内容の報告および成績開示請求に協力的な人をとくに歓迎します。

 最後に。

 弊塾で学び、今、長岡造形大学で学んでいる皆。全国に散らばっていった皆。すでに学校を卒業し、社会人となっている皆。弊塾のすべてのOBたちの今後ますますの活躍と繁栄を願って、みなさんご一緒に!

 希望の未来へレディ・ゴーッ!!

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