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十日町の古民家レストラン『うぶすなの家』に行ってきた – やまざき編

Date 2012/03/23 17:35  Modified date 2016/05/10 Author やまざき ふみひろ  Tags 行ってみた

 人生が思い通りにいかないからと言って、なげく必要ありません。
 迷うべき道のない順調な人生なんて楽しくありませんし、ぶつかる壁のない人生なんて張り合いがありません。道に迷ったら、迷っている自分を楽しめばいいし、壁にぶつかったら無理に乗り越えようとせずに、引き返せばいいのです。

 人生の迷路からなかなか抜け出せず、立ちはだかる壁から逃げること脱兎のごとし。

 そんな私やまざきは、先日、フリーランス仏像愛好家として身を置かせてもらっていますicoroのお二人とともに、十日町市の古民家レストラン『うぶすなの家』に行ってきました。

雪ほり

 このうぶすなの家には、過去3度ほど訪れたことがあるのですが、市街地からは結構離れた場所で、道順もかなりうろ覚えだったということもあり、Androidのナビを頼りに車を走らせることにしました。Androidがあれば、車載のナビいらないですね。便利、便利。

 いつもは、ナビごときに俺の行く道を決められてなるものか…と、ナビは作動させていても、目的地の確認だけで基本は好き勝手に車を走らせるのですが、今回はicoroさんをおまたせしてはならないと、すっかりナビの奴隷な私。
 記憶していた交差点より随分手前で曲がれと指示された際も、「さすがナビ様、最短距離を示してらっしゃる」と、主君たるナビ様には絶対服従の様相で車を走らせました。

 曲がりくねる山道、細くなる道幅、あがる標高とともに増えていく積雪。目的地まであと10分を告げられたときに、目の前に立ちはだかっていたのは、高さ3mほどはある雪壁でした。

 道から車のわだちが消えて、真っ白になったあたりで、どうもおかしいと思ったんだ。

やきものの「美」と「食」が楽しめる古民家

 うぶすなの家は、新潟県十日町市周辺の妻有(つまり)地区で開催されている大地の芸術祭とともに誕生した古民家レストラン。

 空き家となっていた1924年築、越後中門造りの茅葺き古民家を「やきもの」で再生した施設です。1階は陶芸家の器で地元の食材を提供するレストラン、2階は3つの茶室からなるやきものの展示空間となっていて、古民家独特の雰囲気の中で、やきものを楽しみながら料理を味わうことができます。

 この日のうぶすなの家では、毎年恒例となっている「ひなまつり」のイベントが開かれていました。地域で大事に受け継がれてきた年代物のひな人形とともに、特別メニューの「ひなまつり御膳」をいただきました。

うぶすなの家ひなまつり御膳

 笹の葉で包んだ山菜寿司は胡桃の食感が心地よく、初物だというふきのとうが浮かべられたお吸い物からは、目の前の窓から見える雪景色とは対照的な春の香りがしてきました。デザートは手作りのいちご大福。手作りだから最初はうまくいかなかったんだけど、最後のほうは上手にできるようになったんですよ…と、料理の説明をしてくれたお母さん。俺の食べた大福は、ひっくり返したらあんこが丸見えだったから、最初につくったヤツだったのかな。

 とても美味しい料理でした。

ひな祭りなんてものは只のラベルだよ

 新潟では、村上市のひな祭りイベント『町家の人形さま巡り』が大成功をおさめて以来、各地でひな祭りイベントが開かれるようになりました。でも、ひな祭りイベントを「雛人形を観に行くイベント」だと思っているようなところは、大抵失敗していますね。

 うぶすなの家にとって、ひな祭りなんてイベントはラベルでしかないのですよ。

 元々、遠方からも集客できる素材を持っている、創り上げてきた。その素材を活かすために、お客さんの背中を少し押してあげる。訪れるきっかけを与えてあげる。
 そんなイベントなんだと思います。うぶすなの家にとってのひな祭りは。

 サッシではなく木枠の窓は本当に隙間だらけで、常に風が入ってくるような古い家。目の前には、肉っぽさのない野菜中心の田舎料理。
 このお膳を食べながら、icoro ♂ がつぶやいたこの一言が印象的でした。

 「料理はこれでいいんだよなー」

 誰しも多少なりの経験はあると思いますが、山奥の旅館やホテルで出てきた海鮮料理から受ける違和感。お腹の許容量を無視した皿の数々が並べられ、ペース配分に失敗したときの悔しさ。(結婚式でメインの肉を堪能できないタイプの人、挙手)

 雪深い山間部では(20年、30年レベルでのプチ昔までは)、冬の間は魚はおろか肉だってなかなか簡単に手に入ることのできる食材ではなかったでしょう。新鮮な野菜だって同様です。だから、この地域で暮らしてきた人は、そんな冬を乗り越えられるように、工夫して保存食をつくってきました。それが、目の前に並んでいます。

 「料理はこれでいいんだよなー」

 これでいいんです。
 好き好んで雪深い山奥の古民家に来るような人間は、別に肉を食いに来るわけじゃないんです。(俺は肉食いたいから肉出してもらっても一向にかまわんけど)
 ここに訪れたいと思う人の大半は、自分の普段の生活とは、少しだけ違うトリップ感覚を味わいに来ているんですよ。

 だから、この料理には目に映る料理以上の体験がある。

 料理が用意されたあと、お世話をしてくれるお母さんが、一組一組、丁寧にメニューの説明をしてくれます。どんな食材の料理なのか、この食材はこの土地でどういった意味を持つのか、お母さんたちみんなでメニューを決めるときの様子や、料理しているときのエピソードまで。それはここを訪れた人の体験の一部となるのです。

なにが本質なんだろうか

 大勢いるお母さんの中で、人懐っこい笑顔とおしゃべりが特に印象的な、水落静子さんという素敵な方がいます。私の記憶が間違っていなければ、初めてここでご飯を食べた2008年の夏、この水落さんというお母さんは、「こうやってここに来てくれる人と話しをできることが、楽しいんです」といったようなことを言っていました。

 山間の農村部で暮らしているお母さんは、外界との接点も少ないでしょう。夫の良き妻としての役割、子供の良き母としての役割、その日常はひょっとしたらすごく狭い範囲の世界で完結しているのかもしれません。
 それが、このうぶすなの家によって、この地域へ人を招き入れるという枠割を与えられた。訪れる人の体験の一部となる役割を得た。そんな喜びが、笑顔からにじみ出ているようでした。
 「最初は、こんないつも食べてる料理でいいのかなって思ったんですよ」とも言っていました。でも、その料理を美味しいと言ってもらえることが嬉しいと。

 一つのイベントが成功すると、本質を理解しようとせずに、上っ面だけをコピーしたような偽物イベントや商品が沢山生まれます。
 歴史や文化の裏付けの希薄な、新しく開発されたご当地グルメを、二度三度足を運んで食べたくなりますかね?街中に無造作に配置された、アートともゴミともとれないようなオブジェを見て回るだけのアートイベントを、観光客は貴重な体験だと思うでしょうかね?

 中山間地の地域活性化としてよく登場する話題に、徳島県上勝町の葉っぱを売って稼ぐおばあちゃん『いろどり』があります。その代表の横石氏は、高齢者に必要なものは「出番」と「評価」と言っています。うぶすなのお母さん達は、決して高齢者というわけではありませんが、やはり同じように「出番」と「評価」がこのお母さん達を活き活きとさせ、このうぶすなの家の賑わいを創り上げているのだと思います。

今年の夏は3年に一度の大祭

 今年の夏は、大地の芸術祭3年に一度の大祭。
 自然豊かな里山の風景とアート、そして新潟に関わる温かい人々と美味しい食事にもふれあえる楽しいイベントです。
 新潟を満喫できることこの上なしなイベントですので、新潟県内のみならず県外のみなさんもぜひ、新潟にお越しください。

 大地の芸術祭の期間中は、至る所に黄色の案内看板が出ますので、道に迷いがちなアナタも安心です。

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012

会期2012年7月29日(日) ― 9月17日(月・祝) 51日間
開催地越後妻有地域 (新潟県十日町市、津南町) 760 K㎡
主催大地の芸術祭実行委員会
共催NPO法人越後妻有里山協働機構
料金 一般 3,500円 (前売3,000円)
高・専・大学生2,500円 (前売2,000円)
中学生以下 無料
公式サイト大地の芸術祭の里とは – 大地の芸術祭の里
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