新潟日報のトップページに赤字で書かれた文句。
※記事・見出しの無断引用は著作権法違反です※新潟日報 NIIGATA NIPPO On Line
この言い分からすると「著作権法上では文献を引用するのに許可が必要である」というように思えますが、本来、引用は無断で出来るものです。これは著作権法32条にも明記されています。
著作権法32条(引用)引用 – Wikipedia
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
つまり、「引用」と言う行為はそもそも「無断」で行われるものであり、「無断引用」という言葉は存在しえません。「引用」は「引用」です。また、「引用」は(もちろん)合法的な行為です。
よって、新潟日報が主張している「記事・見出しの無断引用は著作権法違反です」という文句は全くの見当違いということになります。
苦しいながら、「公表された著作物ではないから引用は出来ないんだ」という言い方も出来るかも?
なにをもって「公表」とするか、と言う問題がありますが、普通に考えて、ネット上に載せられた情報は「公表」されたと考えて良いと思います。
逆に言うと、公表されていないものを引用することは普通出来ませんから、引用できる時点で公表された著作物であると考えるのが自然でしょう。
たとえば、自分だけしか見ない恥ずかしいポエムのつづられた日記の場合は、普通公表されないので、自分以外は内容を知ることが出来ず、よって、引用のしようもありません。まあ、盗み見て引用することも出来るかもしれませんが、それは著作権以外の問題になりそうです。
また、新潟日報は以下のように主張しています。
インターネットの個人ホームページやブログなどに記事や写真をコピーして公開する場合は、インターネットは不特定多数の人に公開するものなので、「私的利用」の範囲を超えます。
これより、記事や見出しは「公表された著作物」であると解釈することができます。(ところで、「じゃあ、家族だけのSNSの場合はどうなんだ?」と言いたくなりますが、それはまた別の問題なのでここでは言及しません。)
そんなわけで、どう考えても新潟日報の記事を引用することは違法と言えないわけです。
そもそも、適切な引用をされれば、その引用された記事のアクセス数は増えます。これは記事を書く人間としては(さらに言えば新聞社としても)喜ぶべき事ではないでしょうか。
化学論文では、他の人の論文に自分の論文が引用されると言うことは、多くの場合、名誉なことです。また、引用された回数が多いほど、その論文は有用な論文であるということが言えます。
そういったメリットを理解していないのでしょうか。まさか、新聞社ともあろうものが「引用」と「転載」を混同しているとも考えにくく、どういった意図で「無断引用は著作権法違反」などというあさってな主張をしているのか気になります。
さて、この記事も新潟日報のウェブサイトのテキストを「引用」しているわけですが、仮に「無断引用は違法」とした場合、こんなふうに新潟日報を批判する記事が書けなくなる可能性が考えられます。
たとえば、「あなたを批判するためにあなたの書いた文章を引用させてください」と言われて、許可を出すでしょうか。核心を突いた批判ほど、許可は出にくくなるのではないでしょうか。
やや大げさな気もしますが、「無断引用は違法」という主張を許す事は、言論の自由を奪うことに繋がるのではないでしょうか。
言論の自由を主張する新聞が、言論の自由を束縛するというのは、なにか皮肉な話ですね。