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新潟の怪談 – 海岸の気配

 はい。というわけで、まずはicoroズが持っている数少ない、なけなしの怪談を出していきたいと思います。なんとなく、「変だな〜、不思議だな〜、変だな〜」と思ったものが中心です。残念ながら、怖すぎて夜ひとりでトイレに行けなくなる、ほどのものではありません。
 まあ、だいたいこんな感じのテキストになるという、サンプル程度に捉えていただけるとありがたいです。その時の風景や心情を(箇条書きでも良いので)詳しく書いてもらえるととっても書きやすいですぞ。

 それでは第1弾、「海岸の気配」をどぞ。

長岡まつり2009
※画像はイメージです。

 その頃は、夜にドライブに出かけることが多かった。2人で他愛のない話をしながら夜の道を流し、たまに休憩がてらその辺りのコンビニや駐車場に入る。その海岸に寄ったのも、そんないつもの流れだったと思う。夏の終わりの頃の話だ。

 海岸は海浜公園として整備されており、そこそこの台数が入る駐車場があった。先に車が1台駐まっていたので、その車からやや離れた場所に車を駐める。
 公園はナトリウム灯が発するオレンジ色の光で照らされている。公衆トイレもあるが、時間が遅かったためか、あるいは時期が過ぎたためか、鍵がかけられ、使えないようになっていた。トイレの建物が作った影の中で、自販機が白い光を放っている。

 公園を照らす光は海岸まで届いていて、歩ける程度に明るかった。海岸からは何人かがはしゃいでいる声が聞こえてくる。せっかくなので、とりあえず、海岸を歩いてみることにした。

 海岸はふたつの防波堤に挟まれた格好になっている。声は右側の防波堤の方から聞こえてくるので、自分達は左側の防波堤に向かってなんでもない話をしながら歩いて行った。
 防波堤は海に向かって伸びる30mほどの短いものだったので、すぐに先端までたどり着いた。先端から海岸の方を見ると、ナトリウム灯の光が海岸全体をうっすら照らして出しているのが見える。さっきの声の主と思われる何人かの影が、オレンジの光の中でうごめいているような気がした。

 特に何があるわけでもない堤防の上。「そろそろ戻ろうか」と来た道を引き返す。途中、自分達と入れ替わるように堤防の先へと歩く、2、3人の親子と思われる女性達とすれ違った。

 「あれ?」と思ったのは、海岸の砂浜まで戻ったときのことだ。海岸が妙に静まっているような気がした。さっきまで海岸に響いていた気がする声は、いつの間にか聞こえなくなっている。あれだけわらわらとあった人の気配も、今はすっかり消えている。そこにあるのは、誰もいない夜の海岸だった。

 「なんか、変だったよね……?」

 駐車場を出てしばらくしてから、どちらからともなくそう言い出した。あのとき違和感を感じていたのは自分だけではなかったらしい。答え合わせをするように、海岸で感じた違和感について話始める。

 最終的には、「先に駐車していた車が駐車場から消えていたので、みんなそれで先に帰ったんだろう」という無難な結論に落とし込んだが、なんとも釈然としないものが二人の間に残った。

 それ以来、その海岸近くを通るのをなんとなく避けるようになった。

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