寺泊水族博物館にはシロナガスクジラの生殖器(ペニス)があります。村上春樹の新作発売記念。
ひっそりとした資料展示室に、それは置いてあります。村上春樹の『羊を巡る冒険』を思い出さずにいられません。
もちろん水族館には鯨はいない。鯨はあまりにも大きすぎて、水族館をつぶしてまるまるひとつの水槽にしたところでそれを飼うことはできないのだ。そのかわりに水族館には鯨のペニスが置いてあった。まあいわば代用品だ。そんなわけで、僕は感じやすい少年期を通じて本物の鯨を見るかわりに鯨のペニスを眺めつづけた。冷やりとした水族館的通路の散歩に飽きると、僕はひっそりとしずまりかえった天井の高い展示室のソファーに座り、鯨のペニスの前でぼんやりと何時間かを過ごした。羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)
寺泊水族博物館の展示室にソファーはありませんし、たぶん、小説に出てくる水族館ほど天井も高くありません。
水族館がどんなに混んでいるときでも、この展示室だけは世界から隔離されたかのように静かです。ここだけ時間が止まっているような感じすらします。この空気も、なにか村上春樹的なものを感じさせます。
なぜかこれにだけ、なにか意味ありげな詩が書かれています。
その神は南氷洋の雄クジラ
腰のあたりに静まりて 種たやさじとかむりふり
つとめしいさを人よ忘るな
どこかから引用したのか、誰かの作ったものなのか、記述がないため、詳細不明です。
この展示室には「ナガスクジラの脊椎」も展示されています。
謎のクジラの詩といい、この雰囲気といい、この展示室を企画した人は村上春樹ファンなんじゃないか?という気さえしてくる寺泊水族博物館の資料展示室。春樹ファンは一度訪れてみてはいかがでしょうか。
寺泊水族博物館
所在地 | 新潟県長岡市寺泊花立9353-158 |
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開館時間 | 9:00-17:00(入館は16:30まで) |
TEL/FAX | 0258-75-4936 |
ウェブサイト | http://www.aquarium-teradomari.jp/ |