DQNネームだキラキラネームだと騒がれている昨今の子供の名前。ちょっと珍しい名前を持つ私が30年生きてきて感じたこと、良かったこと、苦労したことをつらつらと書いてみたいと思います。
当て字や英語読みなど、最近のキラキラとしたお子様の名前の話題になると「子どもがかわいそう!」「就活に影響あるんじゃ?」等々、いろんな声が聞こえてきます。自分、あんまりいない珍しい名前でして。同じ読みの人には過去2回あったことがありますが、同じ漢字の人にはまだ会ったことがないです。
三十路に突入した自分も結婚・出産のお年頃。この名前で30年生きてみて、感じたこと、メリット・デメリット、だからこそ自分の子どもの名付けはこうしたい! というあたりのまとめです。
今回、実名を晒します
よく2ch等の掲示板で「DQNネームなんだけど質問ある?」みたいなスレが立ちますが、珍しい名前だと個人が特定される危険性が高いため、名前を出している人は少ないです。そうするとイマイチ想像できずモヤモヤしちゃうわけで。というわけで今回、私は実名を晒します。
どうも、千羽矢と申します。
はいどうも、自分「千羽矢」です。「ちはや」と読みます。他でも名前出してるので問題なしです。漫画の「アーシアン」やら「ちはやふる」やらアイマスやらを思い浮かべる方もいるかも。
そんな感じで今ではそこまで珍しいという印象は持たれない名前になりましたが、自分が小学生の頃は女子の半数は「子」が付く名前。その中で「千羽矢」はかなり目立つ名前でした。ちなみに昭和50年代後半、1980年前半生まれです。名簿もまだ男女別の時代。
今回は自分の名前・漢字に対して思ったことを書きたいと思うので、全国の「ちはや」さんを不快にさせちゃったらごめんなさい。ひらがなだと響き、字面ともに柔らかいイメージで、男の子・女の子ともに使えるいい名前だと思いますよ。Facebookを見るとちらほらいらっしゃいますね。「全国ちはや会」開催しませんか。
珍しい名前のメリット・デメリット
自分の名前のメリット
珍しい名前にメリットがないわけではありません。30年間で感じたメリットはこんな感じ。
- 人に名前を覚えてもらいやすい
- 医療機関、宿などで「素敵なお名前ですね」と言ってもらえることがある
- 名前負けしないようにちゃんと生きようと(ごくたまーに、時々)思う
- 結婚等で名字が変わった場合、持っていけるのは名前だけ。その名前が自分だけのものである感じがうれしい。
自分の名前のデメリット
やはりデメリットもあります。自分が感じるのは以下のような点です。
- 初対面で読んでもらえない、毎回読み方を聞かれる
- 響きで決めた名前のため、名前に込められた意味がない
- 観光地で売ってるネーム入りタオル、キーホルダー等に自分の名前がない
- 字面から男性と間違われやすい
- 個人を特定されやすい、プライバシーがない
- 電話口で名前を伝えるのにすごく苦労する
- 宗教関連を疑われる
- 結婚相手の家族、親族が呼びにくそう
こんな感じですかねー。自分の名前は覚えてもらいやすいですが、同じように珍しい名前でも覚えにくい名前ってあるわけで。響きも珍しく、漢字も「その字でそう読むの!?」という知人の子の名前、どうしても覚えられません……
という感じで「珍しい名前」といっても、名前によってメリット・デメリットは変わってくるかもしれませんので参考まで。
さてさて、みなさんが詳しく知りたいのはデメリットかと。その辺について詳しく、そしてこうだったらいいんじゃない? というのを書きたいと思います。珍しい名前だとこんなことをよく聞かれるよ! 子どもはこんな思いをするよ! というあたりを感じてもらえればと思います。
初対面で読んでもらえない名前は辛い
当て字とはいえ、漢字のぶった切りがない「千羽矢」は比較的読んでもらえる方です。でも5人中4人は読めない、読めても「ち…は…や……さんでいいんですかね?」という感じで聞かれます。困らせてすみません……
当て字だとしても読める字と読めない字があります。もう当て字というレベルを超越しちゃってるのが昨今のDQNネーム(キラキラネーム)なわけですが……名付けの際はせめて読みやすい当て字にしてあげてください。
ちなみに「自分の名前が珍しい」というのは保育園に入る頃(4歳くらい)にはもう理解していました。子どもって案外早く人との違いに気付くもんです。ここで「お名前、なんて読むのかな?」を繰り返され「へー……いいお名前ねぇ(うわぁ)……」みたいな反応をされたら「自分の名前、嫌い!」となる可能性は充分にあります。今ならわかる、「ハイカラなお名前ね」「いまどきの名前だね」あたりの反応は、相手が引いていたんだと……!
幸いなことに自分は小中学校と人数が少ない学校だったので、学年が変わっても同級生みんなが名前を知っている、新任の先生でなければ先生も知っているという環境で育つことができたので「何回も読み方を聞かれる」という状況は回避することができました。たぶんこれは希な環境です。人数の多い普通の学校であればもっと大変だったと思います。
名前によっては萎縮してしまって初対面でうまく話せなくなったり、自分に自信が持てなくなり、自己肯定感が低くなったりと、人格形成に大きく影響することも考えられます。またいじめやからかいに繋がる可能性も。名前ひとつでかなりのリスクを背負います。
名前に込められた意味がない
珍しい名前だと「どういう意味で付けられた名前なの?」と聞かれることも多いです。親に聞いたところ「なんか昔読んだ本に出てきて、その漢字は嫌だったから別の漢字にした」という話でした。完璧に響きで決めてます。
一般的な名前の人よりも名前の由来を聞かれることが多いのに、由来がないという微妙な感じ……話が広がらなくて申し訳ない気持ちになります。これが繰り返されると「あーまたその話題……放っておいて欲しい……」となります。
ネーム入りタオル、キーホルダー等に自分の名前がない
観光地に行くとお土産にネーム入りのハンドタオルとか箸やスプーンが売ってますよね。あの中に自分の名前がないってのは子どもの頃はちょっと嫌なことでした。「そんなちっちゃいことで?」と思われそうですが、グループ意識の強い女子の中でおそろいが持てないというのはちょっとしたストレスなのです。
でも最近のお子さんの名前は多様化しているので、そんな悩みはもうないかも。まぁ、そんな風に大人が想像しない所で子どもはストレスを感じます。
字面から男性と間違われやすい
男性名でよく使われる「矢」が最後に付いているため、病院や薬局などで「あれ? 男性じゃないの?」みたいな感じでよく確認されます。「かおる」さん、「ひろみ」さん、「優」さん等、男性・女性どちらにもある名前と同じじゃない? と思われそうですが、どちらでもあり得る名前は相手もそのつもりなので案外問題はないんです。性別と逆だと、「あれ? まさか取り違え!?」という感じになっちゃうのだと思われます。カルテを二度見、三度見されるとちょっと辛い。「あ、男性とよく間違われるんですよー」とこっちから言っちゃいます。
同じように、男女で色が違うものなどを間違えて渡されることも何回かありました。学用品の取り替えとか面倒くさかったです。このあたりで親もちょっと後悔したんじゃないかと。それと教材勧誘の電話。「千羽矢くんはいらっしゃいますか?」とよく言われました。テレアポの方を困らせてごめんなさい。そういえば成人式の振り袖のDMが来ていない気がするぞ!?
あ、あとTSUTAYAカード提示すると「カードはご本人様じゃないと……」的なことを言われることがあるのですが、男性からカードを借りてきたと思われてますかねこれ?
ネットでもリアルでも個人を特定されやすい
アルバイトでレジ打ちをした時、レジ担当としてレシートにフルネーム(しかも漢字)で名前が記載されたことがありました。これ、本当にいやでした。知らない人に自分の珍しい名前を知られるということにすごく嫌悪感があるのです。普通の人以上に自分の名前に対して個人情報的な感覚を持っているのだと思われます。
今のご時世だと、なにかあればネットで簡単に特定されてしまうのも怖い点。一般的な名前だと名前と居住地・出身地などで絞り込まないと探せませんが、珍しい名前の人は名前だけで簡単にみつかります。あと取材を受けて新聞に名前が載った時はいろんな人にすぐに気付かれました。犯罪は絶対に犯せない! そう思いました。
また、珍しい名前だと「○○さんのお子さんでしょ?」「○○さんちのちはやちゃんだよね?」という感じで、知らない人から声をかけられることも。家族・親族といい関係が続いていればいいのですが、いろんなおうちがありますからね……匿名性が低い名前は、なにかマイナスなことがあった時にずっとついて回ります。たとえ名字が変わっても、名前が珍しければずっと続きます。病院で名前を呼ばれれば一発でバレます。法事の座席の名前、結婚式の座席の名前等々……「もっと匿名性の高い名前が良かった」と思うこと、けっこうあります。
電話口や口頭で名前を伝えにくい
自分の名前で一番いやな点、それは電話もしくは口頭で名乗る時なのです。珍しい名前だと電話口で名前を伝えるのが非常に大変なのです! できれば避けたい。名字だけにしてー! と心の中で祈ってます。
「下のお名前も頂戴できますか?」「えっと、ちはやです。」「ちはるさんですね。」「いえ、ちは、や! です。」「はい?」「ち! は! や! です。」「はやし様?」これ、実際に体験したやり取りです。泣きたい。
「相手の名前を間違えるのは失礼」ということで、相手も聞き返しにくそうなのが申し訳ない。大人になってからの方が電話で名乗ることが多いので、この悩みは一生付いて回るものと覚悟を決めています。つらい。
漢字を伝えやすいかどうかも重要
電話口で「千羽矢」という漢字を伝える時は「チは漢数字の千、一十百千の千に、ハは羽根の羽・左右が同じアレですね、ヤは弓矢の矢です。」という風に伝えています。私の名前の漢字は伝えやすい方だと思います。むしろ読みは珍しくないけど漢字が珍しい妹の方が苦労しています……名付けの時は是非、相手に伝えやすい漢字をチョイスして欲しいと思うのです。「名前がわかりにくい」「漢字もわかりにくい」の二重苦はかなーりキツイです。そんな苦しみを背負わせないであげて!
最近は会員カードなどの入会手続きが手書きではなく、タブレットなどの端末でやることも増えてきました。読みは普通でも、珍しい漢字、ひねった漢字を使うとなかなかその漢字が出てこなくて大変です。一発とまではいかなくとも、簡単に変換できる漢字がいいですよ。
宗教関係を疑われる
私の場合「家はお寺とか?」と聞かれることが多いです。お寺の子って珍しい名前付けられがち? 「ちはや」は神社の巫女さんの装束にあるので、「神社の子?」の方がしっくり来るんじゃ? と気付いたのは最近のこと。
同じように珍しい名前を持つ知人に話を聞いたところ、就職活動の時に名前の字面から「キリスト教徒……とか? うちの職場は宗教系の方はちょっと……」と言われたことがあるそうです。宗教を連想・イメージさせる名前は、就職や結婚で不利になる可能性はあると思います。
結婚相手の家族、親族が呼びにくそう
先日、結婚を考えている人の親戚にご挨拶する機会がありまして。こういう時に名乗るのは下の名前です。下の名前だけで勝負するわけです。しかも口頭で名前を伝えるわけです! もうおわかりでしょう。つらい! もうやだ逃げたい! 名刺出させてくれ!
そして結婚した場合、相手の親からは「○○さん」と下の名前で呼ばれる可能性が高いわけで。すみません、呼びにくいですよねー……
ストレートに言いますと、やはり珍妙な名前は出自・家柄、親の人格を疑われます。どんなに真面目に誠実に生きてきても、珍妙な名前だとその全てが台無しにされます。初対面の印象は自分の努力でどうにかできても、名前で印象ががた落ちする可能性もあり。
「○○さん、今後ともよろしくね!」と気軽に言ってもらえる、発音しやすい名前だといいなーと思う今日この頃。女の子の名付けの際には、「結婚相手の親族の前で名前を言ったときにどう思われるか、すぐ伝わる名前か」を想像して名付けるのも良さそうです。
この名前をつけた両親について
実は友人たちに止められていた
子供に「千羽矢」という名前を付ける時、両親は友人から「そんな名前だと子どもがいじめられるよ」と反対されたそうです。止めてくれる友人や親族、大事ですね。それでもうちの親は止めなかったわけですが……
幸いなことに私は名前でいじめられることもなく、健やかに育つことができました。思い返すと成長が早く体格が良かったため、スポーツはとりあえずできる、結果、わりとクラスの中心の方にいられたのでイジメの対象にならずに済んだのだと思います。あと、目が細いため、名前以上に顔をいじられてましたね(遠い目)
その名前を付けた親ってどんな人?
母は年の離れた姉に名前を付けてもらったそうで、「友達に○○子というみんなに好かれているいい子がいたから、その子と同じ名前に。」という理由で名付けられたとのこと。「なんだか自分には似合わない」と母は自分自身の名前を気に入っていない様子です。このあたりの思いから私にちょっと珍しい、その子だけのオンリーワンな名前を付けてくれたのだと思います。ちなみに父は昔やんちゃしてたらしい。うーん、DQNネームの素質を持った家庭に生まれてしまった模様……
妹の名前は響きは普通、漢字が珍しい
じつは6歳下の妹の名前は私が決めました。親に「妹が生まれるけど、なんていう名前がいいと思う? おんなじ「千」で始まる名前がいいと思うんだけど。」と聞かれ、スッと出てきたものがそのまま採用されました。そんな流れから妹の名前は響きは一般的。ですが、漢字はちょっと珍しいものに。漢字の方で我が両親のセンスが発揮された形です……でも妹はその名前を気に入っているそうなので良しとします。
そんな感じ
以上のような経験から、自分の子どもには以下のような点に気を付けた名前を付けてあげたいと思っています。
- 読みやすい名前か
- 読み間違えが少ない名前か
- 性別と逆になっていないか
- 相手が聞き取りやすいか
- 漢字が伝えやすいか
- 宗教などのイメージがないか
と思っていてもよくわからなくなっちゃうのがマタニティ・ハイなのだろうか……
その子の性格によるところも大きいと思われます
「キラキラネームはやめておいた方がいいよ」的なスタンスで書こうと思っていたのですが、改めて自分の半生を振り返るとギリギリアウトながらも絶妙なラインの名前を付けてもらえたなーと思います。まぁしなくていい苦労は多いのは事実なんですけども。
そう思えるのは自分の性格と生活スタイルによるところが大きいと思います。自営業的な仕事、性格も基本おしゃべり。これがもっと堅い仕事で人と話すのが苦手な性格だったら辛いと思います。もはや一生続く拷問です。
現在、名刺は自分のところで作っているので、ローマ字で読み仮名をつけることで読みにくさは解消できています。でも「ペンネームですか?」とは時々聞かれます。「本名なんですよー。名前だけは目立つんです!」と笑い飛ばせる性格で良かったです。
普通の名前が良いとは思うのですが、「子が付く自分の名前が嫌い」という高校生に会ったことがあります。将来その名前を気に入ってくれるかどうかなんて、なかなかわかんないですよね。そこで最後のまとめです。
結論:周りを困惑させる名前は避けましょう
珍しい名前・読めない名前って周りを困らせるのです。その結果、本人が困るのです。親の思い、願いを詰め込みすぎて、その子とその子に関わる全ての人を困らせることがないように。名付けの際にはそのことをお忘れなく、というあたりで終わりにしたいと思います。
他にない名前、オンリーワンな名前は苦労するぞ!
追記
その後、無事に入籍・結婚とあいなりました。同じ市内で結婚・引っ越しをしたのですが、そこでちょっとした出来事が。表札を見て私に気付いた人に「千羽矢さんここに住んでらっしゃるの!? 私、お母さんにとってもお世話になってー!」と突然、家に突撃を受けました……相手は確実に善意、そしてうれしさゆえの行動なのはわかりますが……嫁ぎ先にも申し訳ないのでご遠慮頂きたく……しかも私は面識ないですし……
この一件で「名字が変わっても珍しい名前だと匿名性は得られない、すぐ特定される」という現実を突きつけられました。一般的な名前なら名字が変わったら気付かれないことが多いと思います。そんな感じで自分も名字が変わったら一度リセットされ、ちょっとは楽に生活ができるんじゃないかと期待してたのです……無理でした……
上でも書いたように仕事面での苦労はありませんが、結婚してから苦労が続いております。これ、子供が生まれたらまた苦労するパターン??
追記その2
ついでに。最近のキラキラネームや改名が増えているという話題について。クローズアップ現代でキラキラネームや改名についての特集があったりと注目されている昨今。キラキラネームの子を見ると「おおぅ……これは私より辛いぞ……がんばって生きてね……」という気持ちになります。同時に「あー親がねー(察し)」という気持ちにも。そして「自分の名前、気に入っています!」という言葉にも「へぇー……」と冷めた気持ちが。
その名前を気に入っていたとしてもイタイ感じがしちゃうんだ! どう転んでもプラスにならないこの感じ! 上で「ギリギリアウトながらも絶妙なラインの名前を付けてもらえたなーと思います」と書きましたが、これもイタく思えてくる! もしや自分、コンプレックスがねじ曲がって他人の名前にも厳しくなっている!? そんな感じで、抱えなくていいものを抱えてグルグルしてます。