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新潟で見ておきたい4組の仁王

にい”がた”の”ぶつ”ぞう「ガタブツ」

 新潟に限らず、地方のお寺で仏像を見ようとすると、京都や奈良などの観光客にむけてオープンになっているお寺とは違って、拝観をお願いしたりするのに少し手間がかかります。
 そんなわけで、仏像が気になりだしたあなたに、私がオススメするのは仁王めぐり。

 今回は、数あるガタブツ仁王の中から、やまざきセレクトで4組の仁王さんを紹介します。

前回記事|icoro : 仏像が気になりだしたあなたがはじめにやるといいこと

 そもそも日本人は、強いものや頼れるものというものを考えるときに、二人組というものになにやら思い入れがあるのではないかと感じています。
 古くは風神雷神や助さん格さん、あぶない刑事のダンディー鷹山にセクシー大下、ビーバップハイスクールのヒロシとトオルしかり、最近ではタッキー&翼や芦田愛菜ちゃんと鈴木福くんのユニットなど。どれも仁王信仰をモデルとしたものに違いありません。

 今回は細かいデータや情報は少し置いておいて、フィーリングな部分で楽しさを感じられるように新潟の仁王さんを紹介していきます。

真福寺(長岡市 小国町)

 さて、みなさんは”仁王”といったらどんな仏像を思い浮かべるでしょうか。恐らくは、日本でもっとも有名な仁王『東大寺の運慶作金剛力士像』のような、力強くたくましい筋骨隆々な姿をした仏像を思い浮かべるのではないでしょうか。

 長岡市小国町の真福寺には、そんな固定概念を打ち砕いてくれる仁王さんが居ます。

 こちらにいる仁王さんは、木喰(もくじき)作の高さ2mを超える仁王。木喰とは江戸時代に日本各地を巡りながら多くの仏像を残した遊行僧(ゆうぎょうそう)。新潟には数多くの木喰仏が残されているのですが、この真福寺の仁王は新潟では唯一の木喰仁王像。
 木喰仏の特徴は、微笑仏(みしょうぶつ)とも呼ばれるとおり柔和な笑顔を浮かべた丸く、温かなイメージ。この仁王像にもその特徴がいかんなく発揮されてます。

真福寺木喰仁王阿形
真福寺木喰仁王吽形

 口を開けた阿形は明らかに笑っています。一般的に阿形の仁王は、怒りの表情を顕わにしたものがほとんどなのですが、この仁王さんは竹中直人の”笑いながら怒る人”なのでしょうか。
 そして、口を閉じた吽形。これは相撲取りとしかいいようがありません。往年の名力士、高見山大五郎がモデルとなっているとしか考えられないモミアゲです。

 微笑仏...見ているこちらも思わずニッコリしてしまうような、そんな仁王さんです。

見玉不動尊(津南町)

 中魚沼郡津南町の見玉不動尊には、全身ティッシュまみれの仁王さんが居ます。

見玉不動尊仁王

 仁王には、一般的にその力強い体格にあやかって健康を祈ったり、力が強くなれるように祈る信仰があります。

 力紙(ちからがみ)と呼ばれるちぎった紙を、口の中で噛んでつばで丸めて、自分の身体の悪い部分や強くしたい部分を狙い、仁王に投げつける。そして、紙が当たると病気がなおったり強くなると考えられています。
 どの仁王にもこういった信仰が残っているわけではないのですが、この見玉不動尊の仁王は全身ティッシュまみれなのです。

 最初は公式なお札のような紙があって、それを投げつけるのかとも思っていたのですが、売店のおばあちゃん情報によると、結構昔から投げつけるものは、半公式でティッシュになっているとのこと。
 この見玉不動尊では、境内の中を小さな滝が流れているのですが、参拝者は自分の身体の痛いところを撫でた紙(半公式でティッシュ)を、その滝の清水で濡らして仁王に投げつけ、痛みを救ってもらうという習慣が古くから残っています。
 こういった紙(ここでは半公式でティッシュ)を投げつけられた仁王というのは、他にも新発田市の菅谷不動尊などでも見ることができます。

 売店では、お湯を入れると不動尊の絵に変わるという『絵の出る湯呑み』が販売されています。境内には、この『絵の出る湯呑み』を宣伝した1m強の大きな立て看板もあり、かなりの主力商品だと思われます。お立ち寄りの際はこちらもぜひご確認を。

大泉寺(柏崎市)

 柏崎市の大泉寺には、「稲刈り仁王」の伝説が残る仁王さんが居ます。

 その昔、大清水観音の地元信者が稲刈り前に病気にかかって困っていると「観音に頼まれた」という仁王2人がやってきました。仁王たちは稲刈りを済ませ、お礼に渡された稲を担いで帰ったのですが、途中で貧しい家々に配ったため観音様に渡す分がなくなってしまった。しかし、その話しを聞いた観音様はそれを大層褒めたといわれています。

大泉寺仁王

 この仁王像は、2007年の中越沖地震で激しく損傷してしまったのですが、2010年秋に阿形のみ修理が完了しました。ちなみに吽形のほうは、私が2011年の1月に行った時点で修復はまだまだ手付かずのまま。コルセットをはめられ、倒れてしまわないようにレバーブロックで天井の梁から吊られていました。かなり痛々しかったのを覚えています。

 どうも困っている人の前に現れた2人の仁王などというと、やはりあぶない刑事を思い出してしまいます。中条静夫扮する観音様に司令を言い渡された、ユージ(阿形)とタカ(吽形)が村娘のためにせっせと稲刈りをする。エンディングでは、刈り終えた稲を銀星会の車とともに爆破させてしまったユージとタカに、中条静夫が「コラァ!大下っ!鷹山っ!」と喝を入れる。放送タイトルはもちろん2文字で『仁王』。

 この仁王さん、本格的な修復は約220年ぶりだったそうなのですが、長い歴史の中で肩の周りに筋肉が付け加えられていたり手の向きが変えられていたりと、造られた当初の姿とは随分と違った形になっていたようです。今回の修復ではそれを元に戻し、本来の姿に戻したのだとか。観音堂の中には、普段見る機会のあまりないこの修復時の様子も、パネルで展示されています。

寛益寺(長岡市逆谷)

 長岡市三島にある菅益寺には、股くぐりのできる仁王さんが居ます。この仁王さんは高さ3mを超え、筋骨隆々で太い腕と太い首、そしてその全体重を支えるべく非常に大きな足をしていいます。

寛益寺仁王

 ご住職にお願いをすると、他のお寺ではなかなか入ることのできない、仁王門の中に入れていただくことができます。狭い格子の部屋で、下から見上げる仁王はすごい迫力なのですが、この仁王さんの足元は大きく開かれていて屈んだ状態で股の下をくぐり抜けることができるのです。この仁王さんの股をくぐると大変なご利益があるらしく、周辺に住んでいる皆さんは子供のころに親に連れられてきては、健康を祈りながら股くぐりをするそうです。

 どうも股をくぐるなどというと、やはりビーバップハイスクールなどの往年のヤンキー漫画を思い出してしまいます。

 「やべーボンタン狩られたー」

 などと一人芝居をうちながら、くぐってみるのはいかがでしょうか。クローズとか近代的な漫画でのたとえ話しは無理。

沢山見るとますます面白くなる

 さて、いくつか新潟の代表的な仁王さんを紹介してみました。

 仁王さんは手軽に見ることができるので、ぜひ数をこなしてみてください。沢山見ることによって、ますます面白さが増してきます。
 例えば、小千谷の慈眼寺に居る仁王さんは、寛益寺の仁王さんとまったく同じポーズをしているのですね。こんなところから、「慈眼寺の仁王さんは、寛益寺の仁王をモデルにして作られたのではないか?」と、考えることもできます。

 新潟は食べ物やお酒の大変美味しいところです。美味しいご飯を食べにいくついでに、酒蔵見学のついでに、ちょっと付近のお寺の仁王門を覗いてみてはいかがでしょうか。

参考サイト

真福寺

所在地長岡市 小国町小国沢2421

見玉不動尊

所在地中魚沼郡津南町見玉

大泉寺

所在地柏崎市大清水1502

寛益寺

所在地長岡市逆谷2575

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