日食も見て、峠の釜めしも食べたので、ついでに美ヶ原でも行ってみようか。ということで、長野県の美ヶ原高原まで足を伸ばしてみました。

新潟県外に出ると、新潟が如何に平坦な土地なのかを思い知らされます。
群馬・長野あたりが特にそうなのかもしれませんが、高度700mなんて当たり前。山の裾野に家が密集して建っていたり、道はアップダウンを繰り返し、高速を走ればいつの間にか山の上。
その景色は、家の前に限りない田んぼが広がる土地に住んでいる人間にすると不思議で、ちょっとしたファンタジーにも思えたりします。
逆に、県外の人が新潟に来ると、この何処までも続く平坦な土地(しかもそのほとんどが田んぼ)という景色は、不思議な光景に映るのかもしれません。
県外の道を走ると、いつもそんなことを思います。
え、震災後ですか……?
碓氷軽井沢ICを通り過ぎ、いくつかのトンネルを抜けると、左手に佐久盆地が広がります。佐久ICで高速を降り、長野ナンバーのクソ軽トラに煽られつつ、国道142号を西へ。道の見通しはすっごい良いのですが、バス停のような、退避出来る場所が少なくて困ります。
途中で県道178号に入り、美ヶ原に向かうコースへ。看板出てたし、有名な観光地だし、道は悪くないだろうと思ったら、「え、震災後ですか……?」と思うような道でした。。
ビーナスライン自体は綺麗で走りやすいのですが、そこをちょっと外れると、急勾配だわ、道幅は狭いわ、アスファルトはひび割れてるわ、崩れてるわ、という道になるみたいです。美ヶ原に行くなら、ビーナスラインから外れちゃダメ。。外れるなら、悪路を覚悟しなきゃダメ。。

急勾配、急カーブを(車の心配しつつ)上ると、ある高度から突然背の高い木がなくなり、目の前が開けます。
大きな雲の固まりが空を速い速度で流れていき、日食後の太陽が隠れたり現れたりを繰り返していました。



何もないところ
観光案内の地図によると「美しの塔」まで20分ほど。雲は多いものの、雨が降る様子はないので、美しの塔まで歩いてみることにしました。
歩いていると、登山でもするような格好をした年輩の団体が「こんにちはー」と登山道でも歩いているかのような調子で挨拶しながらすれ違っていきます。しかし、その手には、たぶん昼ご飯と思われる折り詰めの袋が下がっていて、そのちぐはぐさが何とも観光客っぽい感じです。
かと思えば、ツーリングの休憩ついでに散歩してます、と言うような格好の人や、町にデートにでも行くような気軽さで散歩しているカップルがいたりと、訪れる人もいろいろです。
かくいう自分達は、山をなめきっているのでいつもと同じ格好でした。ちょっと寒かったので上着を羽織ったくらい。


美ヶ原には10年以上前にも来たことがあります。その時の印象は「何もないところ」でした。今、美ヶ原に行ったら違う印象を受けるのだろうか、とやや期待したりもしたのですが、やっぱり「何もないところ」でした。





その風景はちょっと外国のようでもあり、WindowsXPの壁紙のようでもあり。
そんな風景の中に「美しの塔」を建てちゃうのってどうなんだろうか、とも思っていましたが、実際、見てみればそれほどの違和感もありません。
散歩気分で歩ける距離に美しの塔があることで、美ヶ原を歩いてみる動機にもなります。調べてみたら、美しの塔はただのオブジェではなく、霧鐘を備えた避難塔らしいです。
美ヶ原高原のシンボル「美しの塔」。
美ヶ原は濃霧になることが多く、遭難が多発しました。その対策の一つとして霧鐘を備えた避難塔が「美しの塔」です。
1954年(昭和29年)の秋に高原の中央部に設置され、1983年(昭和58年)に改築されました。
「いやー、声かけてみるもんだね」
ウシに声を掛けたりしながら美しの塔までふらふらと歩き、意味もなく鐘を鳴らしてみたり、美しの塔に埋め込まれてる碑文を音読してみたり。あとは高原を渡る風に吹かれながら、遠くの風景を眺めたりしていましたが、いよいよそれにも飽きてきたので車に戻ることにしました。


途中でトイレついでに売店へ。ちなみにトイレは有料です。
売店は最近改装されたような綺麗な内装でした。売店の兄ちゃんに「おい、ピザくわねぇか」と声を掛けられるものの、さっき釜飯食べたばっかりなので「くわねぇ」とお断り。すると、「じゃあソフトクリームくわねぇか」と言われ、それなら、ということでソフトクリームをひとつ。「いやー、声かけてみるもんだね」と売店の兄ちゃん。


帰り道。うねうねとした急勾配をセカンド(出来ればファーストに入れたいけど、この車、セカンドまでしかないのよね。。)でゆっくりと下っていると、道路脇の崖の上に何かいるのが見えました。
シカ? こんなとこにシカっているの? いや……あれ、カモシカだ!

車が近くにいるからと言って特別それを気にするでもなく、カモシカはもそもそと草を食んでいるのでした。