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とある博物館の売店の営業は無事に終了しました。

越後製菓がサトウ食品工業を訴えたようです

 高橋英樹演じる「越後侍」のCMで知られる越後製菓と、玄関空けたら2分でごはんが出来ちゃう「サトウのごはん」で知られるサトウ食品工業ですが、そんな新潟の米製品会社が特許を巡って争うようです。

切り餅の特許権を侵害しているとして、米菓類製造販売「越後製菓」(長岡市)が餅類製造販売「佐藤食品工業」(新潟市)を相手取って、切り餅5製品の製造販売、輸出などの差し止めと、14億8500万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
「切り餅特許権侵害」佐藤食品工業を提訴 : 新潟 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 問題となっているのは、切り餅の切り込み。越後製菓はサトウ食品工業の、いわゆる「パリッとスリット」が特許を侵害しているとして訴えを起こしました。
 これに対してサトウ食品工業はウェブサイトで「越後製菓㈱の当社に対する訴訟の提起に関するお知らせ」を掲載。

 平成21年4月期の業績に与える影響はありません。なお、今後、影響が生じることとなった場合には、速やかにお知らせいたします。
 本件に関して、当社製品は原告の特許権を侵害するものではなく、今後、裁判で当社の正当性を主張してまいります。
越後製菓㈱の当社に対する訴訟の提起に関するお知らせ

…と、ちょー争う構えアリです。

 さて、では今回問題となっている特許とはどのような特許なのでしょうか。探してみました。特許庁の特許検索は非常に使いにくかったので、「Ultra-Patent」という特許検索のサイトを使用しました。

越後製菓の特許

 というわけでまず、越後製菓の特許。
 特許第4111382号。発明の名称は、ズバリ「餅」。出願日は2002/10/31、登録日は2008/04/18。
 書類にはイロイロ書いてあるのですが、重要なポイントは切り餅の側面にぐるっと切り込みを入れたところのようです。この切り込みにより、焼いたときにふっくらと膨らむのだとか。以下の図のように説明されています。

特許第4111382号 図1
特許第4111382号(JP, B2)

 図中の各番号は、1: 小片餅体、2: 上側表面部分、2A: 側周表面(立直側面)、3: 切り込み部(切り込み)となっています。
 さらに

【0028】
 従って、例えば図3に示すように対向二側面の側周表面2Aに刃板5によって切り込み3を形成することで、(前後に切り込み3を殆ど形成せず環状に切り込み3を形成しないが)四面に全てに連続させて形成して四角環状とする場合に比して十分ではないが持ち上がり現象は生じ、前記作用・効果は十分に発揮される。
特許第4111382号(JP, B2)

 ともあり、側面の一部分に切り込みがある場合もこの特許ではカバーしているようです。ちなみにここにある図3とは以下の図の事。

特許第4111382号 図3
特許第4111382号(JP, B2)

 ここで5は切り込みを入れるための刃。

サトウ食品工業の特許

 さて、一方のサトウ食品工業。
 特許第3620045号。発明の名称は「切り餅」。出願日は2003/07/17、登録日は2004/11/26。
 こちらのポイントは切り餅の側面に入れられた切り込み + 表と裏に十字に入れられた切り込み。ふっくらと焼き上がるという点は越後製菓のそれと同じで、サトウ食品工業の場合は、それに加えて餅の分割しやすさも機能として加えられているようです。

特許第3620045号 図1
特許第3620045号(JP, B2)

 この図では長方形の長い方の側面にだけ切り込みが入っていおり、また、製品もこうなっていますが、特許的には長い方の側面に限らず、側面にぐるっと切り込みが入っているのも含まれるみたいです。つまり越後製菓のそれのように。

特許第3620045号 図3
特許第3620045号(JP, B2)

 こういう感じで。

どっちが有利なのか

 ということで、ざっと見た感じ、側面への切り込みの入れ方がかぶってるっぽいです。

 ではこの場合、どちらが有利なのか?という話になるのですが、日本は(というかアメリカ以外のほとんどの国は)「先願主義」となっていて、先に出願したもの勝ちになっています。発明した時期でも、特許登録された日でもなく、出願日の早いほうが勝ちです。

 で、今回の越後製菓 vs サトウ食品工業ですが、出願日を見ると越後製菓が2002/10/31、サトウ食品工業が2003/07/17となっており、越後製菓に分があります。あとは特許の中身がどう解釈されるかですが、両方の特許の内容を読んだ印象では、サトウ食品工業は結構厳しいんじゃないかなぁ、と思いました。

 というか、だいたい特許庁も、機能的にも手法的にもかぶってるっぽい特許があるのに、なんで特許登録にOKだしたんだって話ですが。似たようなものがいっぱいあるから把握しきれないってことなんですかね。でも、特許の審査をしてもらうだけで20万円近くかかるのに、その特許でさらに15億も損害賠償されたらたまらないですよね。

 それに、特許の登録要件には「先願に係る発明と同一でないこと(特許法39条)」、つまり、既に出願されているものと同じではないこと、という項目があります。逆に言うと、特許庁の審査を通過したものは「先願に係る発明と同一でない」ものであるはずです。
 が、実際に越後製菓とサトウ食品工業の特許は類似した部分があります。「類似」であって「同一」ではないから審査通っちゃったとか?だとしたら、ちゃんと調べないと特許とるのもなかなかリスキーですね。
 自分なら特許庁に15億と20万円を損害賠償請求したくなるかも。

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