東北地方の医療関係者は患者さんの訴えを理解するために方言を学ぶとか。というわけ新潟県長岡市周辺に住むお年寄りが医療機関で症状を伝える際に使いそうな言葉をまとめてみました! 方言監修は「長岡のばあちゃん」です。
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TwitterとFacebookでネイティブな長岡弁をつぶやく「長岡のばあちゃん」となんかできないかなーと考えた結果、思いついたのがこのまとめ。例文制作・翻訳で協力してもらっています。
今回紹介するのは80代以上の高齢者が使うバリバリの長岡弁。長岡地域および長岡市周辺の医療機関・福祉施設で働く方、働き始める方の参考になれば幸いです。
医療用 長岡のことば
なじ・なじら・なじらね・なじですか
いずれも「どうですか」の意。医療分野に関わらずしばしば使われ、長岡に来た人が面食らう言葉No.1、それが「なじらね」。「なじ」で「どう」、ら、らねが付くことで「どうだ?」「どうですか?」に変化。予約する際や、逆にお医者さんが患者さんに体調を聞くときに使う場合も有り。
- 佐藤さーん、具合はなじですかー。
(佐藤さん、具合はどうですか。) - 10日のひんのめはなじらね。あいてるけ。
(10日のお昼前はどうですか? 空いてますか?)
あんべ
あんばい・具合の意。「あんべがいい」で具合がいい、「あんべわるい」「あんべわーり」で具合が悪い。
せつない・せつーね
病気等でつらい様子、状態を表す。
なんぎい・なんぎげ
病気等でつらい様子、苦しい様子を表す。「○○げ」は「○○そう」の意。
- なんらおめさん、なんぎげらねっか。あんべわーりーけ。
(あれ、あなたつらそうですね。具合が悪いんですか?)
やめる
「痛い」「痛みがある」の意。腹痛などには使わず、主に膝、肩、腰等の関節の鈍痛・疼痛に使う。しかしながら頭痛時に「頭がやめる」も言う。
- 膝がやめてやめてどーしょもねーんだいねー。
(膝が痛くて痛くてどうしようもないんです。)
あつつー・あっつー
痛みを感じた時に発する言葉。「痛い!」「いててー」「あいたたた」に相当。おじいちゃん、おじさんだと「あつつー、ふぅーう!」みたいなのが付く場合もあり。けっこう痛いときに使う。
- あつつー! そこ押さっとばかいってーて。
(あいたたた! そこを押されるとすごく痛みを感じます。)
もぎれる
おなかの調子が悪く、ぐるぐると腸が動いておなかが痛い状態を指す。胃の痛みには使わない。だいたい下痢とセット。
- なにわーりもん食ったんらか、腹がもぎれるんだてー。
(なにか悪いものを食べてしまったのか、おなかがぐるぐる痛いんです。)
かがっぽい
「まぶしい」の意。
- 外出るとかがっぽてなーんも見いねんだいのー。
(外に出るとまぶしくてなにも見えないんです。)
ぼきあがる・ぼきゃがる
(主に夜中)興奮して目がさえ、眠れない状態。または子供がはしゃぎすぎて大興奮したような状態を指す。「月曜から夜ふかし」でも紹介された方言。別に性的な意味ではない。
- おちんちんこがよーさるになるとぼきあがってだめんがーてー。
(うちの小さい子が夜になると興奮して寝なくてだめなんです。)
ねった・ねってた
「寝た」「寝ていた」の意味。なぜか「っ」が入る。
したっぽい・したっぽなる
「湿る」「湿っている」の意。
くさる
服や布などが水で濡れている状態を指す。
- へぇオムツがくさってるねっかってー。
(もうオムツが濡れているじゃないですか。)
あおらあおら
体調不良や熱などでフラフラになっている様子。
- ごうぎん熱が出て、きんなはいちーんちあおらあおらしてたてー。
(すごい熱がでて、昨日は一日フラフラになってました。)
ぼとぼと
足取りが悪く、スムーズに歩けない様子。
- あこんちんじさ、ぼとぼとしてなしたてー。
(あそこのおうちのおじいさん、足取りが悪くなりましたねー。)
ちゅうぶ(ちゅぶ)が出た
脳梗塞・脳血栓・脳溢血等、脳卒中系の病気になったこと指す。それに伴う麻痺も含む印象。
- あこんちんばさ、ちゅぶ出しなしたてが。
(あのおうちのおばあちゃん、脳卒中になったようですよ。)
のーなんか・のうなんか
脳にまつわる病気の総称。認知症を指す場合が多い印象。
- やへやへ、忘れっぽなってしもて、のうなんかになったかと思たてー。
(いやー物忘れがひどくて、認知症になってしまったかと思いました。)
かざき・かざっぽい
風邪気味の意。
いがらっぽい
喉がいがいがする、痰が絡んですっきりしない様子。
ごとばな
細菌感染時やひどい風邪の際に出るドロドロとした黄色い鼻水のこと。サラサラの水っぽい鼻水には使わない。
- かざきらすけ寝ってばっかいたんだろも、ごとばなも出はねたんだが薬もろわいるろかの。
(風邪気味だったのでずっと寝ていたのですが、ひどい鼻水も出始めたので薬もらえますか。)
あげっぽい
気持ちが悪い、吐き気を催している状態。
ずずらこ・づづらこ
帯状疱疹のこと。
あくと
かかとのこと。
副詞
程度や加減を表す副詞等もまとめてみました。一部は「○○いい」の形にしています。
- ばかいい、ばっかいい:とてもいい
- ごうぎいい:とてもいい
- しかもいい、しっかもいい:けっこういい
- でこいい:(なにか、または以前と比較して)かえっていい
- こてげ:ほとんど
- けってか:かえって
シミュレーション
最後に長文でシミュレーション。かかりつけの町医者に行って診察してもらい、次回の予約を入れて帰ってくるまでの流れを再現してあります。是非おばあちゃんの声で脳内再生してください。
長岡弁
なんだかあんべがわーりすけ診てくんねろかのー。ちとあげっぽて頭がやめるんだて。腹はもぎれね。ごうぎさーぶなったすけ、かざきらろかの。今けー、今は血圧の薬ばっか飲んでるいね。これ飲んでればばか調子がいいんだてー。こないさもろた薬はこてげ飲んだすけ、またもろわいるろか。
でー、次けー。こんだの金曜の昼前はなじらね。あっきゃー混んでるけ。そしたら昼からはなじらろか。なーにー、昼からんほうがでこ都合がいいて。じゃまたくるすけの。おめさんも風邪もろわんようにきーつけてくらっしぇ。あいえあいえ、おらもあったこして寝てるいねー。
標準語に翻訳
なんだか具合が悪いので診てもらえますか。ちょっと気持ち悪くて頭が痛いんです。おなかは痛くないですね。すごく寒くなったので風邪気味なんですかねぇ。今ですか、今は血圧の薬だけ飲んでいます。これを飲んでいるととても調子がいいんです。この間もらった薬はほとんど飲んだので、またもらうことはできますか。
次回ですか、今度の金曜の午前中はどうでしょうか。あらら、混んでますか。そうしたら午後からはどうですか。いえいえ、午後からのほうがかえって都合がいいです。ではまた来ますね。あなたも風邪を引かないように気を付けてくださいね。はいはい、私も暖かくして寝てますねー。
そんげん感じ
「なじらね」は覚えといてくらっしぇーの。
なんとなくNG!-ナガオカグレイト-の「げっぽをねらえ!」っぽくなった感が……やはりあれは完成されている。私も愛読しております。
そんなわけで医療・福祉の現場で患者さん・高齢者の伝えたいことを理解する手助けとなれば! とりあえず「なじらね」だけは覚えておいてー! 頻出長岡弁。もう挨拶の一部です。