越後七不思議に数えられている「片葉の葦(かたはのあし)」。一方向にだけ葉が出る不思議なアシです。
「片葉の葦」は越後七不思議のひとつで、葉が片方側だけに生えるアシです。上越の居多ヶ浜や居多神社周辺に自生しています。
片葉の葦にまつわる伝説は、大きく分けて2つあります。ひとつは現在、越後七不思議として語られている親鸞聖人由来の伝説。もうひとつは弘法大師(空海)由来の伝説です。
親鸞聖人由来の伝説
親鸞聖人由来の伝説は次のような話があります。
居多ヶ浜に上陸した親鸞聖人は、最初に居多神社を参拝しました。ここで聖人は
- 末遠く 法をまもらせ 居多の神 弥陀と衆生の あらむ限りは
- すえとおく ほうをまもらせ こたのかみ みだとしゅじょうの あらむかぎりは
と詠みました。この親鸞聖人の教えに感化されて、葉が片方だけを向いてなびいたそうです。
親鸞聖人由来の伝説は他のものもあります。
流罪となり越後国府に流された親鸞聖人は居多ヶ浜周辺で布教しましたが、罪人であるとして話を聞く者がいませんでした。そこで聖人は
- 結びおく 片葉の葦の 後の世に わがあと慕う 小道しるべに
- むすびおく かたばのあしの のちのよに わがあとしたう こみちしるべに
という歌を詠んで、傍らの葦の葉をちぎりました。その後、このあたりの葦はすべて片葉になってしまいました。
このほかにも、親鸞と一緒になって手を合わせたから、葦が親鸞との別れを惜しんで合掌したから、など諸説あります。
弘法大師由来の伝説
弘法大師由来の伝説には次のような話があります。
とある僧がこの地をおとずれ、村の家々に水を所望して回りました。しかし、この地では水が貴重であったため、どの家からも断られてしまいました。
水をあきらめた僧は、砂丘に立って読経を始めました。すると、激しい雨が降り、足下に小さな池が出来ました。 僧がその池に自分の姿を映して仏像を刻んでいると、どこからか女が現れ、草笛で美しい音色を奏でました。女は僧を手招きしますが、僧は邪念を払って仏像を刻み続け、明け方には完成させました。そして、仏像を草庵に安置し、どこへともなく去っていきました。
村人達は残された仏像に「空海刻」と彫られているのを見て、あの僧が弘法大師であったことを知り、それから熱心な仏教徒になったそうです。
また、女が草笛を作るために葦の葉の片方を全部ちぎり取ってしまったため、この池に生える葦は全て片葉になったそうです。