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そとのひとから見た新潟市立美術館問題

 国宝展をやるとかやらないとかでなんだかもめていた新潟市美術館。国宝展を巡って、ついには館長が更迭されちゃったりとか、これ、ちょっとなんか自分が思ってるより大ごとなんじゃない?と、ちょっと気になっちゃった感じだったので、この問題についてちょっとググってみました。

 以下、敬称は基本的に略で。友達と県知事について話すとき、敬称とか付けない、そういう感じ。

これまでのあらすじ

 「展示品がカビちゃった事件」と「展示品から虫がわいちゃった事件」が発生してしまった新潟市美術館。そんな様子を見ていた文化庁が4月に新潟市美術館で開催する予定だった国宝展「奈良の古寺と仏像」の中止を言い出した!慌てて館長を更迭し、「なあ、考え直してくれないか」と迫る篠田市長を文化庁は「もう、あなたの何を信じたらいいのか、私、わからないの。」と冷たく突き放す。それでも諦めきれない篠田市長だったのだが…

 まあそんな感じです。
 結局、国宝展は長岡にある新潟県立近代美術館で開催されることになったようです。

館長を更迭する意味はあるのか

 有名人がやってる館長なんて名誉職みたいなもので、実際の仕事はその美術館の学芸員なり何なりがしているんじゃない?
 で、もしそうだとしたら、館長更迭したって問題は根本的な解決にはならないっしょ。だって、管理が行き届かなかった原因は、館長ではなく、実際に現場で働いていた人や、そこで使われていた(いる)マニュアルにあるんだから。館長更迭したって同じ事起きるんじゃない?
 国宝展とか、危険すぎるんじゃない?

 …と思っていたのですが、北川フラム館長は名誉職どころか、ちゃんと新潟市美術館の運営に首を突っ込んでいたようです。

一連の人事とは、北川フラム前館長(12日付で更迭)の就任した07年4月から2年間に、4人いたうち、生え抜きのベテラン学芸員3人が異動させられたことだ。
ニッポン密着:新潟市美術館 独断運営でほころび 生え抜き学芸員放出 – 毎日jp(毎日新聞)

 学芸員を総取っ替えとは気合いが入ってますね。
 この北川フラムの人事が結果として事件を引き起こすことになったと考えるのであれば、館長の更迭も一定の効果があると考えられるかもしれません。ただ、その場合、新しく館長になった人が再度人事を刷新するか、美術館のスタッフの再教育をする必要があると思います。

 篠田君は「フラム更迭したし、臨時の館長俺がやるし、もう全然問題ないっすよ!」とか文化庁に言ったようですが、そもそも北川フラムを館長に任命したのは篠田君な訳で。そんな篠田君が館長したところで「いや、それじゃ何も変わらんでしょ…」と考えるのが普通ではないかと思われます。
 てか、だいたい、篠田君は美術館の運営の方法とか知ってるの?知らないのに館長やりますとか、普通、言わないとは思うけれど。また、名前を貸すだけのお飾りな館長とは違い、フラム館長は美術館の中を変えちゃってる訳で、これを是正するのは時間がかかるとも思いますし。

新潟市美術館を考える会

 新潟市美術館について検索していたら、「新潟市美術館を考える会」と言う会が出てきました。「趣意書」の書かれた日付が2009年8月6日となっているので、「展示品がカビちゃった事件」の後に設立されたようです。

 この会の「趣意書」を読むと、前述の大幅な人事変更があった頃、既にフラム体制に対する不満が出ていたことが読み取れます。

 新潟市美術館は今、“瀕死”の状態にあります。否、見方によっては“頓死”してしまった、と言えるでしょう。
新潟市美術館を考える会 » 趣意書

 この趣意書に限らず、ウェブサイトに出ているテキスト全般で客観性に乏しい表現が目に付きます。
 「新潟市美術館」よりも「フラム体制」について考える会って感じです。現在の新潟市美術館の何もかもが許せなくなっているというか、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」状態というか。そんな感じなので、見方に偏りがあるかもしれない、と言うフィルターをかけてみるのがよいかと。
 そんなに敵意むき出しでは、味方にまで刃を向けてしまうんじゃないかと心配になります。最近は新潟市美術館だけでなく、県立近代美術館の方にもものを申し始めているようですし。

北川フラムはどうしたら良かったのか

 北川フラムの経歴を見ると、どちらかというと、屋外展示モノの実績が多い感じがします。北川フラムが総合ディレクターとして参加している「大地の芸術祭 – 越後妻有アートトリエンナーレ」もほとんど屋外展示モノですし。

 新潟市で開催された「にいがた水と土の芸術祭」はトリエンナーレの新潟市Ver.にするつもりで北川フラムを招いたのでしょうし(と「考える会」の趣意書にも書かれていますが)、まあ、それは別に良いと思います。イベントという点では実績があるわけなので。(「にいがた水と土の芸術祭」自体賛否があるようですが、とりあえずスルーの方向で。)
 が、その北川フラムを屋内展示モノが中心の美術館の館長にしたのはまずかったのかもしれません。

 雨風に晒されるのが前提で、なんなら風化も作品の一部としてしまう屋外展示モノと、雨風どころか温度・湿度の変化さえ問題になる屋内展示モノは、同じ美術品でも管理の方法としては真逆にあると考えられます。

 たとえば、普通に考えれば、土壁なんかカビるし、カートから虫が湧いたって全然不思議じゃありません。当然、美術館の職員もそれは分かっていたようです。

作品設置に立ち会った職員は「水気のある作品なのでカビが生える可能性は予測できた。だが、夜間は空調を調節する要員を確保できず、外気を取り入れて換気する方法を取った」と説明。
重大ニュース参考記事:新潟市美術館、土アートでジメジメ 水気でカビ?発生(2009年7月31日夕刊) – 毎日jp(毎日新聞)

 じゃあ、それを防ぐにはどうしたらいいのか。という議論になりそうなところですが、屋内展示モノの視点から考えると、そもそもカビたり虫が湧いたりする可能性のあるモノを美術館内に持ち込むこと自体が有り得ない。らしいです。

作品を直接見ていないが、水気のある作品を展示すること自体、常識では考えられない。
重大ニュース参考記事:新潟市美術館、土アートでジメジメ 水気でカビ?発生(2009年7月31日夕刊) – 毎日jp(毎日新聞)

 と、多摩美の教授である本江邦夫さんは言っています。もう、前提からして違うんですよね。たぶん。
 ちなみにこの人、「新潟市美術館を考える会」の会員になってます。なので意見にバイアスがかかっている可能性も考えられますので、よしなに。

 まあそんなわけで、フラムさんはアートトリエンナーレと同じように、総合ディレクターなりプロデューサーなりにして、館長は館長で別に置いておいた方が良かったのかもなぁ、と思いました。まあ、そんなことをここで言っても後の芸術祭なのですが。

 あと、出てる情報をたどってくと感じるのですが、問題の根源って、篠田君にもあると思うんですよねぇ。だって、フラムを館長にしたのは篠田君だし、「もう大丈夫だから!」とかいって勇んで文化庁に乗り込んでったのも篠田君だし。
 そりゃまあ、予算とか事情があって「ハイそうですか」と止めるわけに行かないのは分かるのですが、ちょっと努力の方向が明後日だったんじゃないかと思うのです。

 まあ、こう言うのって後になって考えると、よく分かるんですよね。きっと。渦中にあるときは、そう言うのはなかなか見えないもので。昔の恥ずかしい失敗を思い出して「あのときこうしてれば!」とか頭の中で勝ちパターンをシミュレートしちゃってる自分に、なにかしょっぱい気持ちにさせられちゃった経験は誰にでもあると思いますが(みんなあるよな?!)、それと同じ事かもしれません。
 だいたい、チキンな自分が篠田君の立場だったら「ですよねー。国宝とかカビちゃったら大変ですもんねー。国宝展とか無理ですよねー(涙目)」くらいしか言えないと思いますが。(涙拭けよ俺。)

 今後、新潟市美術館の体制の見直しなどが行われていくのだと思うのですが、まあ、あんまり傾かず、冷静に、受け入れるべき意見は受け入れ、正すところは正すようにしてもらえれば、と思います。
 という、生ぬるい感じの結論。

参考

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