※弊社記事はたぶんにPRが含まれますので
話半分で受け取ってください。

卒業しない時代

生涯趣味

 そんな中、ハナから卒業など関係ないカテゴリの趣味が注目されています。

 山ガール、宇宙ガール(そらがーる)、歴女、仏像女子

 最近よくテレビや雑誌などで見かけるようになったキーワードです。
 これらの趣味は、一昔前だったら中高年のイメージがあり、若いうちからこのテのものを趣味とか言い出すと、”ちょっと変わった人”な扱いを受けるようなものでした。合コンでは完全にキワモノ扱いされるジャンル。

 山に、宇宙に歴史に仏像。どのブームも女子に引っ張ってもらっている感がありますが、それらはメディアのつくった姿なので、だいたい同じくらいの男子ユーザーもいます。歴女とかいうけど、男は横山光輝の三国志とKOEIの信長の野望の洗礼を受けて大人になるんだ。

 ここであげた趣味に共通しているのは、人間がちょっとやそっとじゃコントロールできないような大きな流れの中に身を置いて、自分がちっぽけな存在だと認識できるところです。

 価値観の多様化、経済活動の長い停滞、隣で起きてるグローバル化。不安なことが沢山ある世の中。
 そんな時代だからこそ、自分自身を長い歴史の中に置いて、俯瞰してみる。今、身の回りに起きている出来事は、その長い歴史の中ではほんの一瞬でしかないということを感じることで、不安を取り除いたり、他人を許せるようになったりすることができます。

 そんな御託を並べなくとも、抗いがいようのない大きな流れの中に、自分を開放して委ねるというのは本当に気持ちがいい。

仏像ブームざっくり年表

 ここで、仏像ブームや寺カルチャーなどと言われるものに関連する事柄を、ざっくりと年表にまとめてみました。

時期 できごと
1919年
  • 和辻哲郎の『古寺巡礼』が発行。
1962年
  • 岡部伊都子の『観光バスの行かない… 埋もれた古寺』が発行。戦後の古寺観光、仏像巡礼ブームが起きた。
80年代後半
  • バブル景気。
1989年
  • 映画『ファンシィダンス』公開。寺の跡取りの主人公が禅宗寺院で修行生活を送る模様を、本木雅弘さんの主演で描く。監督は周防正行さん。
1993年
  • みうらじゅん氏といとうせいこう氏が共著で『見仏記』を出版。
2003年
  • モデルのはなさんが『ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう』を出版。
2004年
  • 超宗派仏教徒によるインターネット寺院『彼岸寺』が開山。
2005年
  • 東京国立博物館で『唐招提寺展』展開催。来場者約40万人。
2006年
  • 東京国立博物館で『仏像』展開催。来場者約34万人。
  • 新潟県立近代美術館で『新潟の仏像展』開催。
2007年
  • 東京・青山で、期間限定のカフェ『高野山カフェ』第一回オープン。5日間で約3300人を動員。
  • 5月から講談社が分冊百科『日本の仏像』を配本開始。1巻目は初版を23万5千部から25万部に増刷。
  • 廣瀬郁実さんが『仏像ガール®』としての活動を開始。
    (※2012年4月 仏像ガールとしての活動は終了したそうです。)
2008年
  • 東京国立博物館で『国宝 薬師寺展』開催。来場者約79万人。
  • 小学館がサライで『仏像の見方』を特集。
2009年
  • 東京国立博物館で『国宝 阿修羅展』開催。
    来場者は日本美術の展覧会としては過去最高の約94万6千人。1日平均約1万6千人の動員数は、英国の美術専門誌『The Art Newspaper』の発表によると、世界第一位だった。同時にみうらじゅん氏を会長とする『阿修羅ファンクラブ』が発足。約1万2千人の会員を集める。
  • 新潟県立近代美術館で『奈良の古寺と仏像展』開催。
  • 小学館がサライで『続・仏像の見方』を特集。前年の『仏像の見方』と合わせて32万部を販売。
  • マガジンハウスがブルータスで『仏像』を特集。11万部を販売。
  • 映画『禅 ZEN』公開。鎌倉時代初期の禅僧であり、曹洞宗の開祖である道元禅師の生涯を描く。主演は中村勘太郎さん。
  • 曹洞宗の若手僧侶で構成される「Shojin Project」が、長屋を改装した和風カフェ「nagaya cafeさと和」(文京区小石川)を舞台に、「ZEN」を体験できる期間限定イベント「東京禅僧茶房」を開催。会期中、200名を超える人々が来場。
  • 寺社仏閣ライター 坂原弘康氏がトークライブショー『仏像マニアックス』開始。
2011年
  • 東京国立博物館で『空海と密教美術』展開催。
  • 滋賀県の美術館、博物館が3館連携で『神仏います近江』展開催。

 併せてこの間の日本経済の流れを見るすと、実質GDP成長率は高度成長期では毎年10%を超えていましたが、バブル期の6%台を最後にその後は良くても数%、悪ければマイナス成長となっています。また、完全失業率を見ても、バブル期には2%ほどだったものがその崩壊によって上昇を続け、2001年には5%まで達しました。2009年には過去最高の5.7%となっています。
 その2009年には阿修羅展をきっかけに、かつてないほど仏像への注目が高まりました。

 『見仏記』の初版発行は90年台前半と思いの外早く、こうして年表に並べてみると、世の中に「仏像趣味は”有り”だな」と思わせたのは、実は、はなさんの存在が大きかったのではないかと思えてきます。

 みうら氏はアンダーグラウンド色が強いので、それよりも「お洒落でカワイイはなさんが仏像好きなんて言ってるんだから、仏像って素敵なものに違いない」という世の中の意識変化があったのでしょう。かくいう私も、初めて意識して買った仏像本は、はなさんの本でした。
 だってモテると思ったんだもん。俺はキワモノ扱いだったけど。

 さて、もっともらしく日本経済がどうとか言ってみたりもしましたが、結局のところ大した発見もできない私こそが小学校すら卒業できていない感じです。

関連する記事