昨年末より、新しい投影機へのリニューアル工事が行われていた新潟県立自然科学館のプラネタリウムが、先月3/19(土)にファーストライトを迎えました。
そんな新プラネタリウムの内覧会にお呼ばれしたので、「これはもう行くしかないでしょ!」ということでノコノコと出かけて参りました。
新しい投影機は五藤光学研究所の「クロノスII EX」。以前のものと比べるとかなりコンパクトになっています。
こちらはリニューアル前の投影機「GN-18-AT」。現在はプラネタリウムの前に置かれています。
こちらは新しい投影機「CHRONOS II EX」。「CHRONOS II」の対応ドーム径は8-15mですが、それを自然科学館のドーム径である18mまで投影出来るように拡張したものが「CHRONOS II EX」だそうです。床の濃い赤色の部分はGN-18-ATの土台の名残です。だいぶコンパクトになったことがわかります。
GN-18-ATに似たカラーリングや船(投影機が乗っている架台)の形状は、新潟県立自然科学館オリジナル仕様となっております。
今回のリニューアルに合わせて募集していた新投影機の愛称も決定していました。気になる愛称は「ほしひかり」。う、うめぇ……もうこれ以外有り得ない気すらする……!
ファーストライト!
そんなわけで、ファーストライト! 実際のファーストライトは3/19(土)なので(内覧会は18日でした)、正確にはファーストライト前夜!(夜じゃないけど!)
プログラムは今夜の星空を解説員がライブ解説してくれる「星空さんぽ」とプラネタリウムリニューアル記念番組「スペースエイジ〜宇宙を目指すものたち〜」の2本立て。時間はだいたい1時間くらいでした。
星空さんぽ
まずは「星空さんぽ」。見せてもらおうか、CHRONOS II EXの性能とやらを!
……といってもその時の写真はないわけですが。。
内容は、とてもオーソドックスなプラネタリウムの星空解説です。その日の夜に出る星と星座と、それにまつわる物語などを交えてわかりやすく解説してくれます。
で、「CHRONOS II EXに変わって何か変わった?」と聞かれると、正直、よく分かりません。。星の輪郭や映像がクリアに感じたかな、というくらいでしょうか。月はもはやクリアすぎて違和感感じるレベル。
あ、でも、矢印の表示は手動なんですね。。なんかポインタとかエフェクトとかがコンソールで用意されていると思っていたので、ちょっと意外でした。
スペースエイジ
星空さんぽの後は、プラネタリウムリニューアル記念番組&日本国内初投影の「スペースエイジ〜宇宙を目指すものたち〜」。2007年にオランダの会社が製作した「Dawn of the Space Age」という作品の日本語版です。
入口にあった劇団ひとりのサイン。「スペースエイジ」のナレーション(番組紹介では「メッセンジャー」となっています)で最初と最後の部分に声の出演をしています。
ちなみに、本家のウェブサイトでは、英語版&ウォーターマーク入りですが、全編を見ることが出来ます。
でも、プラネタリウムで見る映像の迫力は、PCの画面で見るのとは比べものになりません。このプログラムは6/19(日)まで投影されているので、是非体感してみて下さい。
プラネタリウムって、なんだ?
さて、この「スペースエイジ」のように、プラネタリウムのスクリーン全面を利用したプログラムはホントにすごいです。変な映画を見るよりも迫力があり、面白い。しかも、タメになります。
しかし、その一方で、こういったプログラムを見ると「プラネタリウムってのは一体何なんだろう」と考えさせられます。
自分が小学生の時、プラネタリウムのプログラムは星を絡めたものでした。天球の一部分に博士と子供のキャラクタが映し出されて、天球に映し出されている星や星座の解説をしてくれるというものです。今はそれが「星空さんぽ」になってるのでしょうか。
プラネタリウムのスクリーン全面を使用した、全天周映画のようなプログラムを初めて経験したのは、ここ、新潟県立自然科学館でした。その時のプログラムは「宇宙エレベータ」。プラネタリウムは前述のようなものだと思っていた自分にとって、このプログラムは衝撃でした。
これはもう、ちょっとした映画作品じゃないか。
このプログラムを見て、「プラネタリウム」というものの可能性を感じたと共に、果たしてこれが「プラネタリウム」である必要はあるのか? という疑問も浮かんできました。「宇宙エレベータ」という作品は、全然、星とは関係ない内容だったからです。
「プラネタリウム」って、一体なんだ?
新潟県立自然科学館のハイブリッド・プラネタリウム
プラネタリウムについて考えるには、プラネタリウムの基本的な構成を知っておく必要があるかもしれません。そんなわけで、新しい新潟県立自然科学館のプラネタリウムの構成についてちょっと調べてみました。
なにがハイブリッド?
新潟県立自然科学館のプラネタリウムは光学式の投影機である「CHRONOS II EX」とデジタル式の投影機である「バーチャリウムII」からなっています。光学式とデジタル式の両方を使用しているので、「ハイブリッド」ということのようです。
プラネタリウムの中心にあり、プラネタリウムの投影機として認識されているこれは、光学式の投影機。これとは別にデジタル式の投影機が配置されています。(たぶん。)
「光学式」とか「デジタル式」とかいまいちピンと来ないかもしれませんが、光学式は家庭用プラネタリウムの「HOMESTAR」のような星を映し出すだけのもので、デジタル式は映像を投影するプロジェクタのようなものだと考えるとわかりやすいと思います。
今回の場合、星空解説の部分は光学式の「CHRONOS II EX」が主に使用され、「スペースエイジ」の部分はデジタル式の「バーチャリウムII」が主に使用されていると考えられます。「スペースエイジ」の投影時、CHRONOS II EXは土台に沈んでましたし。
「てか、デジタル式だけで星空映せるんじゃない?」と思う人もあるかもしれません。実際、デジタル式だけで構成されたプラネタリウムもあります。でも、星の鮮明さや星と闇のコントラストなどはなかなか光学式にはかなわないそうです。そこでハイブリッド式は、星空は光学式で、映像はデジタル式で、といういいとこ取りをしています。
星はどこへ行った?
ちなみに新しい投影機の「CHRONOS II EX」は約1,000万個の星を映し出すことが出来ます。従来機の「GN-18-AT」は約8,000個だったので、星の数はなんと1,250倍! そんなにあると天球中星だらけ?!
……なんて思ってしまいますが、実際にはそんなことにはなりません。「天球星だらけ!」状態を期待していくと拍子抜けすることになるかも。。(実際ちょっと「アレ?」と思った。。)
地球から肉眼で確認出来るといわれているのは6等星以上の星です(人によっては7等星まで見えるとか見えないとか)。で、「CHRONOS II EX」は6.5等星までの9,500個の星を投影することが出来ます。つまり、肉眼で確認出来る星はほぼ全て投影する事が出来ると言えるでしょう。
じゃあ、残りの999万飛んで500個の星はどこに?
それらの星は、天の川や星団を構成する星として使われています。従来機ではもやっとした煙のような感じで表現されていた天の川や星団ですが、新型機ではちゃんと星の集合で再現されているのです。双眼鏡で眺めるとちゃんと一つ一つの星が確認出来るそうですよ。これはまだ自分で確認していないので、今度双眼鏡を持ち込んで確認したい所存でございます。
「CHRONOS II EX ハイブリッド」はダテじゃない!ハズ!
こう言っちゃなんなんですが、「星空解説」と「スペースエイジ」のようなプログラムを映すだけなら、このシステムはオーバースペックのような気がするんですよね。
いや、「宇宙エレベータ」や「スペースエイジ」は、それはそれで素晴らしいんですけどね。それがメインになっちゃうと、せっかくのハイスペックなプラネタリウムが宝の持ち腐れになるんじゃないかなぁ、と言う気がするのです。
内覧会でもらったプレスリリース(?)には以下のようなことが書いてありました。
デジタルとの融合による表現力アップ
また、全天周デジタル映像システムの導入により、投影機が映し出す星空と全天ドームに映し出されるデジタル映像とを組み合わせることで、より多彩な演出が可能になりました。例えば、一瞬で数百年先の星空を見せることも、地球を飛び出して宇宙空間から星々や天体を巡ってみせることも出来ます。
で、思ったのですが、こんな感じの事って出来ないですかね?「Stellarium」というプラネタリウム的なPCのソフト使ってちょっとやってみたのですが。
こんな感じのことをプラネタリウムで出来たら、結構人気でそうじゃないですか?
まあこれは言ってみれば完全デジタル式なので、ハイブリッドの場合と異なるとは思います。でも、「デジタルとの融合による……」と謳っているあたりを見ると、新しいプラネタリウムもこれに近いことが出来るスペックは持ってるんじゃないかなぁ、と思うんですよね。
こんな風に出来たら、そしてそれを生かせるストーリーを作ることが出来れば、「星空さんぽ」もダイナミックな展開でより面白くなるんじゃないかなと思いました。そしてそれこそが「プラネタリウム」のあるべき姿のように思います。
とりあえず、今回の内覧会では新しいシステムを使いこなすだけでてんやわんやしていたようなので、そういった新展開は今後に期待。……しちゃてもいいでしょうか?(笑)
新潟県立自然科学館
所在地 | 新潟県新潟市中央区女池南3丁目1番1号 |
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開館時間 | 10:00-17:00(入館は16:30まで) |
料金 | 入館料: 大人550円、子供100円 入館料+プラネタリウム観覧料: 大人750円、子供200円 |
ウェブサイト | http://www.sciencemuseum.jp/niigata/ |