
敢えて言おう。Aマウントは死んだ。
先日、メインで使っているカメラ SONY α55 (SLT-A55VL) がカメラエラーを吐いて動かなくなりました。どうもαはカメラエラーを吐いて亡くなる血継限界があるようです。
修理も考えましたが、調べてみたらこの機種は2019年末で部品保有期間が終了していました。部品の在庫がなければ修理ができない可能性があります。仮に修理できた場合、技術料だけで1.5万円かかります。でも、その技術料と同じくらいの値段で中古のα55が買えるのよね……そしたらいくらか足してミラーレスでも……
などと考えながら、久しぶりにαのサイトを見てみたら、Eマウント機の圧がすごいんじゃあ……!
ソニーの一眼(レフ)カメラ αシリーズになじみのない人のために補足すると、αシリーズのレンズの規格にはAマウントとEマウントの2種類があります。
Aマウントはミノルタから引き継がれたレンズマウント(αシリーズはもともとミノルタの一眼レフブランド。いろいろあって今はソニーがαシリーズを引き継いでいます)で、Eマウントはミラーレス一眼用のマウントとして2010年にソニーが発表した新しいマウントです。
ちなみに「Eマウント」という名前はフランジバック長(マウント面から撮像素子までの長さ)が 18mm (Eighteen millimeter) であることからきているらしいです。ソースはインターネット。
Eマウント登場当初は35mmフルサイズセンサー機はAマウント、ミラーレスAPS-Cセンサー機ならEマウントみたいな雰囲気がありました。そんなわけで「次買い換えるときはミラーレスかな」なんてなんとなく思っていたのですが、今回ウェブサイトを見てみたら……なんか……製品ラインアップにEマウントしかないんですけど……
最初に出てくるのがフルサイズEマウント機のα7・α9シリーズ。次がAPS-CサイズEマウント機のα5000・α6000シリーズ。Aマウント機はというと、2014年に発売されたα77IIと2016年に発売されたα99IIのわずかふたつだけが(まるでアンケが振るわないジャンプ作品のように)下のほうにひっそりと掲載されているだけでした。

カメラ本体に掲載されているのはEマウント機ばかり。メニューの順番もEマウントが先になっている……
ソニーのミラーレスに勢いがあるのはなんとなく知ってたけど、知らない間にまさかこんなことになっていたとは……
もしかしてAマウントレンズ死んでまうの? と思ってインターネッツでα界隈を探ってみたところ、やはりここ数年、新しいAマウント機が出ていないこともあって「Aマウントは死んだ!」「いやまだ死んでない!」と葛藤するαユーザの姿が見られました。それもまあα99IIが発売された2016年前後の話で、それ以降はもう諦めの雰囲気が漂っています。
Eマウントの時代

「修理するなら中古でも……」「いやそれなら……」「だったら……」という思考のリーンカーネーションを幾度も繰り返した末、100万回目にようやくEマウントのα6400 (ILCE-6400) を購入しました。
別にこの機会にキヤノンとかニコンとかに乗り換えしてもよかったのですが、ミラーレスはソニーが一人勝ちみたいな雰囲気だったので、結局Eマウントαになりました。
そして、今回実際にEマウントを手にしてみてわかったことがあります。それは……
これもうソニーはAマウントに戻れねーな?
電子機器なレンズ SELP1650

レンズキットでついてくるEマウントレンズ SELP1650 はEマウントレンズでできることの見本みたいなレンズです。
ズームリングなんて飾りです
例えば、SELP1650 のズームリングはただのジョグダイヤル(懐かしい)です。ズームリングを動かすとそれにあわせてレンズ内部でモーターが動いて鏡筒を前後に動かします。そのため、電源が入ってない状態でズームリングを回してもレンズの鏡筒はピクリとも動きません。
また、レンズ横にはW-Tのスイッチがあり、このスイッチでもズーム操作ができるようになっています。これもう完全にハンディカムの操作感!
ズームリングでフォーカスもします
さらにズームリングはフォーカスリングを兼ねています。フォーカスをマニュアルで合わせたいときはカメラ本体にあるAF/MFボタンを押しながらズームリングを回すことでフォーカスを調整することができるようになっています。
これまではAF(オートフォーカス)だとAFしかできなかったのに対して、EマウントではAFしたうえでさらにマニュアルでも調整できるようになっています。調整するときはフォーカスが当たっている部分が拡大される便利機能付き。
スマホでコントロールできる
と言う感じで、SELP1650 はもはやレンズと言うよりそれ自体が電子機器です。レンズの形をした電子機器です。このレンズの電子機器化により、スマホからカメラを制御して撮影をするということもできるようになっています。別途リモコンを用意しなくてもスマホがあれば遠隔撮影ができます。しかも絵をたしかめながら。ズームをコントロールすることも可能です。

正直、UIに関してはカメラもアプリも「20世紀で時間止まってんの?」って感じです。
もうAマウントには戻れない
このようにAマウントとEマウントは単純にフランジバック長が違うだけではなく、レンズと本体間でやりとりできる情報量が全然違います。
Eマウントがスマホなら、Aマウントは黒電話。Eマウントが電気自動車なら、Aマウントはガソリンエンジン車。それがEマウントを使ってみた印象です。まだAマウントしか触ったことのない人はぜひお店で手に取っていただきたい。
スマホが一般的になったように、20年後はガソリン車がなくなると言われるように、おそらく世の中からAマウントは失われ、Eマウントだけになるでしょう。
もちろん、Aマウントにも優位性がある部分はあります。ただそれは、黒電話は停電しても使えるとか、ガソリン車のほうが航続距離が長いとか、手打ちのほうがバーコードより速くレジ打ちできるとか、土鍋のほうがごはんがおいしく炊けるとか、そういう次元の話です。
残念ながら(?)AマウントでできることはだいたいEマウントでも(場合によってはAマウントよりも簡単に)できます。しかし逆はそれほど多くありません。Eマウントは事実上Aマウントの上位互換であり、メーカー的にはいまさらAマウント製品を作るなら、そのリソースでEマウント製品を作ったほうがいいだろ、となるだろうことは想像に難くありません。
Aマウント製品を持ってる人はまだ売れるうちに売却したほうがいいぞ。
入門にはいいかもしれない

こんな状況もあってか、今、Aマウントのαは本体もレンズもめちゃ安です。APS-Cサイズ最新ひとつ前のAマウント機 α77 でも3万円から手に入ります。レンズに至っては数千円で中古の便利ズームが手に入ります。とりあえず一眼レフを手にしたいという人には気軽に手を出せてしまえるカメラと言えるでしょう。
まかりまちがってAマウントレンズを買いそろえてしまった場合でもA/Eマウント変換アダプタ LA-EA3 や LA-EA4 を使えば、Eマウント機で引き続きAマウントレンズを使うこともできます(一部機能制限がある場合あり。またLA-EA3は最近生産終了になりました)。
かくいう私も α55 がお亡くなりになってから、α100 (DSLR-A100) を引っ張り出して使ってみてます。
α100 は αがソニーに引き継がれて最初に発売された一眼レフであり、自分が初めて手にした一眼レフでもあります(といっても中身はまだほとんどコニカミノルタのα)。画素数は1020万画素。ISOは最大1600。対応メディアはCFカードのみ(使えるメモリ容量は16GBくらいが限界らしい)。今となってはスマホのカメラにも劣るスペックですが、これでも2006年発売当時はプロ機にも劣らないとか言われていたの……
軽く骨董品のカメラですが、その反面、
- 機械的にも電気的にも構造が単純で故障が少ない。
- 光学ファインダーしかない(ライブビューもない)のでバッテリーがすごい保つ。
- ミノルタ時代から数多発売されてきたAマウントレンズがそのまま使える。
- Aマウントレンズ安い。
といったメリットもあります。今のカメラに比べれば機能も少ないですが、マニュアルメインで使うなら十分です。むしろメニューが少ないぶん扱いやすい。

さあ、今日からあなたもAマウントの沼へ(ズブズブズブ……